「週末のディナーに着ていく服が欲しい」「手持ちのジーンズに合うジャケットを探している」。そんな曖昧な希望をAIに伝えるだけで、商品を提案してもらう。ファッションECの購買体験が変わり始めている。2026年10月、米アパレル大手Gap Inc.は、生成AIを活用した新たなショッピング体験を発表した。注目すべきは、自社ECサイトへの会話型AI検索の導入と、外部のAIファッションサービスを活用したスタイリング体験を並行して進めている点だ。消費者がブランドのサイトを訪れる前に、AIが商品との出会いを生み出す。そんな時代に、企業のEC戦略やマーケティングはどう変わるのだろうか。
米Gapが発表した、2つの新たなAIショッピング体験
2026年10月5日、Gap Inc.はサンフランシスコで開催されたテクノロジー関連イベント「SF Tech Week」に合わせて、AIを活用した新たなショッピング体験を発表した。同社が初めてECサイト「Gap Online」を開設した1996年から30年を迎えた節目に、次世代の購買体験を打ち出したのだ。
今回の発表で紹介された取り組みの1つが、グループブランドであるOld NavyとBanana Republicの生成AIによる会話型商品検索機能だ。
従来のようにキーワードやカテゴリー、価格帯などを指定する代わりに、消費者が自然な言葉で欲しいものを説明すると、AIがその意図を読み取り、関連する商品を提案する。たとえば、特定のアイテム名がわからなくても、求めるスタイルや利用シーンを伝えることで、商品を探せる仕組みだ。
紹介された取り組みのもう1つが、外部のAIファッションサービスを活用した商品発見とパーソナライズされたスタイリング提案である。
その1つが、AIスタイリングアプリ「Alta Daily」だ。Alta Dailyは、利用者が手持ちの洋服を登録し、予定や天候、好みなどに合わせたコーディネートをAIが提案するサービスだ。購入を検討している商品と手持ちの洋服を組み合わせ、着用イメージを確認することもできる。今回のGapとの連携では、こうしたスタイリング体験の中にGapの商品が加わり、利用者は自身のデジタルアバターを通じて好みやスタイルに合わせてGapの商品を取り入れたコーディネートを試せるようになる。
さらにGap Inc.は、AIファッション検索プラットフォーム「Daydream」も活用している。同サービスでは、利用者が探している服のイメージや着用シーンなどを文章で伝えると、AIがその意図を読み取り、希望に合った商品を提案する。
ただし、Daydreamとの連携は今回初めて発表されたものではない。Gap Inc.は2025年11月の時点で、同サービスを通じて商品を発見し、自社ECサイトで購入できる仕組みを紹介していた。
同社は2025年10月にもGoogle Cloudとの複数年にわたる提携を発表するなど、AIを活用した小売事業の変革を進めてきた。今回の発表は、そうした取り組みの延長線上にある。
特徴的なのは、自社ECサイトの利便性を高める一方、消費者が外部のAIサービスを利用する場面にも商品との接点を広げていることだ。
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中井千尋(Livit)(ナカイ チヒロ)
大学卒業後、金融機関勤務を経て、イギリスへ留学。そこで培った語学力を活かし、帰国後は企業の語学研修コンサルティングに携わる。シンガポールに渡り、大手日系商社に転職。シンガポール人、インド人、オーストラリア人、モンゴル人、中国人など多国籍社員が集う場でのビジネスを経験。その後、オランダに渡り、ライターとして独立。分野...
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