SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

Retail & Commerce Standard 2026 powered by MarkeZine & CommerceZine

MarkeZine Day 2026 Autumn

実店舗の価値はどう変わる?パルコ・ヤッホー・アイスタイルが語る次世代OMOと体験価値の創出

安原 直登(編集部)[著] / 関口 達朗[写]

 顧客が実店舗に足を運ぶ理由が「そこでしか得られない体験」へとシフトする今、旧来のOMO戦略からの脱却が求められている。MarkeZine Day 2026 Autumnでは、300Bridge代表取締役の藤原義昭氏をモデレーターに、パルコ、ヤッホーブルーイング、アイスタイルという立場が異なる3社が顧客体験について議論を交わした。本稿ではその様子をレポートする。体験価値の創出を目指す各社がいかにしてフィジカル体験を洗練させ、LTV向上につなげているのか。次世代の顧客体験デザインのヒントを探る。

アプリを通じたコンバージョン至上主義からの脱却

 商業施設を運営するパルコは、テナント企業に売り場を賃貸し、賃料収入を得る不動産業を主軸としたビジネスモデルを持つ企業だ。同社において来店する顧客は、自社のお客様であると同時にテナントのお客様でもある。そのため、テナントとパルコが対等なパートナーシップを結び、顧客に楽しんでもらうことでともにファン作りを進めるアプローチをとってきた。

 その顧客接点の1つとして機能してきたのが、スマートフォン向けアプリ「POCKET PARCO」だ。これまでの同社は、アプリ内で来店前の情報収集を促し、店舗へのチェックインや館内での歩数に応じたコイン付与によって回遊性を高め、最終的な購買(コンバージョン)へとつなげるモデルを推進していた。

画像を説明するテキストなくても可
クリックすると拡大します

 こうしたアプリの取り組みについて、モデレーターの藤原氏は「情報発信ツールとして捉え、会員を集める目的が先行してしまうケース」の存在を指摘する。これを受け、パルコの店舗事業本部顧客政策部の安藤彩子氏は次のように振り返った。

 「パルコはテナントショップ情報をお客様に届けるためにプラットフォーマーとしての役割も担ってきました。アプリはお客様との接点である一方、ショップ情報を掲載できるツールとしてテナントへ提供するという意味合いもありました」(安藤氏)

画像を説明するテキストなくても可
株式会社パルコ 店舗事業本部顧客政策部 部長 安藤 彩子氏

 アプリの利用頻度が高い層は購買頻度も高い傾向にある。しかし、それがアプリの効果なのか、もともとロイヤルティの高い顧客がアプリを使っているのかという「鶏と卵」の関係性を紐解ききれていなかったという。アプリを単なる情報発信ツールとして捉え、最終的なコンバージョンをゴールとして設定する旧来の手法は、テナントショップの情報掲載の役割は果たしつつも、顧客本位の体験設計という観点からは限界を迎えつつあったと言える。

「出会う・試す・買う」が最低条件となる時代の課題

 一方、美容系総合ポータルサイト「@cosme」を運営するアイスタイルは、実店舗「@cosme STORE」や旗艦店「@cosme TOKYO」を展開している。同社が2007年に最初の実店舗をオープンした際、世の中のほとんどの店舗はまだ純粋に「買う場所」としての色合いが濃かった。そこで同社の店舗では、化粧品という商材が持つ楽しさやワクワク感を引き出すために、テスターを充実させ、顧客が新しい商品と「出会える場所」「試せる場所」として設計。こうした特色が、現在の成長につながっている。

画像を説明するテキストなくても可
クリックすると拡大します

 この「出会う・試す・買う」という一連の体験を提供する店舗設計は、長らく同社の強みとして機能してきた。しかし、2020年以降、SNSや動画プラットフォームが爆発的に普及したことで、顧客の購買行動の前提が大きく変化した。顧客は来店する前に、既にインフルエンサーの発信やSNS上のレビューを通じて、無数の商品情報と出会い、ある程度の意思決定を済ませているケースが増加している。

 同社Connect Experience本部長の大西清貴氏は、この環境変化に対する危機感を次のように語る。

 「お店に新しい出会いがあると言いながら、『既に出会い切っているよね』という状況が出てきました。『出会う・試す・買う』の3つが揃っているのは最低条件ですが、AIなど様々な情報接点がある中で、このままでは差別化ができないですし、お店としてのこれからの良い体験は作れないなと思っています」(大西氏)

画像を説明するテキストなくても可
株式会社アイスタイル 国内PFカンパニー @cosme 体験デザインユニット Connect Experience本部長 大西 清貴氏

 商品に出会い、試し、購入できるという機能だけでは競合他社や多様化するデジタルチャネルに対する優位性を保てない。デジタル技術が進化し、顧客の事前情報量が飛躍的に増加した現在、有店舗事業者は物理的な空間に足を運んでもらうための新たな付加価値を創出しなければならないというわけだ。

 コンバージョンを追い求めるアプリ運用や、出会いとお試しを提供するだけの店舗設計といった従来の手法が限界を迎える中、企業は顧客体験をどのように再定義すべきなのだろうか。セッションではここから、ヤッホーブルーイングが実践する熱量の高いファンイベントの裏側や、パルコ・アイスタイルが思い描く次世代のOMO戦略の具体像、顧客の「好き」を拡張する新たなフィジカル体験のあり方に迫っていく。

次のページ
顧客の熱量を生むファンイベントがもたらす波及効果

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • note
MarkeZine Day 2026 Autumn連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

安原 直登(編集部)(ヤスハラ ナオト)

大学卒業後、編集プロダクションに入社。サブカルチャー、趣味系を中心に、デザイン、トレーニング、ビジネスなどの広いジャンルで、実用書の企画と編集を経験。2019年、翔泳社に入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

Special Contents

PR

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング