データドリブンな経営改革で小売業界のDXを牽引するホームセンター「グッデイ」。日々の業務効率化からエージェンティックコマースまで「小売のAI活用」の最前線に迫る本特集にあたり、同社代表取締役社長の柳瀬隆志氏にインタビューを行った。本記事では、開発未経験の現場スタッフがAIアプリを自作するまでになった先進的な組織づくりの裏側から、自律型AIが購買を支援する未来の顧客体験(CX)における「実店舗の価値」まで、小売業が明日から実践すべきAI活用の本質に迫る。
データ分析の蓄積が生きる、AI活用の現在地
──これまで御社ではデータ活用を推進されてきました。昨今の生成AIの台頭は、その延長線上にあるとお考えでしょうか?
はい、延長線上にあると考えています。当社では2015年頃からデータ活用を進めており、私自身も統計学や機械学習を学んできました。その学びが発展し、現在の生成AIに行き着いたという感覚です。
以前は「こんなデータ分析がしたい」と思っても、自分でコーディング(プログラミングコードを書くこと)をするのは困難でした。しかし今は、AIに指示すれば短時間でコードを生成してくれます。データ活用のために基礎的な知識を身につけていたことが、現在のAI活用において非常に役立っています。
──具体的に、社内のデータとAIをどのように結びつけているのでしょうか?
AIを活用するには、社内のデータがきちんと整理されていることが大前提です。当社では約10年にわたるデータ分析の積み重ねがあり、「どのテーブル(データのまとまり)に、どんなデータがあるか」が整理されていました。
従来は、データの仕様として税込み・税抜きの違いや、集計のルールなどをExcelでまとめ、人間がそれを見ながら分析を行っていました。現在はデータの仕様を記したドキュメントをAIに読み込ませて「スキル」化(AIが特定のタスクを実行するための事前設定)をしています。これにより、AIが社内データを正確に参照できるようになり、「このデータを分析して」と指示するだけで、適切な回答が返ってくる環境が整いつつあります。
現場の課題を解決する「AIアプリ開発」と社内研修
──データ分析以外に、社内で進めているAI活用の事例はありますか?
AIを使って、現場に近い社員自らが業務アプリケーションを開発する取り組みを進めています。
AIがコード生成を支援してくれるため開発のハードルは大きく下がりました。ただし、生成されたコードの管理や修正、セキュリティを保ったまま社内に公開(デプロイ)するための環境構築などは、人間が行う必要があります。そこで、IT子会社であるカホエンタープライズと協力し、GitHub(ソースコード管理ツール)やGoogle Cloud(クラウドサービス)、Docker(コンテナ型仮想化技術)などの「AI周辺知識」を教える社内研修カリキュラムを作成しました。
──プログラミング未経験の社員が、実際にアプリを作れるようになるのでしょうか?
はい、各部門から集まった未経験の社員が研修を受け、素晴らしい成果を出しています。
たとえば、店舗で受注販売している「物置」の見積もりアプリです。従来は分厚いカタログを見ながら、下地の材質や工事の有無などを確認し、ExcelやWordで見積書を作っていました。これをデータベース化し、条件を選ぶだけで自動的にPDFの見積書が発行されるアプリを現場の社員が開発しました。ベテランに依存していた業務をアルバイトでもこなせるようになり、人件費の削減や業務効率化に直結しています。
──他にも社員の方のアイデアから生まれたものはありますか?
社内の事例発表会では、店舗開発の担当者が自ら開発した「商圏分析アプリ」を発表してくれました。競合店や国勢調査のデータを読み込み、地図上で任意の形にエリアを区切って精度の高い分析ができるものです。彼はプログラミングの研修を受けていなかったのですが、業務に強い課題意識を持っていたため、自らAIを活用してアプリを作り上げました。AIによって、こうした社員のポテンシャルが発揮されていると感じています。
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安原 直登(編集部)(ヤスハラ ナオト)
大学卒業後、編集プロダクションに入社。サブカルチャー、趣味系を中心に、デザイン、トレーニング、ビジネスなどの広いジャンルで、実用書の企画と編集を経験。2019年、翔泳社に入社し、MarkeZine編集部に所属。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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