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「検索する」から「AIに相談する」へ──米Gapが仕掛けるファッションECの新たな購買体験

中井千尋(Livit)[著]

「検索する」から「相談する」へ。変わるファッションEC

 従来のファッションECでは、消費者は自分の欲しい商品をある程度具体的に把握している必要があった。

 たとえば「黒のジャケットが欲しい」と思えば、検索窓に「黒 ジャケット」と入力し、サイズや価格、ブランドなどで絞り込む。検索結果を比較しながら、自分の希望に近い商品を探すという流れだ。

 しかし実際の買い物では、最初から欲しい商品が明確になっているとは限らない。「来週のパーティーに着ていく服が欲しいが、何を選べばよいかわからない」「仕事にも休日にも使える服を探している」といったように、消費者が持っているのは具体的な商品名ではなく、目的や悩みであることも多い。

 会話型AIは、こうした曖昧なニーズを商品選びにつなげる可能性を持つ。

 従来の検索では、消費者自身が希望を検索キーワードに置き換える必要があった。しかしAIとの対話では、利用シーンや好みを伝えながら候補を絞り込むことができる。いわば、オンライン上で販売員に相談するような買い物体験だ。さらにAlta Dailyのようなサービスでは、商品を単体で探すのではなく、コーディネート全体から購入を考えられる。

 これはファッションECにとって重要な変化といえる。消費者が求めているのは、必ずしも特定の服ではない。その服を着ることで実現したいスタイルや、自分らしい装いである場合もあるからだ。

 AIがそうした目的や文脈を理解するようになれば、ECサイトは単なる商品カタログから、購買の意思決定を支援するサービスへと進化する可能性がある。

ブランドのECサイトを訪れずに、商品と出会う時代へ

 今回のGap Inc.の取り組みで、マーケターが特に注目したいのは、自社ECサイトと外部AIサービスという複数の顧客接点を構築している点だ。

 これまでアパレル企業のEC戦略では、自社サイトへの集客が重要なテーマだった。検索エンジンやSNS広告、インフルエンサーマーケティングなどを通じてブランドへの関心を高め、ECサイトへ誘導し、購入につなげるという流れである。

 しかしAIショッピングサービスが普及すれば、消費者が商品を発見する場所は必ずしもブランドのECサイトとは限らなくなる。

 たとえば、消費者がDaydreamに「秋の旅行に使える、シンプルで着回しやすい服が欲しい」と相談したとする。AIが複数ブランドの商品を比較し、その中からGapの商品を提案すれば、消費者はGapのサイトを訪れる前に、その商品を購入候補として認識することになる。

 この場合、ブランドと消費者の最初の接点をつくるのは、検索エンジンでもブランド自身でもなく、外部のAIサービスだ。

 Gap Inc.は、こうした外部AIとの接点を以前から広げてきた。2025年11月には、AIショッピングプラットフォーム「Daydream」を通じて商品を発見し、自社ECサイトで購入できる仕組みを紹介。2026年3月には、Googleの「Universal Commerce Protocol(UCP)」への対応を発表し、Google検索のAI ModeやGeminiアプリ上でGapの商品を購入できるようにする方針を示した。

 そして今回、Alta Dailyとの連携によって、商品を探すだけでなく、AIが提案するコーディネートをデジタルアバターで確認する体験へと接点を広げた。

 一連の取り組みから見えてくるのは、消費者を自社ECサイトに呼び込むことだけに依存しない戦略だ。消費者がどのようなAIサービスを使っていても、そこで自社商品を発見してもらえる環境を整える。Gap Inc.は、そうした方向へと購買体験を拡張しようとしている。

 もっとも、AIが商品を比較・推薦するようになれば、ブランド側に新たな課題も生まれる。どの商品が候補として提示されるのか、どのような特徴とともに紹介されるのか。その判断の一部を外部のAIサービスが担うようになるからだ。

 従来は企業が自社ECサイトのデザインや商品掲載順を管理できた。しかし外部AIサービスでは、ブランドが消費者への見せ方を直接コントロールできる範囲は限られる。商品を発見してもらう機会が広がる一方で、顧客との接点を外部プラットフォームに依存する可能性も高まるのである。

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AIショッピング時代、ブランドのマーケティングはどう変わるのか

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この記事の著者

中井千尋(Livit)(ナカイ チヒロ)

大学卒業後、金融機関勤務を経て、イギリスへ留学。そこで培った語学力を活かし、帰国後は企業の語学研修コンサルティングに携わる。シンガポールに渡り、大手日系商社に転職。シンガポール人、インド人、オーストラリア人、モンゴル人、中国人など多国籍社員が集う場でのビジネスを経験。その後、オランダに渡り、ライターとして独立。分野...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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