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LLM進化論:業務の効率化から新しい価値の創造へ

開発とマーケの「伝言ゲーム」を終わらせるには。“作れるマーケター”になるための3つの力と確認項目

簗島 亮次[著]

 生成AIの進化は、マーケターとエンジニアの関係をどう変えるのか。データ活用の最前線を走るインティメート・マージャー代表取締役社長の簗島亮次氏が、自社の現場での変化と実践を踏まえ解説。業務効率化から一歩踏み込み、マーケター自らがデータ分析やプロトタイプ開発を実行する「LLM2.0時代」にマーケターが身につけるべき3つの力やAIにデータを触らせる前の確認項目も紹介します。

 本連載では、業務効率化を目的とした“守り”の使い方をLLM1.0、価値創出を目的とした“攻め”の使い方をLLM2.0と位置づけてきました。今回お伝えしたいのは、その“攻め”を成立させる条件が変わり、「マーケター自身の手で価値創出を始められるようになった」ということです。

 次に起きる変化は、文章作成の効率化にとどまりません。AIエージェントやコーディングエージェントの普及により、生成AIは「質問に答える存在」から「環境を操作し、成果物を作る存在」へ変わりつつあります。マーケター自身がデータ分析やプロトタイプ開発を動かし、施策の実装手前まで担える環境が整ってきました。

10回の相談のうち、9回は提案に届かない

 ChatGPTが登場して以降、マーケターは記事の構成、広告コピー、調査の要約、要件定義書の下書きなどを短時間で作れるようになりました。HTMLや簡単なJavaScript、GAS(Google Apps Script)を生成し、コピー&ペーストして使った経験がある人も多いでしょう。GASは、スプレッドシートなどGoogleのツール上で動く簡易的なプログラムです。

 業務効率化が進んだとはいえ、この段階でも生成AIは主にチャット画面の中にいました。コードを生成できても、実際のデータベースに接続し、権限を守りながら処理を実行し、エラーを直して成果物を完成させるところまでは、人間が橋渡しする必要がありました。そのため、企画はマーケター、実装はエンジニアという境界線は、ほとんど変わっていなかったのです。

 この境界線は、広告提案の現場に今も非効率なやり取りとして残っています。私たちインティメート・マージャーは企業のデータ活用を支援していますが、営業が顧客から「この条件に合うユーザーは何人か」と聞かれ、社内のデータ担当者に抽出を依頼し、数日待つ。結果が「数件しかいません」であれば条件を変えて再依頼する――。そんな光景が日常的に起きています。

 私の体感では、10回の相談のうち実際の提案につながるのは1回程度です。商談が止まるだけでなく、顧客とデータベースの間に人を介した「伝言ゲーム」があることが最大の問題でした。

LLM2.0の本質は「生成」ではなく「実行」にある

 私は、この伝言ゲームを終わらせるのがLLM2.0だと考えます。LLM2.0を特徴づけるのは、AIの回答の流暢さだけではありません。AIが目的を理解し、必要なファイルやデータを参照し、コードを書き、ツールを操作し、実行結果を見て修正します。つまり、複数の工程をまたいで仕事を前に進められる点にあります。“攻め”の使い方が、ここで初めてマーケター自身の手元で成立します。

 外部ツールとAIをつなぐ共通規約「MCP(Model Context Protocol)」などを通じてBigQuery、CRM、社内文書、各種業務ツールへアクセスできれば、マーケターは自然言語を入口に、実際の業務環境を動かせるようになるのです。

 たとえば「旅行に関心を持つユーザーを行動の違いで3群に分け、各群の規模と特徴を整理してほしい」と指示します。AIエージェントは、データ構造を確認し、必要なSQLを組み立て、集計し、結果を表や文章にまとめます。適切な権限と承認フローが用意されていれば、その分析結果を広告配信用のセグメント設計へつなげることも可能です。

 ただし、マーケターがSQLの文法を一切知らなくてよいという話ではありません。必要になる知識の重心が変わるということです。構文を暗記する力よりも、対象者の定義は妥当か、母数は何か、期間は適切か、個人が特定される出力になっていないかを判断する力が重要になります。AIによって「書き方」のハードルは下がります。一方で、「何を、どの条件で、何のために調べるか」という設計責任は、むしろマーケター側へ近づいてきます。

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仕様書より先に「動くもの」を作る

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この記事の著者

簗島 亮次(ヤナシマ リョウジ)

株式会社インティメート・マージャー代表取締役社長。
慶應義塾大学 大学院 政策・メディア研究科を2010年首席で卒業。2013年、Googleのレイ・カーツワイル氏が2020年に起きると予測した「あらゆるデータがひとつに統合される」という革命を冠した株式会社インティメート・マージャーを創業し、2019年10月東証マザーズへ上場。...

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