「IからWeへ」。カルビーLINE公式アカウントを軸にした「ファンエンゲージメント」最大化の体験設計
カルビーの売上構造を分析すると、パレートの法則(20:80の法則)のとおり、全体の2割ほどのコアなファン層が売上の半数以上を支えている。価格改定などの局面でもブランドを支持し続けてくれるファンとの絆を、LINEを通じていかに深めるかが戦略の要となった。そこで導入されたのが、ユーザーを主役として巻き込むコンテンツ設計である。
「LINEは個人のスマホの中で完結するため、通常は『自分と企業』だけの関係(I)に閉じがちです。そこを『We』、つまり他にも同じ商品を応援しているユーザー同士のつながりを感じられる空間に転換したいと考えました」(伊藤氏)
具体的には、Linyの機能を活用し、LINEユーザー参加型の企画を次々と実施。LINE上での応募数が増えるにつれて、プレゼントの当選人数や内容が段階的にアップしていくキャンペーンだ。「他の友だちもこんなに参加しているんだ」「みんなで目標を達成しよう」という一体感を醸成し、参加意欲を高めることに成功した。
また、2つの選択肢からユーザーがタップで好みの投票を行う「どっちが好み」企画も展開。自分が選び、応援した商品が支持を集めることで特典がもらえるという参加型体験は、LINE公式アカウントならではの強みであるリッチメニューを最大限に活かした設計だ。
さらに同社は、購入した商品の空きパッケージを撮影してポイントを貯めるネイティブアプリ(※)「カルビー ルビー プログラム」との連携も強化した。いきなりアプリをダウンロードしてもらうのはハードルが高いが、LINEを「ライト層との緩やかな接点」として位置づけ、LINE上で遊べる農園ゲーム「サクサク掘れ掘れCalbeeFarm」をLINEミニアプリで展開。LINEでの体験を通じてエンゲージメントが高まったタイミングでネイティブアプリへと誘導する導線を構築した。
※端末にダウンロードして利用する専用アプリ
「リアルからLINE、LINEから再びリアルへ。エンゲージメントのループを回すことで、LINE公式アカウントは配信ツールから『顧客との継続的な接点となる資産』へと変化しています」(伊藤氏)
この取り組みの結果、開封率は48%から85%へと大きく上昇し、アンケート回答率は2.8倍に改善。カルビーにとってLINEは、見えなかったコアファンの顔を可視化する重要な接点となった。
現場の属人性を根底から排除する──UTグループのLINE一本化戦略
続いて登壇したUTグループの渡辺稚月氏は、BtoB/HR領域における徹底したオペレーション変革の事例を紹介した。同社は製造業向けの人材派遣・紹介事業を展開し、月間1,000名以上の派遣社員を雇用する巨大なオペレーション基盤を有している。
「当時の課題は、求職者との『つながりにくさ』でした。従来は電話、SMS、メールを中心に対応していましたが、年々その接触率が低下していました。また、膨大な求職者データをCRMで管理していたにもかかわらず、実際の採用業務とデータが分断されており、ユーザー特性に応じた最適なアプローチができない『点の対応』になっていました」(渡辺氏)
最大のボトルネックは、700名を超える現場スタッフごとの対応のばらつき、つまり属人化だ。どのようなコミュニケーションを取っているかがブラックボックス化しており、対応漏れや選考の途中離脱が防ぎきれない状況にあった。
この課題を解決するため、同社は求職者との連絡手段をLINEに統一。さらに、CRMとLinyをAPIでデータ連携させることで、求職者の選考状況に応じて最適な案内やリマインドを自動で配信できる仕組みを構築した。データと実務プロセスを一本化し、自動化と可視化を徹底することで、現場の属人化を根底から排除する採用DXへと舵を切ったのである。

