「関係性の質」の先にある、取引が伸びる担当者の行動特性
──今回、パートナー企業の担当者・責任者を対象に、「ロイヤルティプログラム(パートナー制度や支援の仕組み)」の実態調査を行った背景を教えてください。
東証プライム上場のメーカー系商社にて15年間、PMMとして商品企画、チャネル設計、プロモーションなどパートナービジネスを含むBtoBマーケティング全般に従事。パートナーセールス部⾨でMVP受賞、⼤型アライアンスで全社アワード受賞の実績。才流では、IT/SaaS、製造業、海外サービスの⽇本での販路構築など、30事業以上の成⻑に携わっている。著書に『パートナービジネス戦略 基本と実践』(⽇本実業出版社)。
調査の背景には、才流がパートナービジネスを支援するなかで見えてきた2つの課題意識がありました。1つ目は、「パートナーとコミュニケーションはとっているのに、なぜか売れない」という、メーカー側のリアルな悩みです。
2023年に実施した前回調査(代理店ビジネスの実態調査)で非常に興味深かったのは、パートナー企業の担当者が注力製品を選ぶ一番の決め手が、機能や価格ではなく「メーカーとのコミュニケーションのしやすさ」だったことです。メーカーもそこは肌感でわかっていて、勉強会を開いたり小まめに顔を出したりと、コミュニケーションを通じた関係づくりに力を入れています。
しかし、それだけでは思うように案件が増えないという現実に、多くのメーカーが直面している。つまり、コミュニケーションが取れていることは売れるための「必要条件」であって、「十分条件」ではないということです。関係構築の先にある「取引金額が伸びているグループの担当者に共通する行動」を突き詰め、メーカー側が整えるべき支援の仕組みを明らかにしたいと考えました。
2つ目は、「会社 対 会社の制度設計」と「現場の意識・行動」の間にあるギャップです。一般的にロイヤルティプログラムというと、資格ランク(ティア)も、MDF(販促支援金)も、表彰も、すべて「会社 対 会社」で設計されがちです。しかし、実際に現場で案件を動かし、複数のメーカーのなかから「どのメーカーの製品を売るか」を決めているのは、パートナー企業のなかにいる「個人」なんですね。
制度は会社単位で設計されているのに、実際の意思決定は個人が行っている。このギャップの実態を、今回の調査で明らかにしたいと考えたのです。
取引金額が伸びているグループの担当者は、メーカーの「上司」にまで感謝を伝えている
──本調査では、取引金額が伸びているグループに見られた行動特性として、大きく「3つのポイント」が浮き彫りになりました。その1つ目である「伸びているグループの担当者ほど、メーカーの上司層に感謝を伝えている」という調査結果ですが、なぜ取引金額が伸びているグループの担当者は、このような行動を取るのでしょうか。
※本記事における調査データの定義
本レポートでは、対象メーカー製品の年間取引金額に基づき、次のようにパートナーをグループ化している(前年比100〜109%のデータは本分析の対象外)。
- 前年比110%以上グループ:伸びているグループ
- 前年比100%未満グループ:伸びていないグループ
これは、今回の調査のなかで最も差が顕著だったところです。伸びているグループは、メーカー担当者の上司にも感謝を伝えている割合が84.7%。伸びていないグループを30ポイント以上も上回りました(図1)。さらに管理職に限定すると40ポイント以上もの差がつきました(図2)。
メーカー担当者の上司にも感謝を伝えている割合は、伸びているグループで84.7%、伸びていないグループで52.2%となり、両者には32.5ポイントの差が見られた。(クリックすると拡大します)
「管理職」のレイヤーにおいては、40ポイント以上の差が見られた。(クリックすると拡大します)
では、なぜ伸びているグループの担当者はこうした行動を取るのか。推測される背景として、パートナービジネス特有の「毎年ゼロリセット」という構造があります。パートナー企業は取り扱うメーカーや注力商材を毎期見直します。さらにメーカー側・パートナー側双方で担当者の異動や組織変更も起こります。その結果、パートナー担当者がメーカーと築いてきた関係がリセットされやすい構造があります。
こうした関係のリセットに備えるため、取引金額が伸びているグループの担当者は、窓口の一人だけを「点」として見るのではなく、上司や周囲の同僚まで含めて「面」で関係を作っていると考えられます。
面で作っておけば、人が変わっても関係が途絶えず、メーカーの窓口担当者一人に依存するリスクを抑えられます。そうやってメーカーの組織全体に深く入り込んでいくと、たどり着くのが「ファーストパートナー」のポジションです。数あるパートナーのなかで、メーカーが何かあれば真っ先に声をかける、別格の1社。ここを取れると、計り知れないメリットがあるのです。
