仕事・実務の文脈──仕事を前に進め、対人負荷をも支えるAI
仕事・実務の文脈では、AIは極めて機能的な存在として位置付けられる。情報収集や要約、メール作成、企画書のたたき台作りなど、「仕事を前に進めるための道具」として活用されている。
AIがなくなった場合の困りごととしてビジネスパーソンからは、「メール作成の時間が劇的に増える」「ゼロから構成を考えるのが大変になる」といった声が挙がった。AIがたたき台を作ることで、「どこから考え始めるか」という初動負荷を軽減し、仕事を前に進めやすくしている。
一方で定性調査では、「断りのメールを書きたくない」「気難しい取引先への返信はAIに任せている」「感情的になりそうな内容を一度AIに整えてもらう」といった声も見られた。AIが肩代わりしているのは、考える負荷だけではない。相手への配慮や言葉選び、自分の感情を抑えながら文章を組み立てるといった、対人コミュニケーションにともなう精神的な負荷まで軽減しているのである。
ただ、AIそのものを無条件に信頼しているわけではない。ビジネスパーソンの生成AIへのネガティブな感情は「正しい情報かどうかを確認するのが面倒」が最も高く、生成結果を自ら確認・修正する姿勢も強く見られた。AIは判断を代替する存在ではなく、あくまで判断までのプロセスを支える存在として受け入れられている。
家事・育児の文脈──実務を支え、抱え込む負荷も軽くするAI
家事・育児の文脈では、料理や献立作りといった家事支援だけでなく、悩み相談にも利用されている。具体的には、主婦層の28%、小学生までの子育て層の27%が家事支援にAIを利用している一方で、主婦層の39%、子育て層の42%は「悩み相談」にも利用している。別の用途に見える「家事支援」と「悩み相談」でも、夕食の献立を考える、子どもが食べてくれず落ち込む、誰にも相談できずAIに気持ちを整理してもらう、というように、生活者にとってはこうした一連の出来事が一つの生活文脈として連続している。
AIがなくなった場合の困りごとでも、「家族や友人には頼りたくない困りごとが蓄積してしまう」「育児の唯一の相談相手だから」という声が見られた。ここで失われるのは、相談相手そのものではない。周囲に気を遣ったり、迷惑をかけたりしてしまうのではないかとためらうことなく、自分の困りごとを打ち明けられる場である。
AIは家事や育児を支える実務負荷に加え、「誰かを頼る」ことにともなう心理的負荷まで引き受けることで、生活全体を支える存在として機能している。AIがなくなることで失われるのは、「実務支援」と「心理的支援」のどちらか一方ではなく、その両方である。
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千場 明美(センバ アケミ)
QO株式会社 マーケティングコンサルティング本部 リサーチコンサルティング部
事業会社を経て、2020年にQO株式会社(旧H.M.マーケティングリサーチ)へ参画。小売・食品系企業のKPIマネジメントやアドホック調査、広告キャンペーンの効果測定をメインに担当。2026年よりリサーチコンサルタント職として、...
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