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データと心理から紐解くパートナービジネスの本質

パートナービジネスの本質は「人を動かす」こと。取引が伸びる担当者の共通行動を才流の調査から紐解く

 パートナービジネスの成果を左右するのは、「会社 対 会社」の制度設計だけでなく、「人」への働きかけだ──。BtoB営業・マーケティングを支援する才流(サイル)は、IT製品を取り扱うパートナー企業の担当者・責任者400名を対象に「ロイヤルティプログラムの実態調査」を実施した。その結果、取引金額が伸びているパートナー企業の担当者ほど、メーカー窓口の上司にまで感謝を伝え、MDF(販促支援金)を能動的に使い倒しているという共通行動が浮かび上がった。本記事では、調査を主導した同社の桂川誠氏に、パートナービジネスの成果最大化を目指す「メーカー」と「パートナー」、双方へ向けた提言を聞いた。

「関係性の質」の先にある、取引が伸びる担当者の行動特性

──今回、パートナー企業の担当者・責任者を対象に、「ロイヤルティプログラム(パートナー制度や支援の仕組み)」の実態調査を行った背景を教えてください。

株式会社才流 シニアコンサルタント 桂川 誠氏
東証プライム上場のメーカー系商社にて15年間、PMMとして商品企画、チャネル設計、プロモーションなどパートナービジネスを含むBtoBマーケティング全般に従事。パートナーセールス部⾨でMVP受賞、⼤型アライアンスで全社アワード受賞の実績。才流では、IT/SaaS、製造業、海外サービスの⽇本での販路構築など、30事業以上の成⻑に携わっている。著書に『パートナービジネス戦略 基本と実践』(⽇本実業出版社)。

 調査の背景には、才流がパートナービジネスを支援するなかで見えてきた2つの課題意識がありました。1つ目は、「パートナーとコミュニケーションはとっているのに、なぜか売れない」という、メーカー側のリアルな悩みです。

 2023年に実施した前回調査(代理店ビジネスの実態調査)で非常に興味深かったのは、パートナー企業の担当者が注力製品を選ぶ一番の決め手が、機能や価格ではなく「メーカーとのコミュニケーションのしやすさ」だったことです。メーカーもそこは肌感でわかっていて、勉強会を開いたり小まめに顔を出したりと、コミュニケーションを通じた関係づくりに力を入れています。

 しかし、それだけでは思うように案件が増えないという現実に、多くのメーカーが直面している。つまり、コミュニケーションが取れていることは売れるための「必要条件」であって、「十分条件」ではないということです。関係構築の先にある「取引金額が伸びているグループの担当者に共通する行動」を突き詰め、メーカー側が整えるべき支援の仕組みを明らかにしたいと考えました。

 2つ目は、「会社 対 会社の制度設計」と「現場の意識・行動」の間にあるギャップです。一般的にロイヤルティプログラムというと、資格ランク(ティア)も、MDF(販促支援金)も、表彰も、すべて「会社 対 会社」で設計されがちです。しかし、実際に現場で案件を動かし、複数のメーカーのなかから「どのメーカーの製品を売るか」を決めているのは、パートナー企業のなかにいる「個人」なんですね。

 制度は会社単位で設計されているのに、実際の意思決定は個人が行っている。このギャップの実態を、今回の調査で明らかにしたいと考えたのです。

取引金額が伸びているグループの担当者は、メーカーの「上司」にまで感謝を伝えている

──本調査では、取引金額が伸びているグループに見られた行動特性として、大きく「3つのポイント」が浮き彫りになりました。その1つ目である「伸びているグループの担当者ほど、メーカーの上司層に感謝を伝えている」という調査結果ですが、なぜ取引金額が伸びているグループの担当者は、このような行動を取るのでしょうか。

※本記事における調査データの定義
本レポートでは、対象メーカー製品の年間取引金額に基づき、次のようにパートナーをグループ化している(前年比100〜109%のデータは本分析の対象外)。
  • 前年比110%以上グループ:伸びているグループ
  • 前年比100%未満グループ:伸びていないグループ

 これは、今回の調査のなかで最も差が顕著だったところです。伸びているグループは、メーカー担当者の上司にも感謝を伝えている割合が84.7%。伸びていないグループを30ポイント以上も上回りました(図1)。さらに管理職に限定すると40ポイント以上もの差がつきました(図2)。

【図1】パートナー担当者がメーカー担当者の上司に感謝を伝えている割合
メーカー担当者の上司にも感謝を伝えている割合は、伸びているグループで84.7%、伸びていないグループで52.2%となり、両者には32.5ポイントの差が見られた。(クリックすると拡大します)
【図2】パートナー担当者がメーカー担当者の上司に感謝を伝えている割合(役職別)
「管理職」のレイヤーにおいては、40ポイント以上の差が見られた。(クリックすると拡大します)

 では、なぜ伸びているグループの担当者はこうした行動を取るのか。推測される背景として、パートナービジネス特有の「毎年ゼロリセット」という構造があります。パートナー企業は取り扱うメーカーや注力商材を毎期見直します。さらにメーカー側・パートナー側双方で担当者の異動や組織変更も起こります。その結果、パートナー担当者がメーカーと築いてきた関係がリセットされやすい構造があります。

 こうした関係のリセットに備えるため、取引金額が伸びているグループの担当者は、窓口の一人だけを「点」として見るのではなく、上司や周囲の同僚まで含めて「面」で関係を作っていると考えられます。

 面で作っておけば、人が変わっても関係が途絶えず、メーカーの窓口担当者一人に依存するリスクを抑えられます。そうやってメーカーの組織全体に深く入り込んでいくと、たどり着くのが「ファーストパートナー」のポジションです。数あるパートナーのなかで、メーカーが何かあれば真っ先に声をかける、別格の1社。ここを取れると、計り知れないメリットがあるのです。

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この記事の著者

猪飼 綾(イカイ アヤ)

キクカク及びライティングユニットおたばぶのライターとして、IT・機械技術を中心に、ものづくりから飲食まで幅広い分野で取材・執筆。また、読者に愛されて、積極的かつ継続的な購買につながるファンマーケティングの観点から、オウンドメディアの運用支援やSNS運用など、Webマーケティング、ブランディング支援を行う。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2026/06/26 07:30 https://markezine.jp/article/detail/76989

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