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MarkeZine Day 2026 Autumn

実店舗の価値はどう変わる?パルコ・ヤッホー・アイスタイルが語る次世代OMOと体験価値の創出

安原 直登(編集部)[著] / 関口 達朗[写]

LTV向上に直結する「ぞっこん度」と体験の可視化

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 コンバージョンという最終指標から逆算するのではなく、体験の質そのものを高める戦略をとる以上、その体験が本当にビジネスの成長に寄与しているかを測るための「中間指標」の設定が不可欠となる。

 ヤッホーブルーイングでは、CRM全体の健全性を測る独自の指標として「ぞっこん度」を導入している。アンケートを通じて顧客のブランドに対する好意を5段階で定量化するこの指標は、同社のビジネスにおいて極めて重要な意味を持つ。原氏によれば、ヤッホーブルーイングが提供する体験を多く重ねた顧客ほど、この「ぞっこん度」が高く、結果的にLTVも高いという明確な相関関係が確認されているという。たとえばEC利用者に限定すると、最もロイヤルティの高い層は年間数万円規模の購買に至っている。

 同社は現在、イベントに参加した顧客に対して圧倒的な満足を提供するため、7段階の満足度評価のうち、最高ランクの「非常に満足」を90%以上にするという極めて高い内部目標を設定している。顧客の期待値を常に超え続けるために何が必要かを全社横断で議論し、体験価値の向上に努めているのだ。

 さらに、体験の蓄積を顧客自身が実感できる仕組み作りにも着手している。今年はスモールスタートとして、様々な体験を経るごとにスタンプがたまるスタンプラリーを開始した。将来的にはこれをデジタル化し、より精緻なデータ取得と体験の提供を目指すという。体験を可視化することは、顧客のモチベーションを高めるだけでなく、企業側が顧客のステージに応じた適切なコミュニケーションを設計するための基盤となる。

件数から「人」へ。深い顧客理解がもたらす体験共創

 パルコとアイスタイルもまた、体験価値を測るための新たな中間指標の策定に動き出している。

 パルコの安藤氏は、今後最も注視すべき指標としてイベントやキャンペーンへの「参加率」を挙げる。招待状が届いた顧客のうち、実際にどれだけの割合が足を運んでくれたのかという行動の積み重ねが、ブランドへのエンゲージメントを推し量るバロメーターとなる。さらに、これまでは十分に捕捉しきれていなかった館内での「行動データ」の取得にもトライし、顧客がどのような軌跡を辿って体験を楽しんでいるのかを解像度高く把握することを目指している。

 アイススタイルの大西氏は、追求すべき指標の質的転換を訴える。従来は、ページビュー(PV)数やアプリのダウンロード数、「いいね」の数といった表面的な「件数」の多寡に一喜一憂しがちであった。しかし今後は、「人」そのものにフォーカスし、数だけでなく質を評価していく方針だという。

 具体的には、ユーザー層を詳細にセグメント化し、マーケティングオートメーション(MA)ツールなどを駆使して、どの層に対してどのようなコミュニケーションをとれば「参加」や「応募」といった能動的なアクションを引き出せるかを検証し始めている。

 セッションの最後、藤原氏は「データが取れるようになることで、『お客様に何を返せば一緒に体験を作ってくれるか』を3社とも強く意識されていると感じました」と議論を締めくくった。

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株式会社300Bridge 代表取締役 藤原 義昭氏

 これからの有店舗事業者やマーケターに求められるのは、デジタルの力を用いて効率的に「売る」ことではなく、解像度の高いデータ活用を通じて顧客を深く理解し、顧客とともに価値ある体験を「共創」していくことだ。コンバージョンや売上といった結果指標に縛られることなく、顧客の「好き」を育み、圧倒的な満足感や深い納得感の提供を測るための独自の中間指標を設定すること。それこそが、情報過多の時代において実店舗の存在価値を再定義し、選ばれ続けるための次世代OMO戦略の要諦となるはずだ。

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この記事の著者

安原 直登(編集部)(ヤスハラ ナオト)

大学卒業後、編集プロダクションに入社。サブカルチャー、趣味系を中心に、デザイン、トレーニング、ビジネスなどの広いジャンルで、実用書の企画と編集を経験。2019年、翔泳社に入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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