Maxxingの時代から、いざアウトカムの時代へ
2点目の「土台づくり」とは、AIに質の高いコンテキストを与えることだ。ランガン氏はコンテキストを「自社のビジネス、顧客、チームに関する動的な知識」と定義する。

「AIに手当たり次第のデータを投げつけても、出てくるのは中身の薄い生成物だけです。必要なのは、ビジネスや顧客、チームについての深く、具体的で、最新のコンテキストです。これを与えることで、AIは汎用のアシスタントから、自社のビジネスを知り尽くした天才的な専門家へと変わります」(ランガン氏)
質の高いコンテキストを持ったAIは、商談の成約率や顧客とのミーティング数などで劇的な成果を生む。一方で、質の悪いコンテキストを与えられたAIは「AIをまったく使わないよりも悪い結果をもたらす」とランガン氏は警告。なぜならAIは、人間のように誤った情報をうまく補正できないからだ。変革を実現する企業はこの事実を理解し、正確なデータという土台を地道に築いている。
3点目の「人材に意図を持って向き合っている」とはどういうことか。AIの進化により「作ること」へのアクセスが民主化され、誰もが簡単にプロトタイプや自動化の仕組みを開発できるようになった。しかし、だからこそ「何をすべきか」が問われている。
「開発する・作ることのハードルは下がりました。ただし、求められる思考の水準は上がりました。難しいのは開発することではなく、何を作るかを決めること、モデルが出した答えが自社にとって正しいかを問うことです」(ランガン氏)
手当たり次第に作ってリリースするのではなく、批判的な思考や判断力が求められる時代になった。ランガン氏は「人間かAIかという二者択一ではなく、両方の強みを組み合わせてレバレッジを生むことこそが、私たち全員にとって最大の機会なのです」と力強く呼びかけ、AI時代における人間の知性の重要性を強調した。
「変革を実現する企業はThe Maxxing Phaseにはいません。彼らはThe Outcomes Era(アウトカムの時代)にいます。冒頭で紹介した私の友人のように『自分は遅れているかもしれない』と感じたら、シンプルな3つの問いを自分に投げかけてください。自分が生みたい成果を理解しているか。正しい土台を持っているか。AIとともに考え、AIとともに作れる人材がいるか。この3つの問いに集中し続けられれば、皆さんは遅れを取り戻すだけでは終わりません。これから来る時代をリードすることになります」(ランガン氏)
1つのことをするために100万個のツールが必要なのではない
ランガン氏の次にステージに登場したのは、最高製品・技術責任者のダンカン・レノックス氏だ。ここからは、エージェンティックカスタマープラットフォーム「HubSpot」の製品アップデートを紹介するパートに入る。
レノックス氏が「アウトカムの時代における新しい業務の形」として提示したのが、全面刷新された「Breezeアシスタント」だ。これまで提供されてきた単なる情報の要約や会議準備といった補助機能にとどまらず、ユーザーの意図を汲み取って自ら主体的に“行動”を起こすAIへと劇的な進化を遂げた。
「1つのことをするために100万個のツールが必要なのではなく、100万個のことができる1つのツールがあるとしたらどうでしょうか。全面刷新したBreezeアシスタントは、単にレコードをまとめたりするだけのものではありません。何を成し遂げたいかを伝えるだけで、自ら必要なツールを引き寄せて即座に作業へ取りかかります」(レノックス氏)
ユーザーは自然なテキスト入力や音声による語りかけだけで、高度なデータ分析から洗練されたレポートの作成までを数分で完遂できるという。さらに、独自のエージェントをノーコードで構築できる「Agent Builder」で作成した専門AIも、同僚のチームメンバーと同様にメンションするだけで指示を与えることができ、失注理由の分析といった複雑なタスクを分担させられるようになった。
ここでレノックス氏は、マーケターが「マーケティングスタジオ」上でBreezeアシスタントと対話し、検索露出の低下という課題の発見から戦略立案、複数チャネル向けの制作物作成、さらにはリードの育成までを一気通貫で完結させるデモを実演。いくつものツールを行き来する現場の摩擦を削ぎ落とし、成果を生み出すスピードを極限まで加速させる「新しい業務の形」として、会場からは大きな拍手が送られる。
