前後の文脈から行動の目的・動機を推定する
行動ログの単純集計で見えるのは、「どんな行動が多いか」「どんな行動が一緒に起きやすいか」という水準までとなる。DCJはその一歩先、「行動がどんな順序で並び、その前後にどんな文脈があるか」を読み取る。前後にどんな行動をとったかを手がかりに、一つひとつの行動の目的・動機を推定していくのだ。
例として挙げられたのが、自社ブランド名での検索行動だ。SNSで動向を見て、カテゴリーのページを眺め、その流れでブランド名を検索する。これは軽い情報収集の検索である。一方、口コミを調べ、価格比較サイトで確認した後にブランド名を検索する場合は、意味がまるで違う。
「同じ『ブランド名検索』でも、SNSでふと目にして調べただけの検索と、口コミも価格も確認し抜いた末の検索では、意味がまったく違います。行動単体では、どちらなのかはわかりません。ですが、その前後の文脈まで見れば、どちらの検索なのか、その行動の目的・動機まで、推定できるのです。そして、それがわかれば、次にどこへ向かうのかも読める。だからこそ、次にどの行動へ移るかを確率で示せるのです」(中村氏)
行動の“順序”を捉え、前後の文脈から目的・動機を推定し、次にどの行動へ移るかの確率を算出する。目的・動機を踏まえて整理した行動同士を、確率で結んでできあがる構造が、DCJのアウトプットである。
データドリブン・カスタマージャーニーの6つの価値
中村氏は、DCJの価値として次の6つを挙げた。
- 仮説を置かず、データから導ける
- 裏付けをもって、ジャーニーを語れる
- 一本道ではなく、存在するすべてのルートを捉えられる
- 代表的なルートを、いくつかに絞り込める
- 表面上似た動きも、異なるジャーニーとして判別できる
- 意識のアンケートも組み込み、ジャーニーごとの意識変化を捉えられる
具体例として紹介されたのが、小売業の顧客行動の解明だ。仮説からジャーニーを描けば、店頭で実物を確認した顧客はそのまま購入する、という流れになりやすい。ところがDCJが示したのは違う顧客像だった。「店頭での実物確認」から購入に至るのは25%にとどまり、残りの75%は「店内Web検索」へ進むことが見えてきたのだ。
「実物の商品を見た上で、その場でスマートフォンを開くお客様が数多くいるということです。仮説からジャーニーを描いていたら、実物を確認してそのまま購入という、事実と違う道を導き出していたかもしれません」(中村氏)
こうした発見ができれば、店舗とオンラインを一体で捉える顧客体験、いわゆるOMOの検討に進める。店内Web検索を前提とした掲示物の見直しなど、具体的な施策にもつなげられる。
同じ分析では、情報収集の後に「Webで他ブランドと比較する人」と、「そのまま店頭に向かう人」がほぼ同数であることもわかった。「印象で『どちらが多い』と言い合うのではなく、確率の数字で語れる。これが裏付けの価値です」と中村氏は強調した。
また、DCJでは存在するルートをすべて書き出せる。そのため、同じ状態を行き来する動きまで数字で表れ、顧客がどこで滞留しているかも見えてくるという。一方で、すべてを書き出せば経路は膨大になる。そこで、確率の高さをもとに代表的なルートへ絞り込むのだ。実際に高価格帯商材の分析では、大きく3つの代表ルートに整理でき、ルートごとの顧客特性の違いも明らかになったと中村氏は述べた。
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落合 真彩(オチアイ マアヤ)
教育系企業を経て、2016年よりフリーランスのライターに。Webメディアから紙書籍まで媒体問わず、マーケティング、広報、テクノロジー、経営者インタビューなど、ビジネス領域を中心に幅広く執筆。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
提供:株式会社電通クロスブレイン
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