AIの普及によりコンテンツの大量生産が可能となる中、BtoB企業が顧客から選ばれ続けるためには、どのようなブランディング戦略が求められるのか。2026年9月に開催された「MarkeZine Day 2026 Autumn」では、長年の実績を持つ弥生と、急成長を遂げるGensparkの事例を通じ、AI時代に変わるBtoBマーケティングと変わらない顧客体験の本質、そして明日からBtoBマーケターが取り組むべきアクションを探った。
AI時代、BtoBマーケティングに起こる変化
セッションにおける最初のテーマは「AIで変わるBtoBマーケティング」だ。
生成AIの台頭は、BtoBマーケティングにおけるクリエイティブ制作のあり方を根底から変えた。従来、テレビCMなどの広告施策を打ち出す際は、代理店や制作会社と何度も企画の打ち合わせを重ね、ラフ版の完成まで数週間待つプロセスが一般的だった。しかし、生成AIを活用することで、初期段階から多様なクリエイティブのサンプルを大量に生成し、比較・選定するスピード感が実現可能となっている。
弥生でCOOを務める西村氏は、自社CMの制作事例を引き合いにプロセスの変化を解説した。従来であれば企画提案から完成まで約2ヵ月を要していた制作期間が、制作会社の生成AI活用と自社からの具体的な画像・動画イメージの提示により、3週間強にまで大幅に短縮されたという。
「最も大きいのは、プロセスが変わったこと」と西村氏が語るように、企画や構想に時間をかける時代から、実物を生成してから選定・洗練させる時代への移行は、マーケティング施策の意思決定のスピードを大きく向上させる。コンテンツの生産コストが低下する中、BtoBマーケターは作る力そのものよりも、生成された多様な候補から自社の意図に沿った高品質なアウトプットを「選ぶ力」と「スピード」を磨くことが不可欠となっているのだ。
「AI想起」を見据えたブランド戦略の見直し
クリエイティブ制作のスピードアップにとどまらず、AIによるBtoBマーケティングの変化について、ユーザーの購買行動における意思決定プロセスにも議論が及んだ。
Forresterによる2026年の調査データによると、BtoB購買者の大半を占める94%が購買プロセスにおいて生成AIを活用していると回答している。つまり、これまでの「検索エンジンで検索し、広告やWebサイトを通じて認知・選定する」という従来の動線に加え、AIを用いた情報収集と意思決定が主流になりつつあるのだ。
この潮流に対し、西村氏は「人からの認知だけではなく、AIからの認知も伸ばしていく必要がある」と述べた。
たとえば、長年の歴史をもつ「弥生会計」ブランドは認知率こそ高いものの、AIエンジンに対する想起率では、オンライン親和性の高い競合他社に遅れをとっていたという。
そこで同社は、口コミサイトの強化やWeb上のテキスト情報の構造化といったAI想起対策に注力した。その結果、ChatGPTを経由した自社製品への登録数が約2倍に伸びるという成果を得ているという。
AIが製品の比較や情報の要約を行う時代においては、ユーザーからの想起(認知)だけでなく、「AIエンジンに自社製品がどう評価・レコメンドされるか」という観点も無視できない。今後のマーケティングでは、AIと人間の双方から選ばれるブランド戦略を構築する必要がある。
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高橋 愛里(編集部)(タカハシ アイリ)
新卒で総合情報サービス企業に入社し、求人広告の制作に携わる。2023年翔泳社入社。SalesZine編集部に所属。
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