2026年11月に誕生30周年を迎えるバンダイの「たまごっち」。国内外の累計出荷数は1億個(2025年7月末)にのぼり、その半数以上を海外が占める。国境や世代を超えて愛され続ける裏にはどんな戦略があるのか。9代目チーフたまごっちオフィサー(CTO)の辻太郎氏に、組織の軸作りや海外展開のローカライズ戦略を聞いた。
チーフオフィサー制を敷く「たまごっち」のパーパス
──貴社において「たまごっち」とはどのような位置付けですか? また、辻さんがCTOに就任されてから取り組まれたことについて教えてください。
辻:バンダイナムコグループでは、ガンダム、パックマン、たまごっちの自社が保有する3つのIPに対してチーフオフィサー制を敷いています。このように、たまごっちはグループ全体で重要視されているIPです。
CTO(チーフたまごっちオフィサー)は、たまごっちについて会社や事業部を横断して統括する役割です。私はCTOの9代目を務めています。私が取り組んだことの1つに、たまごっちのパーパス「世話のやけるよろこびを世界中の人々に。」の策定があります。何かを愛でたい・世話を焼きたいという、人間の根源的な欲求に訴え、世界中の人々を笑顔にすることが大切であることを伝えています。
グループ一丸となってたまごっちについて考えてくれているので、私は全員が同じ目標に向かい、情報を共有できる体制作りを心掛けています。また、私は海外勤務が長かったので海外に向けた視点も加わったかと思います。
30年変わらない3つの方針
──入手困難にもなった1996年、小学生を中心にした2004年の再ヒットなど、たまごっちは社会現象的なブームを何度も起こしています。その中で絶対に変えていない方針があれば教えてください。
辻:初代「たまごっち」の企画メンバーの言葉を借りると、「ブームとは螺旋のように戻ってくる」ものです。螺旋というのが重要で、毎回違う大きさ・違う場所を巡っています。最近は平成レトロ・平成女児売れブームによってたまごっちが再注目されています。
この中で一貫していることが3つあります。1つはパーパスにもつながる「育成」というテーマです。最新デバイス「Tamagotchi Paradise」では、水のフィールドで育てるとエラができたり、空で育てると羽がついたりと成長論的な要素も加えつつ、お世話をして育てるスタイルは変わりません。2つ目が「意匠」です。たまご型であること、真ん中に液晶があって3つボタンがあることは30年間ずっと変わっていません。
3つ目が「トゲ」、少し「ヘンテコ」な部分です。たとえば、かわいいだけじゃないおやじっちのような存在や、手書き文字のパッケージ。うんちや、死という痛みをともなうテーマ。いずれも、くすっと笑ってしまったり人間の心に突き刺さったりする要素です。物が溢れる中でもひっかかるトゲを意識しています。
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