国民的IPの拡大を支えてきた、ADK独自の3つのノウハウとは?
━━長年愛されるコンテンツを扱ってきた知見を、IP関連ではない事業会社の支援にどのように転用しているのでしょうか。
末本:私たちは、長年の「経験」をデータ化・形式知化するために、主に3つの視点を意識してプランニングを行っています。
末本:1つ目は、独自調査を通じた「ビジネス・ファンの戦略的構造化」です。生活者がどこに惹かれ、どこで収益が発生しているのかを分析し、一般企業が持つ潜在的なチャンスを見つけ出します。
2つ目は、「人文科学的アプローチ」です。「今この時代に、この場所で、この人たちにとって、これは何のためにあるのか」「それがなぜ愛されることに繋がるのか」を徹底的に議論し、生活のなかで果たしている役割や本質的な提供価値を言語化します。
3つ目は、定量データと「現場のリアル」の掛け合わせです。営業(BP)やプランナーが現場で受け取った視座を社内で議論し、データの裏にある生活者の息遣いを捉えるようにしています。
━━具体的な分析のステップについても教えてください。
末本:心理軸と行動軸から現在の立ち位置を特定する「ポジション分析」を最初に行います。ここで心理軸と行動軸の両者を見るのは、IP領域では「課金する以前からファンになっている」ということが当たり前に起こるからで、その意味では「行動」も課金以外の様々な形を把握する必要があります。次に、そのブランドがどのような「感情報酬」を与え、何に課金しているのかという構造を突き止めます。
その上で、「熱量の高いコアファン(N=1)」へのヒアリングを行い、言語化された本質的な価値を未来の兆しとして消化していきます。
場づくりから行動変化まで、生活者の“行動理由”を設計する
━━「IP×マーケティング」のシナジーは、具体的にどのようなケースで発揮されているのでしょうか。
末本:分かりやすい事例としては「企業キャラクター」の開発・支援実績が豊富にあります。当社のプランナーがゼロから企画、制作するケースも少なくありません。
企業の課題や理念に応じて、商品体現型やユーザー代表型などの立ち位置を設計し、来店促進やインナーブランディングに大きな効果を生んでいます。
三橋:企業が直接発信しても届かないメッセージであっても、キャラクターが介在することで、生活者が素直に耳を傾けてくれるというメリットもあります。
末本:また、キャラクターが直接介在しない領域、例えば場づくり領域でも知見が活きています。物理的な空間提供にとどまるのではなく、体験を提供するエンターテインメントの空間へ置き換えることで、「また来たくなる理由」をプロデュースしています。
さらに、コモディティ商品や高機能家電などの愛着形成の領域にも有効です。コモディティ商品は機能での差別化が難しいため、IPビジネスで培った視点は、機能訴求だけでは生まれにくい行動理由や愛着を設計する、という考え方から学べるものは多いと思います。
高機能家電も同様に、生活者にとって「使ってみたい」と思える理由がなければ、結局は使われません。だからこそ、最初の行動理由をつくり、その後の継続利用や愛着形成につなげる体験設計が重要です。
三橋:ロジックの積み上げで正しい答えが出せるAI時代だからこそ、人はどう感じるかという翻訳や、ブリッジとなるクリエイティブジャンプを作れる我々の強みが活きると確信しています。

