「No AI」をブランドプロミスにしたAerie
「Human-made」の動きを象徴するブランドの一つが、American Eagle傘下の下着・アパレルブランドAerieである。
Aerieは2014年から、広告に登場する人物の身体をレタッチしない「Aerie Real」を展開してきた。そして2025年、その約束をAI時代に合わせて更新した。Aerieが現在掲げている宣言は明快だ。
「No retouching. No AI. Because REAL MATTERS.」
AerieはAIで人物や身体を生成せず、広告に登場する人の身体をAIで変更することもしないと明言している。
この宣言は単なる企業倫理ではない。2025年10月にInstagramで方針を発表すると、4万件以上の「いいね」を獲得し、過去1年間で同ブランド最多の反応を集めた。ソーシャルメディア分析企業のMetricoolによると、発表前後の期間にはInstagram投稿のエンゲージメントも約75%増加したという。
2026年には、ノーメイクを公言してきた俳優・モデルのPamela Anderson氏を起用し、「100% Aerie Real」をさらに前面に押し出した。
AerieのCMO、Stacey McCormick氏はMarketing Brewの取材で、「あらゆるものが生成される業界では、リアルであることが特別になる」と語っている。
この言葉は重要である。AI以前は「リアル」はデフォルトだった。しかし、何でも生成できる世界では「リアル」が希少資源になるのだ。
そして実際、Aerieの業績も好調だ。親会社であるAmerican Eagle Outfitters(以下、AEO)の2026年第1四半期決算では、Aerieの既存店売上高は前年同期比25%増となり、第1四半期として過去最高の売上高を記録。直近12ヵ月の売上高は20億ドルを突破した。
もちろん、「No AI」戦略だけを成長要因とみなすことはできない。しかしAEOでCEOを務めるJay Schottenstein氏自身が、商品力と顧客との「deep emotional connection」に加え、「100% Aerie REAL」キャンペーンの継続的な支持を好業績の要因として挙げている点は注目に値する。
「Human-madeであること」をコンテンツに
もっと直接的に「AIを使わない」を広告メッセージにしたのが、Blue Diamond Growersのアーモンドミルクブランド「Almond Breeze」である。
2026年1月に始まったJonas Brothersとのキャンペーンが掲げたメッセージは「Really Good – No AI Needed」だ。
動画では、広告担当者がAIで生成した突飛なアイデアを次々とJonas Brothersに提案する。宇宙空間でアーモンドミルクを飲むといった、いかにも生成AIが考えそうな演出である。
しかし本人たちはそれを退け、最終的には人間による従来型の広告表現へ戻っていく。
重要なのは、AIを使わなかったことではない。「AIを使わない」という制作上の選択そのものを、消費者に見せるコンテンツへ変換している点だ。
Blue Diamondによれば、Jonas Brothers自身も企画から完成まで制作プロセスに深く参加した。つまり「Human-made」が単なる技術的な説明ではなく、「本人たちが本当に関わっている」というオーセンティシティの証明として機能している。
