情報過多が招く選択疲れ。コンビニの構造的課題
藤原:後編では、私がコンビニエンスストアに感じている構造的な課題について、南雲さんとさらに深く議論していきたいと思います。
私は個人的にコンビニにあまり行かないのですが、その最大の理由は「売り場のノイズが多すぎて疲れるから」なんです。たとえばランチのときに水を買おうと思っても、売り場に10種類近く並んでいる。選ぶことのストレスが強く、他のおにぎりやおかずも同様で、選ぶだけで脳が消費されてしまう感覚があります。
飲食店の場合、「このお店といえば○○」という定番があり決めやすいですが、コンビニは選択肢が多すぎる。結果として、失敗したくない生活者は選ぶことに疲弊して、購買意欲を削がれているのではないでしょうか。
下手に選んで「あっちの方が良かったかも」と後悔するくらいなら、もう「塩むすびでいいや」となってしまう心理が働いていると感じます。
南雲:藤原さんのご指摘もよくわかります。ただ、私のような毎日2回は来店するコンビニのヘビーユーザーにとっては、その多さや変化が「発見」であり、一種のストレス発散にもなっているんです。
南雲:「こんな新しいおむすびが出たんだ」「見たことのないプリンがある」という驚きやワクワクですね。ちょっと気分が上がって、明日も頑張ろうと思える。そういうちょっとした幸せを、一番身近なところで24時間提供できるのがコンビニ独自の価値だと私は思っています。妻には「スーパーで買えば安いのに」とよく怒られますが、私にとってコンビニに行くことは、日常の楽しみに他なりません。
藤原:なるほど、毎日の発見が価値になっているのですね。ただ、その価値をより多くの人に届けるためには、やはりファンクショナルな便利さだけでなく、エモーショナルな部分を引き立たせる必要があります。
おにぎりもおかずも多すぎて選べないという人に対して、「ファミチキを食っとけ」というような、迷わせない定番の強さをもっと前に出していくべきではないでしょうか。
南雲:おっしゃる通りです。商品数が多すぎることで生じるノイズを減らし、いかにして「ファミマならこれが美味い」という感情的な価値に直結させるか。これまでの便利さやお得さに加え、感性に訴えかける商品づくりと売り場づくりが、私たちが直面している重要な課題の一つです。
次世代コンビニの鍵は「ライブ感」。南雲氏がファミマで目指す体験とは
南雲:私がファミリーマートでチャレンジしたいのは、コンビニにおける食の定義を大きく変えていくことです。「コンビニの常識やコンビニの枠」を超え、外食や他の市場からもシェアが奪えるような、前編にもあった強い衝撃を与える商品・体験を提供したい。そのためには、丸亀製麺時代に見てきた外食ならではの強みとコンビニの利便性を掛け合わせるなど、新しい思考とイノベーションの形が必要だと考えています。
たとえば、小売業界の中には目の前で調理して出来立てを提供するエンターテインメント型、オープンキッチン型の店舗があります。そのようなライブ感は一つ今後の店舗のあり方のヒントになると思います。
藤原:目の前で仕上げるライブ感は、顧客の熱狂を生む一つの要素ですね。「出来立てが食べられるなら、少し遠いお店でも買いに行く」という強い動機になります。
現在のコンビニで提供される食べ物の多くは、五感でいうと聴覚と嗅覚に訴える「音」と「匂い」の要素が欠けている印象です。五感に訴える要素が限られるため、どうしても無機質な印象になりがちです。
南雲:その方向性で深掘りするなら、たとえば丸亀製麺などで証明されてきた「目の前でのライブ感」「出来立ての美味しさ」「スピード&エンターテインメント」を、コンビニに落とし込むことが鍵になります。フランチャイズという構造や人手不足という制約の中で、どうやってそれらを仕掛けていくのか。その他にどういう方向性のチャンスがあるのか? 社内でも議論しているところです。
また、食以外の観点でも新しいコンビニの形を実現するための取り組みは進んでいます。今年の夏には、NIGOさん監修の新しい旗艦店がオープンする予定です。クリエイティブやカルチャーの要素を取り入れた、これまでにないエンターテインメント性の高いコンビニを生み出していきます。
