認知獲得に予算を投じても、本当に認知が伸びているのか分からない――そんな悩みを抱えるマーケターは少なくない。2026年9月に開催されたMarkeZine Day 2026 Autumnには、TUISS DECORの虻川稜太氏と、コラントッテの新貝賢二氏が登壇。両社が、売上につなげるために「本当に追うべきKPI」をどう設計・運用してきたのかを語った。
獲得施策の頭打ち、顧客層の拡大。2社が認知施策に注力する理由
両社は、商材も顧客層も異なる。TUISS DECORが展開するTuiss(チューイッシュ)は、2000年にイギリスで創業し、世界15ヵ国で展開するオーダーメイドブラインド・カーテン通販ブランドだ。自社EC比率は90%を超え、2,500以上の商品を保有するD2Cで、日本にはアジア1拠点目として2020年に進出した。一方のコラントッテは、磁気ネックレスを主力に、リカバリーウェアなども展開する。トップアスリートによる商品の着用を通じて認知と信頼を築き、売上を立ててきた。
両社は「デジタルを活用してどのように認知を拡大するか」という共通の課題に向き合ってきた。売上に直結しやすい獲得型施策ではなく、なぜあえて「認知」に投資する意思決定を行ったのか。各社の施策に入る前に、その背景が語られた。
Tuissの虻川氏が指摘したのは、「ボトムアッププランニングによる売上計画の限界」だ。施策単位で現実的に積める数字を足し上げ、確実に達成できる計画を立てていくなかで、「認知の土台がないと、どれだけ獲得施策を回しても目標に到達しない」という現実に直面したという。
虻川氏が示した例では、年度の売上目標10億円に対し、積み上げで見込めたのは約8.76億円。差分は約1.24億円で、目標の12.4%にあたる。実際の数字とは異なるが、成長目標に対する現実的な着地想定は大きくずれるという。
差分を埋める打ち手は、大きく3つある。獲得系の広告施策のROAS改善は即効性が高いが、改善余地には限界がある。非広告施策の改善は資産性の高い成果を積み上げられる一方、効果が出るまでに時間がかかる。また、認知拡大は購入検討者の母数を増やして前の2つの改善にも波及するが、効果測定が難しく、成果が出るまで時間もかかる。Tuissの場合、オーダーメイドのブラインドやカーテンは市場自体の認知度がまだ低い商材だ。逆に言えば、競合と比べても認知を伸ばせる余地が大きく、認知施策が最適だと判断したという。
一方、コラントッテの新貝氏は、2024年に認知の頭打ちに直面したと振り返る。同社はスポーツ選手の着用を通じて認知と信頼を築き、スポーツ層を中心に成長してきたが、さらなる事業拡大には、新たな層への認知拡大が必要だった。そこで磁気ネックレスを「肩こり対策用品」から「日常のコンディショニングケア」へと再定義し、スポーツ選手と同じく最前線で戦う、「日々知力・体力を駆使しているビジネスパーソン層」を新たなターゲットに据えた。スポーツ選手の「体力」や「ストイックさ」という文脈と親和性が高いこの層に向け、主にYouTube広告を使ったデジタル認知の獲得に踏み切ったという。
この記事は参考になりましたか?
- MarkeZine Day 2026 Autumn連載記事一覧
- この記事の著者
-
岡田 果子(オカダ カコ)
IT系編集者、ライター。趣味・実用書の編集を経てWebメディアへ。その後キャリアインタビューなどのライティング業務を開始。執筆可能ジャンルは、開発手法・組織、プロダクト作り、教育ICT、その他ビジネス。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア
