元リクルートVPの金井統氏が、現場で使える「マーケティングの“考え型”」を解説する本連載。マーケターが戦略を実行するためにも不可欠だという「組織マネジメント」の中でも、今回は事業成果を得ながら人を育てるための「フィードバック」や「学びの抽出」に着目。本人自身が経験を学びにつなげるために、マネジメントする人がどう支援すべきかを解説します。
自律自走型マーケ組織のマネジメントには「学びの抽出」が不可欠
前回は、マネジメントの本質を「機会創出」と「成長促進」とお伝えしました。事業の課題と個の強みを結び付け、成果と成長の双方につながるミッションを創る。それが、マネジメントを担う人の重要な役割です。
ただし、良いミッションを設計し、仕事をお渡しすれば、それだけで人が育つわけではありません。初めての仕事では、当然ながらうまく進まないこともあります。そのとき、どのように上長が関わるかで、その仕事が成長の機会になるかどうかが変わります。
今回は、前回紹介したマーケティング・マネジメントモデルの(4)「1on1によるフィードバック」と(5)「チャレンジからの学び抽出」についてお伝えします。図1では、内側の循環にあるこの2つに注目してください。
大切にしたいのは、チャレンジを「成功か学び」に変えることです。成果が出たときも、しくじったときも、そこから何を学び、次の仕事にどう活かすか。経験を繰り返し使える考え型にすることが、自律的に成長する組織の土台になります。
失敗したことを責めてしまうと、どうしても人は萎縮してチャレンジがしづらくなってしまいます。「成功か失敗」ではなく、「成功か学び」という概念でチャレンジを後押ししてあげること。ただし、不可逆な失敗はしないように、上長がガードレールを敷いてあげて失敗から学べる構造を創ってあげることが重要だと思っています。その上で、フィードバックをしながら強みを活かして成長を促すことができると、人財の育成スピードが上がるのではないでしょうか。
フィードバックは、次の行動を本人が考えられるようにすること
フィードバックの目的は、本人が次の行動を考え、実行できるようになることです。
マネジメントをしていると、つい答えを伝えたくなります。自分で説明したほうが早いですし、経験がある分、何をすればよいかが見えていることもあります。私自身も、そうしてしまう場面がありました。
しかし、毎回答えを渡していると、本人は次に困ったときも、上長の答えを待つようになります。目の前の仕事は進んでも、自分で課題を捉え、考えて動く力は育ちにくくなってしまいます。
だからこそ、1on1では、ともに考えるスタンスが重要です。マネジメントはコーチであり、仕事に向き合う選手は本人です。本人が考え、試し、結果から学び、その学びを次の行動に変えられるように伴走します。
ここで使い分けたいのが、ティーチングとコーチングです。ティーチングは、必要な知識やスキルを教えること。コーチングは、問いや対話によって、本人の認識や考えを引き出すことです。
基礎的な知識や仕事の型を知らない人に、「自分で考えて」と言っても、考える材料がありません。その場合は、まず教えることが必要です。一方、必要な知識があり、自分で判断する段階にいる人には、問いを渡して考えてもらうことが成長につながります。
その人の習熟度と、向き合っている課題を見ながら、教えることと引き出すことを使い分ける。最終的に目指すのは、上長の指示を待たず、自分で考えて仕事を進められる状態です。
自分が伸びた方法が、相手にも効くとは限らない
では、どのように関われば、その人の成長を促せるのでしょうか。まず考えたいのは、「その人は、どのように学ぶと成長しやすいのか」という観点です。
自分の頭でじっくり考えて学ぶ人もいれば、人との議論から気づきを得る人もいます。実際にやってみることで理解が深まる人もいれば、まず仕事の型を教わることで前に進める人もいます。
私は、マネジメントのしくじりを通して、自分がされて良かった育成方法を、そのまま相手に当てはめてはいけないと学びました。自分が伸びた方法が、相手にも効くとは限らないのです。
図2は、人によって分かれる得意な学び方を「考えて学ぶか、経験して学ぶか」「自分で考えて学ぶか、他者を通して学ぶか」という2つの軸で整理したものです。この整理は、相手を分類しているのではなく、学び方のスタイルを把握して、コーチであるマネジメント側がどのように支えると成長しやすいかを考えるために使います。
では実際に、本人の学び方、マネジメント側の支え方を切り替えるとはどういうことでしょうか?
たとえば私の場合、過去に中期事業計画の策定を任せたメンバーがいました。その方は、短期的な戦術に目が向きがちで、中期的な戦略を考えることを苦手としていました。そこで、その力を身につけてもらうために、継続して中長期戦略を考えるミッションをお渡ししていました。
ところが、1on1で「自分で何時間も考えているのですが、わからないんです」と本音を打ち明けてくれました。
私は、「自分で15分考えてまったくわからないときに、アウトプットが出たことってありますか?」と聞きました。返ってきた答えは、「まったくないです」でした。
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金井 統(カナイ オサム)
NexGen Inc. CEO
新卒でNTTドコモに入社。端末のマーケティングを経験した後、iモードでビジネス展開をする会社へのコンサルティングに従事。その後、リクルートへ転職。マーケティング室のVP(ヴァイスプレジデント)として、横断の人材育成・知見流通とHR領域のマーケティング責任者を担当。HR領域におけるToC及びToB双方のプロダクト横断での事業・マーケティング戦略、ブランディングからdirectADやSEO等のネットマーケティング、...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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