スポーツイヤーと呼べるほどに大型の競技大会が目白押しとなった2026年。スポーツイベントの価値は、競技場の外にも広がっている。愛知・名古屋2026アジア競技大会の公式セレブレーション・ファンゾーン「ONE ASIA WORLD」は、パリ五輪のチャンピオンズ・パークのコンセプトを広げ、メダリストへの祝福に加え、アジアの食や文化、多様な体験を楽しめる場を作った。16日間の来場者は同ゾーンの全体で36.3万人と、当初想定の約20万人を大きく上回る。参加のきっかけを広げる場づくりは、どのような価値を生み出したのか。本稿では、自身もスポンサーとしての実績をもつiU大学教授の江端浩人氏が筆を執り、主催者と研究者の話から、企業のマーケティングにつながる可能性について論述する。
競技後にも熱気。エッフェル塔から目にした「祝福の場」
2024年8月7日、私はエッフェル塔から、対岸のトロカデロに広がる大勢の観客とステージを眺めていました。パリ五輪のメダリストとファンが祝福を分かち合う「チャンピオンズ・パーク(Champions Park)」です。フランス語では「Parc des Champions」と呼ばれます。
当日は入場や移動動線に関する制約もあり、残念ながら会場内には入れませんでした。それでも、会場の外から、その熱気と盛り上がりを十分に体感できました。競技が終わった後にも、選手と観客が喜びを共有する場を用意する。その仕組みに、大きな価値を感じたのです。
チャンピオンズ・パークは7月29日から8月10日までの期間に、休場日を挟んで開催されました。IOCを発信元とする公表資料によると、28万人が訪れ、世界各国の600人のメダリストに声援を送ったといいます(出典:International Olympic Committee「Paris 2024: Record-Breaking Olympic Games on and off the Field」ACCESSWIRE、2024年8月20日配信。データは同年8月11日時点)。競技結果を知るだけでなく、選手を直接祝福できることが、大会への参加の仕方を広げていました。
祝福に食と文化を加えた「ONE ASIA WORLD」
このパリの事例を出発点に、体験の幅を広げたのが、愛知・名古屋2026アジア競技大会の「ONE ASIA WORLD(OAW)」です。メダリストを迎える「CHAMPIONS ROAD & STAGE(チャンピオンズロード&ステージ、CRS)」を含む会場全体で、アジアの食や文化、様々な体験を楽しめるようにしました。選手を祝福したい人に加え、食や文化に関心を持つ人も、大会に関われる場となったのです。
ONE ASIA WORLDの会場全体図(提供:筆者)。メダリストを迎えるステージに加え、食や文化、体験、パブリックビューイングなどのエリアが広がる
OAW全体の来場者は16日間で36.3万人となり、当初想定の約20万人を上回りました(出典:OAW公式サイト)。CRSのセレブレーションには、日本から413人、海外から29人、合計442人のメダリストを迎え、海外の選手は6つの国・地域から参加しています。
今回注目したいのは、パリの事例における「祝賀会場」からもさらに進化させたこと。アジアの魅力に触れる場へと広げたことです。OAW全体の来場者数と、パリのチャンピオンズ・パークの来場者数は集計対象が異なり、単純な規模比較はできません。一方、OAWの設計では食や文化を楽しむことも大会への参加につながるものとなっており、その接点の広がりこそが、OAWの体験づくりがもつ強みを考える手掛かりになります。
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江端 浩人(エバタ ヒロト)
iU大学教授、江端浩人事務所 代表、MAIDX LLC代表、AlMONDO事業顧問
米ニューヨーク・マンハッタン生まれ。米スタンフォード大学経営大学院修了、経営学修士(MBA)取得。伊藤忠商事の宇宙・情報部門、ITベンチャーの創業を経て、日本コカ・コーラでマーケティングバイスプレジデント、日本マイクロソフト業務...
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