機能性や価格帯、それに品質に対する信頼性で、国内のみならず海外でも高い人気を誇るブランド、無印良品。「『集客』という考えかたはもう古い」という言葉の真意に迫った(※本記事は、2017年9月25日刊行の『季刊ECzine vol.02』に掲載したものです)。
たしかな品質と安心の価格帯で、日本のみならず世界で人気の高い、無印良品。その徹底したブランディング戦略で、他に例を見ない確固たる地位を確立したといって良い同社だが、ウェブでの集客においても数々の先進的な試みを行っている。
その仕掛け人であり、同社のウェブ戦略全体を統括する立場である、WEB事業部 部長 川名常海さんに、同社がインターネット上でも人を惹きつける秘密と今後の戦略についてうかがった。
「集める」のではなく「出向く」
SNSも含めたすべてを自社メディアとして運用
ウェブでの集客といえば、検索エンジンからの流入が王道だ。無印良品においてもその割合はいまだ最多を占め、直接流入、オリジナルアプリであるMUJI passportからのアクセスがそれに続き、メールマガジン、SNSなどは比較的低い割合に留まるという。
同社ほどのフォロワーを抱えるアカウントでも、ソーシャルからの流入比率はそれほど高くないのは意外に感じられるが、しかし川名さんは、今後この割合は高まっていくだろうと考えている。
「たとえば何か欲しいものがあるとして、無印良品を真っ先に思い浮かべてもらえればそれが一番良い状態です。しかし、そう都合良くはいきません。普通の生活をしている消費者の方々は、インターネットを利用している多くの時間をSNSなど別の場所で過ごしているわけです。自社サイトなどに訪問されるのは、そこで何らかのきっかけがあるからでしょう。それであれば、自社で運営するサイトがすべてという考えは捨て、SNSの公式チャンネルもすべて自分たちのメディアだという認識で運用するのが重要だと思います」
実際、プラットフォーマーと呼ばれるような大手サイトでは、自社サービス内に長く留まらせるための数々の工夫を施している。代表的なものでは、Facebookが採用する「Instant Articles」が挙げられる。これは、ユーザーがFacebook上でコンテンツを閲覧しようとした際、リンク先に飛ばなくてもFacebook上で見ることが可能になる仕組みで、ページの読み込み速度が向上するなどの効果によりコンテンツ提供側にも多くのメリットがあると言われる。同社の発表によれば、Instant Articlesの導入によってクリック数20%上昇、離脱率70%軽減、シェア数30%上昇などの効果を得られるという(※)。
他にも、Googleがモバイル環境におけるページ表示速度の高速化を図る、Google AMP(Accelerated Mobile Pages)を発表するなど、プラットフォーマーたちのウェブ上での「パイの奪い合い」は日々激しさを増していると言える。
そして川名さんは、コンテンツ制作者は今後この大きな流れに乗っていくべきだろうと語った。その根底には、どこでコンテンツを見るかは、ユーザーにとっては重要ではないという考えかたがあるからだ。また、モバイルファーストの時代に突入するにつれ、たとえわずかな表示時間の違いでも「その数秒の違いがユーザー体験として積み重なり、大きなブランド価値となると思います」と語る。
川名さんはまた、サイトの顔ともいえるトップページについても独自の考えを示している。これまでの一般的なウェブマーケティングのセオリーからすれば、トップページに何を掲載するかは重要な問題であった。多くの商品を扱うようなサイトであれば、なおのこと、イチオシの商品を週ごとや日ごとに出し分けることもあるだろう。しかし川名さんは、分散型メディア全盛の現在において、そういった旧態然とした運用は意味が薄くなっていくだろうと語った。
「すべての人が『無印良品』と検索して、トップから順々にページを遷移してくれるとは限りません。とくに今後、お客様が最初に訪れるのはサイトのトップページではなく、SNSなどで言及された個々のコンテンツになることが増えていくはずです」
もはや「自社サイトへ誘導する」という行為や考えかた自体を改めるべきだと話す川名さん。今後、ウェブ上で自社のコンテンツに注目してもらうには、自分たちの領域に人を連れてくるのではなく、「ファンがいる場所に出向く」というスタンスが重要であると語った。
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- この記事の著者
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渡邊 徹則(ワタナベ テツノリ)
株式会社Version7代表取締役。Web・コンテンツ制作、分析、マーケティングなどを手掛ける。
執筆業では、主にソーシャル、EC、海外サービス、メディアなどが専門。
会社概要 - seven@ver7.jp - Twitter/Facebook @brigate7※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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