「なぜ今それを聞くのか?」が伝わっていない
商談の空気を悪くする営業には、ある共通点があります。質問が下手なわけではありません。むしろ、営業研修で教わるような正しい質問をしている人も少なくないでしょう。
たとえば「御社の課題は何ですか?」「予算はどれくらいですか?」「決裁者はどなたですか?」などは、どれも営業として聞くべき質問です。にもかかわらず、お客様の反応が悪くなることがあります。表情が曇る、会話が止まる、少し距離を取られる──なぜでしょうか。
それは、質問が悪いからではありません。質問の前に文脈がないからです。同じ質問でも、答えやすいときと答えにくいときがあります。少し想像してみてください。初対面の相手から「年収はいくらですか?」と聞かれたらどうでしょう。恐らく多くの人が違和感を覚えるはずです。しかし、転職の相談をしている相手から「ちなみに、今の待遇面はどんな状況なんですか?」という流れの中で年収を聞かれたらどうでしょうか。同じ内容でも、受け取り方は大きく変わるはずです。なぜなら、そこには文脈があるからです。
人は質問に答えているようで、実は質問の意味に答えています。だから、質問の内容そのものよりも「なぜ今それを聞くのか」が伝わっているかどうかのほうが重要なのです。
お客様は質問ではなく意図に反応している
たとえば「予算はどれくらいですか?」という質問。営業側は適切な提案をするために聞いているだけかもしれません。しかしお客様は「高額なプランを提案するために探っているのかな」と感じるかもしれません。
また「課題は何ですか?」という質問も、営業は現状を理解したいだけかもしれません。それでもお客様からは「何か問題を見つけて売り込もうとしているのかな」と受け取られることがあります。
つまり、お客様は質問そのものではなく、その裏側にある意図を解釈しているのです。そして文脈がないとき、人は意図を推測します。推測が始まると警戒が生まれます。警戒が生まれると本音が消えます。だから質問が刺さらないのです。
