SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2026 Autumn

世界のトレンドを読む

「Human-made」は次の「オーガニック」になる?「人が作った」をブランド価値にする海外最新事例

 生成AIは、マーケティングの制作現場に急速に入り込んでいる。広告コピー、商品画像、動画、SNS投稿。かつて外注したり、撮影したりしていたものを、今や数分で生成できる。ところが、その反動ともいえる動きが海外で起こり始めた。ブランドが「AIを使えること」ではなく、「AIを使っていないこと」を消費者に伝え始めているのだ。さらに、人間が制作した作品であることを第三者が証明する認証制度まで登場した。オーガニックやフェアトレードが「何を買うか」だけでなく「どう作られたか」を価値に変えたように、AI時代には「Human-made」が新しいブランドシグナルになるのだろうか。

「No AI」をブランドプロミスにしたAerie

 「Human-made」の動きを象徴するブランドの一つが、American Eagle傘下の下着・アパレルブランドAerieである。

 Aerieは2014年から、広告に登場する人物の身体をレタッチしない「Aerie Real」を展開してきた。そして2025年、その約束をAI時代に合わせて更新した。Aerieが現在掲げている宣言は明快だ。

 「No retouching. No AI. Because REAL MATTERS.」

 AerieはAIで人物や身体を生成せず、広告に登場する人の身体をAIで変更することもしないと明言している。

 この宣言は単なる企業倫理ではない。2025年10月にInstagramで方針を発表すると、4万件以上の「いいね」を獲得し、過去1年間で同ブランド最多の反応を集めた。ソーシャルメディア分析企業のMetricoolによると、発表前後の期間にはInstagram投稿のエンゲージメントも約75%増加したという。

 2026年には、ノーメイクを公言してきた俳優・モデルのPamela Anderson氏を起用し、「100% Aerie Real」をさらに前面に押し出した。

 AerieのCMO、Stacey McCormick氏はMarketing Brewの取材で、「あらゆるものが生成される業界では、リアルであることが特別になる」と語っている。

 この言葉は重要である。AI以前は「リアル」はデフォルトだった。しかし、何でも生成できる世界では「リアル」が希少資源になるのだ。

「真の喜びは二度と再現できない」を掲げ、AIではなくリアルな人間の姿を前面に出すAerieのキャンペーン(画像:Aerie)

 そして実際、Aerieの業績も好調だ。親会社であるAmerican Eagle Outfitters(以下、AEO)の2026年第1四半期決算では、Aerieの既存店売上高は前年同期比25%増となり、第1四半期として過去最高の売上高を記録。直近12ヵ月の売上高は20億ドルを突破した。

 もちろん、「No AI」戦略だけを成長要因とみなすことはできない。しかしAEOでCEOを務めるJay Schottenstein氏自身が、商品力と顧客との「deep emotional connection」に加え、「100% Aerie REAL」キャンペーンの継続的な支持を好業績の要因として挙げている点は注目に値する。

「Human-madeであること」をコンテンツに

 もっと直接的に「AIを使わない」を広告メッセージにしたのが、Blue Diamond Growersのアーモンドミルクブランド「Almond Breeze」である。

 2026年1月に始まったJonas Brothersとのキャンペーンが掲げたメッセージは「Really Good – No AI Needed」だ。

 動画では、広告担当者がAIで生成した突飛なアイデアを次々とJonas Brothersに提案する。宇宙空間でアーモンドミルクを飲むといった、いかにも生成AIが考えそうな演出である。

 しかし本人たちはそれを退け、最終的には人間による従来型の広告表現へ戻っていく。

AIが提案する奇抜な広告アイデアをJonas Brothersが退け、「No AI Needed」を打ち出したAlmond Breezeのキャンペーン動画「The Pitch」(動画:YouTube)

 重要なのは、AIを使わなかったことではない。「AIを使わない」という制作上の選択そのものを、消費者に見せるコンテンツへ変換している点だ。

 Blue Diamondによれば、Jonas Brothers自身も企画から完成まで制作プロセスに深く参加した。つまり「Human-made」が単なる技術的な説明ではなく、「本人たちが本当に関わっている」というオーセンティシティの証明として機能している。

次のページ
「AI-free」をプロダクト価値にするSNSも登場

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • note
世界のトレンドを読む連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

岡 徳之(オカ ノリユキ)

編集者・ライター。東京、シンガポール、オランダの3拠点で編集プロダクション「Livit」を運営。各国のライター、カメラマンと連携し、海外のビジネス・テクノロジー・マーケティング情報を日本の読者に届ける。企業のオウンドメディアの企画・運営にも携わる。

●ウェブサイト「Livit」

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2026/09/25 07:00 https://markezine.jp/article/detail/77509

Special Contents

PR

Job Board

PR

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング