「100人に1人が好き」から広く波及させる
──プロダクトについてもうかがいます。佐久醸造所へ約10億円の投資を行い設備更新をされるなど、品質を担保するための体制も強化されていますね。ものづくりに対するお考えをお聞かせください。

仮屋:ビールが駄目だと何も始まらないと言いますか、ものづくりは私たちが一番大事にしているところであり、絶対に譲らないところです。品質へのこだわりはすごく大事にしています。
──万人受けではなく限られた人に深く届くものを作る意識をお持ちだと発信されています。ビジネスとして広がりも重要だと思いますが、どう両立させているのでしょうか?
仮屋:これは個人的には両立可能なものだと思っています。プロダクトアウトかマーケットインかという二項対立で語られることが多いですが、私はそうではないと思っています。
「100人に1人に深く響くもの」をつくりますが、「100人に1人にしか受け入れられないもの」をつくるわけではないのです。奇をてらったものを作りたいわけではなく、すごく個性があって好き嫌いは分かれるかもしれないけれど、お客様の心を深く打つような味やブランドを大切にしています。同時に、私たちはビールの文化をつくることをしているので、狭いところに留まっていて良いとは全然思っていません。時代の1歩先を行くけれども、それが将来的にスタンダードになり得るもの。そういった志を持って開発しています。
──市場を自分たちでつくっていくということでしょうか?
仮屋:そうですね。同時に「市場がこう言っているからつくる」というように迎合したり媚びたりはしないです。お客様の声やトレンドは見ますが、自分たちのものづくりのポリシーやブランドづくりのポリシーと両取りしようとしています。
技術の粋を集めた新ブランド「ブループリント」
──迎合せずポリシーを大事にする中で、「ヤッホーらしさ」はどのように社内で共有しているのでしょうか?
仮屋:実はビールの味について「らしさ」をあえて明確に言語化していない側面があります。一方で、目指す方向性自体は共通認識としてあるので、製品を出すときに開発担当だけでなく、ブルワーやブランドチームも含めて「ヤッホーがクラフトビールのトップメーカーとして出すべきビールになっているか」「王道感やオーセンティックな感じが得られるか」というディスカッションはとても大事にしています。
──今年7月に登場した新ブランド「ブループリントシリーズ」はどのような位置づけなのでしょうか?
仮屋:私たちは自信を持ってビールを出すために常に技術的な研鑽を積んでおり、そこで培ってきた技術の種や資産を詰め込んだプロトタイプ的なブランドが「ブループリントシリーズ」です。
顧客に向けた目線で言うと、クラフトビールのことをよく知っているコアファン向けの、奥行きのある製品として位置づけています。また、業界関係者の方に楽しんでほしいという裏テーマもあります。ゆくゆくはこのブランドで海外のビールコンペで金賞を取るのが1つの目標です。私たちの製品はコンビニに置かれることもあり、大手メーカーのように見られることもありますが、数多くあるクラフトビールメーカーの1社として「私たちの技術はすごいんだ」ということを示し続けたい思いがあります。
