顧客の悩みに寄り添ったことで生まれた、3つの象徴的な機能
MarkeZine:ワークマン公式アプリの象徴的な機能を教えてください。こだわりのポイントをご紹介いただけますか。
荻原:大きく3つあります。1つ目は「先行予約」の機能です。ありがたいことにSNSで話題になる商品も多いのですが、「せっかく店舗に探しに行ったのに買えなかった」と、お客様から厳しいお声をいただくこともしばしばあり、アプリで少しでも解消できないかと考えました。もちろん、これで問題がすべて解決したわけではありませんが、話題性と在庫のギャップを軽減することはできていると思います。
近藤:在庫問題はワークマン様に限らず、アパレル業界全体が抱える課題ですね。ただ、ワークマン様の場合は「ECで代替すればいい」という発想ではなく、あくまで店舗体験をより良くするためにアプリを活用されていますよね。公式アプリは、EC化のための接点ではなく、店舗体験を拡張する接点になっている。そこにワークマンらしさがあると感じました。
荻原:おっしゃる通りです。2つ目は、シンプルでわかりやすいUIです。直感的な操作で通信のストレスもないため、ECよりもシームレスに商品ページまでたどり着けます。また、些細な表現ひとつとっても「どちらの文言のほうがわかりやすいか」を徹底的に議論して作り込んでいるんですよ。たとえば、「商品検索」ではなく「商品を探す」にするなど、顧客目線での表現にこだわっています。
3つ目は、「店舗を探す」機能です。一般的な小売アプリは「特定店舗への誘導」が前提になっていることが多いですが、ワークマン公式アプリでは「そろそろ梅雨だし雨対策をしておこう」「アウトドア用のパンツが欲しい」といった、日常のふとした瞬間に生まれるお客様のリアルなシーンを起点にしています。
これらの機能は単なる店舗検索ではなく、お客様の「今ほしい」「今行きたい」というシーンに合わせて、最適な店舗や商品との出会いを後押しするものだと考えています。
近藤:お客様が動き出すその瞬間と、ワークマンの多様なブランドをその場で結びつける――この機能は単なる店舗検索ではなく、アプリのUXを突き詰めた動的な「シーンフィッティング」的な役割を担っていますね。
「お気に入り店舗」での普段使いのニーズと、出先での「今買いたい」というニーズ、ワークマン公式アプリはこの2つの購買パターンに対応できている。徹底した顧客理解があるからこそ、ニーズに基づいた仕様が生まれ、ユーザーからの高い評価につながっているのだと感じます。
ワークマン公式アプリの伸長を支えたのは、店舗と本部を繋ぐ「EX」の土壌だった
MarkeZine:リテール領域におけるアプリ開発に数多く携わり、ワークマン公式アプリの開発も支援されたヤプリの目線からは、ワークマン公式アプリの成功の秘訣をどのように分析されますか?
近藤:結論から言うと、顧客体験(CX)と従業員体験(EX)、2つの体験の掛け合わせが功を奏していると考えます。
昨今多くの小売企業がオムニチャネル施策を推進していますが、顧客向けの取り組みや「CXの向上」ばかりに目を向けがちです。しかし、現場の店舗スタッフや本部メンバーといった足元のEXが置き去りになっていると、アプリの意図や目的は現場に伝わらず、施策は形骸化してしまいます。
真のCX向上を実現するためのカギは、インナーコミュニケーションの活性化――社員に施策の目的を理解してもらい、当事者として向き合ってもらうためには「EXの向上」が不可欠なのです。これはリテールビジネスにおける昨今のトレンドでもあります。
荻原:まさに、足元のEXという土壌があったからこそ、今回の結果に繋がったと感じています。実は当社では、公式アプリを開発する前に、店舗と本部の連携を目的としたアプリを、ヤプリのEXソリューション「UNITE by Yappli」で開発していました。あらかじめ社内向けアプリを通じて、本部と現場がスムーズに連携できる基盤が整っていたからこそ、「徹底してお客様のシーンに寄り添い、網羅的に情報を届ける」という公式アプリの目的や存在もスムーズに受け入れてもらえたのだと思います。
MarkeZine:顧客と従業員、2つの体験向上に取り組まれた結果、ユーザーからはどのような反響が寄せられていますか?
荻原:プッシュ通知やアプリ内バナーなど、高頻度で様々な告知をさせてもらっていますが、継続して熱量高くご覧いただけていることがデータから明らかであり、ロイヤルカスタマーにしっかり届いていると実感しています。
また、アプリのダウンロード数はセール期間や展示会のタイミングなどで顕著に伸びる傾向にあります。広告やポイント還元キャンペーンなどで無理に引き込むのではなく、当社のことを能動的にリサーチしてくれている関心の高いお客様がダウンロードしてくれているからこそ、この熱量を実現できているのだと考えています。

