顧客の高齢化や市場の成熟化というロングセラーブランド特有の壁を、いかに乗り越え、成長し続けるのか。本記事では、インサイトフォースの山口義宏氏がモデレーターを務め、花王の小林達郎氏と日本ハムの岡村香里氏が、成熟市場を突破するためのブランド設計について語った「MarkeZine Day 2026 Autumn」のセッションをレポート。若年層を巻き込むUGC戦略や長年の「タブー」を打ち破る施策など、生活者起点で新たな市場を創り出す両社の挑戦に迫る。
ロングセラーブランドの原点にある“新しい習慣”と“本格的なおいしさ”
山口(インサイトフォース):本日のテーマは「成熟市場を突破するカテゴリー拡張と、勝ち続けるためのブランド設計」です。まず、それぞれのブランドについてご紹介をお願いします。
小林(花王):ビオレは1980年、固形のアルカリ性石けんで顔を洗うのが当たり前だった時代に、中性の洗浄基剤を使った洗顔フォームとして誕生しました。顔がつっぱらずに洗える、新しい洗顔習慣をつくったブランドです。名前はギリシャ語の「Bios(生命・人生)」と「Ore(満ち足りた)」に由来しています。
小林(花王):1984年には、液体ボディソープ「ビオレu」を発売し、体を洗う習慣も変えました。その後も毛穴パック、シート状メイク落とし、泡ハンドソープ、日焼け止めなど、時代のニーズに合わせて新しいスキンケア習慣を生み出してきました。現在は66の国と地域で展開し、花王のグローバル展開の先陣を切る役割を担っています。
こだわってきたポイントは3つあります。1つ目は、誰でも・どこでも・いつでも使いやすい「ユニバーサル」。たとえば泡ハンドソープは、子どもでもきちんと手を洗えるよう、押しやすいポンプと泡にこだわりました。
2つ目は、使ってすぐに効果がわかる「タンジブル」。効果を実感できることが、次の使用につながります。
3つ目は、エントリー層に向けた啓発活動です。小学校での手洗い教室や、レジャー施設で紫外線対策を体験するイベントなどを行っています。ものづくりを通じた社会課題の解決を目指しています。
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岡村(日本ハム):シャウエッセンは1985年に発売し、2025年に40周年を迎えました。ドイツ語の「schau(観る)」と「essen(食卓、食べ物)」を組み合わせた名前で、食卓が楽しいものになるようにという願いを込めています。
岡村(日本ハム):発売当時は皮なしウインナーや赤いウインナーなど、どちらかというと子ども向けの商品が主流でしたが、本場ドイツの本格的なおいしさを日本に届けたいという創業者の思いからシャウエッセンが生まれました。「パリッ!!としたおいしさ」「ポークあらびき100%のジューシーさとコク」「薫り高いスモーク」の3つが、欠かしてはならないコア品質です。

若年層は「発話の起点」 驚きが自走する3Sサイクル
山口(インサイトフォース):ロングセラーブランドでは、顧客の平均年齢上昇という課題が必ず出てきます。若い世代の顧客獲得にどう取り組んでいますか。
小林(花王):若年層の獲得は非常に重要だと考えています。新規ユーザーの獲得だけでなく、若い方には発話力があり、ブランドに活力を与えてくれるからです。
ビオレも平均年齢が上がる中、若い方に支持される商品が出てきました。今年全国発売した「ビオレUV 呼吸感ベールUV」は、湿度に応じて膜の厚みが変化する日焼け止めで、大きな話題になりました。肉球の形で日焼け止めが出てくる「ビオレ キッズスタンプUV」もSNS映えで話題になり、隠れ角栓まで崩壊させて毛穴の黒ずみを落とす「ビオレ おうちdeエステ ディープクレイ洗顔」も、若年層を中心にSNSで大きな話題になっています。
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小林(花王):背景にあるのはマーケティング環境の変化です。かつてはテレビなどのマスメディアで企業が発信し、生活者が受け取る一方通行が中心でした。今は生活者自身が発信し、ブランドの価値形成にも参加しています。企業がつくるPGCだけでは価値が十分に届かず、UGCの重要性が高まっています。
ただ、「SNSでバズらせるには何をすればいいか」という議論になりがちです。私たちはものづくりの会社です。最も大切にしているのは、生活者が発話したくなる製品体験かどうか。使った時に驚きが生まれないものは、SNSでも広がりません。
そこでビオレでは、使用場面(Scene)で“Wow!”が生まれ、SNSで広がり、店頭(Store)で見つかる。この3つの「S」がつながるサイクルを設計しています。起点は使用場面で、SNSやUGC戦略だけを切り離して議論しないことが重要です。この設計により、若年層のトライにもつながると考えています。
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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)
デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。
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