SNSやAIなどマーケティング手法が多様化し、メディアの選択肢が無数に広がる中、企業は「なぜそのメディアに投資するのか」を組織に対してどう論理的に説明すべきか。MarkeZine Day 2026 Autumnのセッションでは、カルビーの渡部さおり氏と、カカクコム(求人ボックス)の小島塁氏が登壇した。モデレーターを務めたMICHI 北原規稚子氏のもと、単発的な施策(How)にとどまらず、ブランド成長を中長期的に導くメディア戦略と、その社内合意の裏側にある意思決定の背景(Why)が紐解かれた。
「バズるHow」ではなく「投資のWhy」を問う
モデレーターの北原氏はセッションの冒頭、次のように語った。
「どんなメディアで何をやってバズったかという『単発のHow』に注目が集まりがちです。しかし、ブランドの成長を導くためのメディア戦略、その裏側にある『Why(なぜその投資なのか)』が重要です」(北原氏)
この議論の前提として、まずはマーケティングの根幹となる「Who(誰に)」と「What(何を)」の設計についてカルビー渡部氏とカカクコム小島氏に問いかけた。
この問いに対して、カルビーのWhoは「オールターゲット」だと渡部氏は語る。同氏は電通で約30年にわたりブランド構築に従事し、サンリオで営業トップを牽引してきた経歴を持つ。「一人でも多くの消費者に体験してもらい、確実に売上を作ること」を徹底的に追求してきた。
カルビーの提供価値(What)は、「自然の恵みや素材の力を活かした『美味しさと健やかさ』の両立で、人を幸せにすること」である。その価値を届ける対象(Who)=社内のターゲット設定について、着任当時の渡部氏は違和感を覚えたという。
たとえば、以前の同社ではある商品について「30代の子持ちの母親」をコアターゲットとし、「子どもと一緒に楽しんで食べる時間」を訴求ポイントとしていた。しかし、多忙な母親たちに、子どもと一緒にゆっくりお菓子を楽しむような余暇は少ない。このように、価値観や生活が多様化している現代において、企業側の理想を顧客に押し付けるような細かいセグメンテーションは機能しにくい。
ポテトチップスやかっぱえびせんといった商材が、世代を問わず楽しまれる普遍的な価値を持っているからこそ、同社はあえてターゲットを絞り込まない「戦略的オールターゲット」へと舵を切ったのだ。
「ターゲットをセグメントすることが普通のことのように言われていますが、これは機会損失だと思っています」(渡部氏)
求人ボックスが「広く当てる」合理性とメッセージ構造
一方、デジタル領域でビジネスを展開するカカクコムの小島氏も、カルビーとは異なるアプローチながら「広く当てることの合理性」を強く主張した。小島氏は楽天やGoogleなどでデジタルマーケティングのキャリアを積み上げてきた人物だ。データとテクノロジー、論理的思考を駆使した戦術に精通している。
今回のセッションで扱う求人ボックスは月間ユーザー数1,500万人以上、求人情報2,000万件以上(※2026年6月時点)を誇る巨大なマッチングプラットフォームだ。小島氏は、市場の浸透率が上がれば、結果として利用頻度やロイヤリティも上がるという「ダブルジョパディの法則」が人材業界にも当てはまると分析する。仕事を探すという普遍的なニーズに対しては、広くマス的にリーチしていくことがビジネススケールに直結するのだ。
その上で、求人ボックスが生活者に届ける「What」は、①カテゴリー②ブランド③機能・ベネフィット・RTBの3要素で構成されている。
転職やアルバイト探しを考えるとき、人は必ずしもポジティブな気持ちばかりではない。求人サイトという機能特化型のサービスは、ユーザーからの情緒的な愛着が自然発生しにくい特性を持つ。そのため、奇をてらうのではなく、「求人ボックスは仕事探しに使うサービスである」と正面から継続的にメッセージを伝え続け、上記の3要素を脳内で接着させることが最重要課題だ。
「求人ボックスの自己紹介をし続けることが、非常に大事だと思っています」(小島氏)
さらにサービスの特性上、常に利用されるわけではないからこそ、求職者のニーズが顕在化した瞬間に、求人ボックスが優先的に想起される設計が不可欠だ。
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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)
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