LINE公式アカウント・メールのAIエージェント化でクリエイティブ制作時間を大幅に軽減・代理店コストも75%削減
では、LINE・メールマーケティングにおいてAIをどのように活用しているのだろうか。
名鉄には「名鉄ミューズ会員」という会員制度がある。同社ではこの会員に向け、旅行やイベント、グルメなどの最新情報をLINE公式アカウントやメールで案内している。その配信プロセスを、半年前にAIですべて自動化したという。
まず、AIのディープリサーチ機能によって、配信するサービスに関連した市場トレンドを探索し、最適な訴求軸を導き出す。旅行であれば「秋を満喫する行き先」や「温泉一人旅」など、その時期の人気トレンドを引き出していく。
次にCRM内のデータについて、サードパーティーデータも用いてAIがリサーチを行い、セグメントの切り口を見つけ、リストを生成する。そしてそのセグメントからAIで「仮想ペルソナ」を生成し、配信するメッセージのA/Bテストを実施してコンテンツを最適化する。
そのフィードバックをもとに、AIが最適な配信プランを策定。セグメントリストの抽出からコンテンツ生成に至る一連の施策を最適化して配信し、その成果を学習データとして蓄積することで、運用の精度を上げていく。
吉田氏は「セグメンテーションからプランニング、メッセージ作成、配信に至るまで、完全な自動運用ができています」と明かす。
たとえば名鉄グループのラーメン店「ラの壱」では、地元住民向け、ビジネスパーソン向け、アクティブなファンの若年層向けという3つのセグメントをAIで抽出。それぞれの層に最適なメッセージ配信のクリエイティブをAIが自動生成している。人の手は一切介在しておらず、配信工数を下げつつも、顧客の体験価値を上げているという。
「定量的な成果では、メールのクリエイティブ制作工数を9時間から30分に短縮できました。さらに、開封率・クリック率ともに、人が運用していた頃より改善しています。また、LINE公式アカウントのメッセージ配信の制作工数も70%圧縮できました。AIが適切にセグメントを作成するため、LINE公式アカウントのブロック率改善にもつながっています。コスト面では、外部代理店への委託費を75%削減できたことで、金額にすると年間で数千万円規模のコスト削減につながりました」(安井氏)
続けて安井氏は「人が運用していた頃がだめだったというわけではない」とも強調した。もともと同社には、AIエージェントを推進する以前に、代理店が約3年かけて作り上げた運用の仕組みが存在していた。この強固なベースがあったからこそ、AIエージェントの成果が得られたと捉えているとした。

AI自動化の成功と業務成果向上の要因について、安井氏は「『人がやる業務にAIをどう差し込むか』ではなく、『AIが業務を行うとしたらどうなるか』という発想の転換で業務フローとシステムを一から設計し直しました」と説明する。
既存の業務フローやシステムにAIをそのまま組み込んでも、効果は30%程度にとどまる。吉田氏は「業務フロー全体を見直してAIベースで設計したことが、大きな成果につながったと思います。名鉄さんは、AIを前提にオペレーション全体を大胆に作り変える“with AI”の思想を、スピード感を持って実行されました」と分析した。

