現場への関心が高い顧問に「自社のファン」になってもらう
──多数の顧問の方々と協働するにあたり、組織運営やマネジメント面で意識された点はありますか。
まず報酬の設計です。報酬設計は、そのまま行動設計になります。アポイント単価だけを置けば、顧問様は合理的に「アポを取ること」に最適化されます。制度が「紹介者」としての振る舞いを生んでしまうのです。本来、制度は関係を守るためにあると考えています。そこで、戦略をご一緒いただく時間にも報酬をお支払いする二階建てにしました。
運用面では、一斉メールのような機械的な発信を避け、熱量とリスペクトを持ったコミュニケーションを徹底しました。その分、深く向き合える人数には限界があります。だからこそ、現場の課題に関心を寄せ、ご自身の言葉で伝えてくださる顧問様とご一緒することを大切にしています。大切なのはご経歴よりも、今の課題への関心の強さです。そのため初回の面談では必ず「今、この業界で一番の課題は何だとお考えですか」と伺うようにしています。
その初回の面談で、我々から製品のプレゼンをすることはほとんどありません。お話しするのは、会社のビジョン、その方と何を成し遂げたいのか、そして一番大事なのが、なぜ自分がこの会社にいるのかを自分の言葉で語ることです。顧問様が応援してくださるのは、会社であり、そこで働く人でもあると感じています。
──顧問の方々の熱量を引き出すために、ナレッジワーク独自で行っている取り組みはありますか。
ナレッジワークの代表・経営層と顧問様が直接対話する、クローズドなエグゼクティブ交流会を実施しました。規模は20名ほどで、顧問様と当社のメンバーがほぼ同数です。人数を絞っているのは、大きくすると説明会になってしまうから。名刺交換の場にはしない、というのが最初に決めたことでした。
この会では、代表自身がミッションや今後の展望を語ります。同じ内容でも、担当者が代わりにお伝えするのとは重みが違うと感じています。そして必ず、顧問様同士が交流していただく時間を設けています。顧問様施策は「当社と顧問様お一人ひとり」という放射状の関係になりがちです。顧問様同士が繋がることで、1対1の「点」のつながりが「面」のコミュニティに変わっていくのを実感しています。
また、会場の設えにも気を配ります。一流の環境をご経験されてきた方々をお迎えする場ですから、どのような場でお迎えするかは、こちらの本気度がそのまま伝わる部分だと思っています。
あわせて、顧問様専用の名刺を作成するなど、ナレッジワークの一員として関わっていただける仕組みも整えています。こうした積み重ねが、「ナレッジワークを心から応援したい」と思っていただけることに繋がっていくのだと考えています。
外資系IT企業2社およびSAPジャパンにて事業開発に従事。パーソルイノベーション eiicon companyのBoard memberを務めた後、スタートアップにてインサイドセールス・マーケティング部長を歴任。2023年にナレッジワークへ入社し、BDR組織およびExecutive Relations組織を立ち上げたのち、現職にて大手企業の経営層とのリレーション構築と戦略アカウントの開拓に加え、販売パートナーとのアライアンス推進を担う。
顧問から学び、自走を目指す「組織の学習装置」へ
──営業担当者にとって、成果が出るまでのリードタイムはどうしても焦りを感じてしまうかもしれません。
キーパーソンとの商談実現には数ヵ月かかることも珍しくなく、レポート上は顧問様の動きが見えない期間が発生します。しかし、動きが見えないことと、動いていないことは違います。ここで焦って催促に回ると、関係は一気に「依頼」に戻ってしまう。すべきは催促ではなく、こちらから情報を共有し、相談の回数を増やすことです。そうして初めて、成果は直線ではなく曲線で立ち上がっていきます。
──推進する立場として、意識されていることはありますか。
顧問様との日々の窓口は、担当営業に一本化しています。顧問会社、推進担当、担当営業と関係者が増えるほど「この連絡は誰にすればいいのか」というしわ寄せは顧問様にいきますし、推進担当が前に出続けている限り、担当営業と顧問様の関係は育ちません。初回の面談が終わったら、意識的に一歩下がるようにしています。
──最後に、これから顧問施策に取り組む企業へ向けて、メッセージをお願いします。
成果が出た瞬間を振り返ると、例外なく、顧問の方と人として深く繋がれた時でした。仕組みが優れていたからではありません。この会社を、この人を応援したいと思っていただけたからです。
目指しているのは、顧問様からいただいた大手企業の意思決定構造に関する知見を社内に蓄積し、組織の力として根づかせていくことです。担当が変わっても、顧問様との関係と学びが途切れない。顧問様施策そのものを「組織の学習装置」に変えていくことです。そして顧問様にも「この会社と一緒にやってよかった」と思っていただける存在であり続けたいと考えています。
ただ、そこへ至る入り口は、驚くほど単純でした。3年かけて辿り着いた答えは、あの日いただいた一言の中に、すでに全部あったのだと思います。
「もっと、一緒にやればいいのにな」
私は今も、この言葉に立ち返ります。もし同じところで詰まっている方がいらっしゃれば、次にお送りする1通を「お願い」ではなく「ご相談」から始めてみると、何か変わるかもしれません。少なくとも私の場合は、そこからでした。
