理由を作り・届ける。スポンサー&来場者増に求められる設計と時間との戦い
江端:マーケティングの観点では、どのような可能性を感じましたか。
熊崎:今回はホスピタリティラウンジを除き、基本的に入場無料でした。今後は有料の体験を増やす可能性もありますし、より早くから準備すれば、パートナーの協賛も広げられたと思います。看板や印刷物のロゴに加え、選手とパートナーを一体で見てもらえる場として、広告面でも大きな可能性を感じています。
江端:もう一度実施するとしたら、何に取り組みたいですか。
熊崎:まず、企画の骨格を早く固めることです。会場の所有者や運営事業者、テナント、近隣住民、組織委員会、OCA、各国の選手団など、調整させていただく関係者が非常に多く、その分どうしても時間がかかります。メダリストセレブレーションには既に大きな手応えがありますが、早期に準備を進めれば、さらに内容を充実させられたと思います。
熊崎氏の話から私が感じたのは、多様な体験を用意することと、その魅力を事前に届けることの両方が重要だということです。メダリストとの交流、アジアの食や文化など、来場する理由が増えれば、大会に関わる人の入り口も広がります。海外チームへの案内、ファンへの告知、スポンサーが参加する方法を早い段階から設計することで、その体験をより多くの人に届けられるはずです。
ファンゾーンの役割を変えた。来場者調査から考える体験の広がり
会場の熱気を、次の施策に生かせる知見として捉える動きも進んでいます。CRSの来場者調査を担当した中京大学スポーツ科学部准教授の塚本拓也氏にも話を伺いました。塚本氏は期間中OAWにて来場者アンケート調査を実施しており、今後論文やメディア、イベントなどで成果を発表できるよう準備を進めています。その過程において既に「手応えがある」と話す同氏は、従来のファンゾーンの役割を広げた点をOAWの特徴に挙げ、次のように評価しています。
「OAWの大きな特徴は、単なる『競技を見る場所』ではなく、『大会を体験する場所』へと役割を広げた点です。メダリストを市民が直接祝福するセレブレーションに加え、アジアの文化や食、音楽、企業による体験、選手や地域住民との交流など、多様な体験や交流が生まれました。今後のメガスポーツイベントにおける都市型ファンゾーンの、1つのモデルを示したのではないでしょうか」(塚本氏)
集計結果の発表が待たれるOAWの来場者調査は、選手との交流や祝福の体験価値をより正しく捉える手掛かりになります。一方、食や文化も含めたOAW全体の評価を考えるには、それぞれの体験の利用状況や来場動機も捉える必要があるでしょう。現段階で、満足度や来場後の行動変化は断定できませんが、何が印象に残り、大会や選手への関心につながったかを知ることは、次回の企画や企業の参加方法を考える上で役立ちます。
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江端 浩人(エバタ ヒロト)
iU大学教授、江端浩人事務所 代表、MAIDX LLC代表、AlMONDO事業顧問
米ニューヨーク・マンハッタン生まれ。米スタンフォード大学経営大学院修了、経営学修士(MBA)取得。伊藤忠商事の宇宙・情報部門、ITベンチャーの創業を経て、日本コカ・コーラでマーケティングバイスプレジデント、日本マイクロソフト業務...
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