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MarkeZine Day 2026 Autumn

「内製 VS 外注」の二項対立に閉じない オルビスと三井住友FGが挑んだマーケティングの内製化

渡辺 佳奈(編集部)[著] / 川口 紘[写]

 激変する消費者トレンドや社会情勢、そして日々高騰する広告コスト。外部のパートナーに施策を丸投げしていては、市場の変化に対応するスピードも、顧客を深く理解するためのデータも、手に入らない時代が来ています。「MarkeZine Day 2026 Autumn」に、オルビスと三井住友フィナンシャルグループでマーケティングの内製化を率いた2名のリーダーが登壇。内製化プロジェクトの立ち上げ期を振り返りながら、直面した壁とその乗り越え方を語りました。本稿ではその内容をレポートします。

なぜ内製化に踏み切ったのか:両社が直面した課題

 スキンケアを中心とするビューティーブランドを展開するオルビス。同社のDtoC本部で本部長を務める山口氏は、2020年から約5年間、Web広告の運用を中心とする新規顧客獲得領域の責任者を務めた。内製化を進めたのもこの領域である。

オルビス株式会社 DtoC本部 本部長 山口 直氏
オルビス株式会社 DtoC本部 本部長 山口 直氏

 山口氏が新規顧客獲得領域の責任者に着任してから、約4ヵ月でコロナ禍が到来した。1987年より通信販売を開始し、ECサイトの立ち上げも1999年と早かった同社にとって、ビジネスの主戦場がWebに移行することは追い風だった。

「当時はデジタル展開を本格化させていた化粧品会社が限られていました。購買のデジタルシフトにともなってWeb広告の在庫は増える一方、競合が少ないため広告のCPMが低下し、効率良く新規顧客を獲得できたのです。しかし、2022年に競合のWeb参入が相次ぐと優位性が失われ、CPAが高騰し始めました」(山口氏)

 CPAの高騰を受け、代理店手数料(マージン)のカットを含めた構造改革が必要と判断した山口氏は、2023年の春から広告運用のインハウス化に踏み切った。

 三井住友フィナンシャルグループ(以下、三井住友FG)の河津氏は、自動車メーカーでのマーケティング職務を経て2023年に三井住友銀行へ入行した。同行は総合金融サービス「Olive」や「Trunk」をはじめとする金融領域の変革と非金融の新規事業を推進しており、河津氏の所属するデジタル戦略部は、オウンドメディア「DX-link(ディークロスリンク)」などで、その発信を担う。

株式会社三井住友フィナンシャルグループ デジタル戦略部 ダイレクター 河津 真氏
株式会社三井住友フィナンシャルグループ デジタル戦略部 ダイレクター 河津 真氏

 オウンドメディアは、河津氏が入行する前に立ち上がった。立ち上げ当初はサイトの構築やコンテンツの制作を広告代理店へ全面委託していたという。ところが、メディアの成長にともない運営のPDCAを高速で回す必要が生じ、内製化に着手した流れだ。

「銀行員は金融のプロですが、マーケティング実務のプロではありません。しかし『誰に、何を、何のために伝えるのか』という要件定義や、マーケティングの基本的な知識の習得ができていなければ、パートナーと対等に対話できず施策も成果に結びつきません。そこで、私のような実務経験者を社内に加え、推進体制を強化する必要がありました」(河津氏)

2社が選んだ最適な役割分担と組織体制

 内製化を一気に進めようとすると、現場への負荷や事業リスクをともなうため、両社は段階的な体制構築を進めた。オルビスの山口氏は2年がかりの内製化計画を策定し、変数が少なく事業への影響が生じにくいリスティング広告の運用から内製化に着手した。

「リスティング広告においては、一般キーワードよりも社名の構成比のほうが大きかったため、競合の影響を受けにくく運用内製化のリスクが極めて小さいと判断しました。並行して、変数の多いSNSやディスプレイなどプッシュ型広告の運用は、代理店コンペを実施してマージンを見直し、段階的な効率化を図りました」(山口氏)

 現在は、管理画面操作や入稿などの運用業務と、クリエイティブの制作ディレクション業務を、社内のメンバー5、6名で担当しているそうだ。一方、クリエイティブの制作業務では外部委託を選んだ。

 三井住友FGでは、外部パートナーと強みを補完し合う“共創型”の体制を構築した。

「目指したのは、当社が指揮者のように外部の専門性を束ねる体制です。目的の設定や予算管理、リスク判断は自社で責任を持ち、サイトの運営や広告運用、AEO対策はA社、コンテンツ制作やPRはB社に委ねています」(河津氏)

 特徴的なのは、競合関係にあるA社とB社が一堂に会する3社合同ミーティングを定期開催し、垣根を越えて率直な意見を出し合える関係性を築いた点だ。山口氏は「なかなかない光景」と驚きのリアクションを見せる。

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なぜ“完全内製化”を選ばなかったのか

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この記事の著者

渡辺 佳奈(編集部)(ワタナベ カナ)

1991年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部を2013年に卒業後、翔泳社に新卒として入社。約5年間、Webメディアの広告営業に従事したのち退職。故郷である神戸に戻り、コーヒーショップで働く傍らライターとして活動。2021年に翔泳社へ再入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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