「人」であるBtoBマーケターの役割
最後のテーマである「AIと人の未来、BtoBマーケターが取るべきアクション」では、大量生産と高度な分析をAIが担う時代において、人間のマーケターに求められる本質的な役割に迫った。
両氏が挙げたのが、AIの分析力と、人間が担う感情・共感・責任の共創だ。AIは過去のデータやネット上の情報を要約・集約し、仮説を立てたりダッシュボード化したりすることを得意とする。しかし、その前提となる顧客の生の声や、自社ならではの実証データといった一次情報をゼロから生み出すことはできない。また、AIが提示する複数の選択肢の中から「どの方向性でブランドを推進するか」という意思決定を行い、その結果に責任を負うのも人間にしかできない領域だ。
延氏が紹介した、GensparkのCTOが掲げる「人間は組織の歯車ではなく、AIという動力を扱う存在になる」という考え方のとおり、AIによって単純作業やデータ集計の負担が減る分、マーケターは顧客理解や対話、戦略の実行といった本来の人間的な業務にリソースを集中させるようになる。すなわち、コンテンツを作る人から、「何を顧客の記憶に残すかを設計する人」としての役割がより強く求められるのである。
明日から始める3つのアクション
最後に、AI時代のBtoBマーケターが明日から取り組むべきアクションが提示された。
まず着手すべきは、自社の「AI想起率」を定点観測することである。ChatGPTやGemini、Claudeといった主要な生成AIツールに対し、自社が属するカテゴリのおすすめ企業を質問し、自社名がトップ3や1位に挙がるかを調査する。AIエンジンごとに参照元情報が異なるため、この調査により、自社がYouTubeやWebメディアといったどのチャネルを強化すべきかの打ち手が明確になる。
次に求められるのが、ブランド投資と獲得投資の配分の見直しである。短期的なCPA(顧客獲得単価)を追う獲得型広告への偏重は、AIによる情報の要約・比較が主流化する中で構造的に不利になりやすい。そのため、長期的な信頼を築くブランド投資や、一次情報の発信活動へ予算とリソースを再配分することが重要となる。
そして最後に、自社固有の差別化ポイントを改めて振り返ることが欠かせない。競合AIに一瞬で模倣されない「自社ならではの強み」がどこにあるのかを再定義し、長年のサポート実績やパートナーネットワーク、独自データなどの資産を再度掘り起こし、顧客接点全体で一貫したメッセージとして発信していく姿勢が成功の鍵を握る。
老舗企業の弥生と、新興企業のGensparkという対照的な立場でありながら、両社が共通して「トライ・アンド・エラーを恐れず高速でPDCAを回すこと」と「人との対話を重んじること」を強調し、セッションが締めくくられた。

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高橋 愛里(編集部)(タカハシ アイリ)
新卒で総合情報サービス企業に入社し、求人広告の制作に携わる。2023年翔泳社入社。SalesZine編集部に所属。
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