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ウエディングパークに学ぶ、NPSを高める「検討期間」の信頼作り 最終金額が“見えない”商習慣への挑戦

永井 美波[著]

 「価格を早く見せると、顧客が離れるのではないか」。住宅や自動車、SaaSなど、検討期間が長い商材のマーケターなら一度は抱く懸念でしょう。ウエディングパークは、結婚式場の見学前に費用の幅と内訳を示すサービス「mieruupark」を通じて、価格を先に見せても来館や契約は妨げられないという手応えを得ました。本稿では、同社OA本部 戦略責任者の永井美波氏が、その取り組みから見えた、NPSを高める「検討期間の信頼づくり」の3つのヒントを解説します。

見積りへの不信は「金額」ではなく「認識差」から生まれる

 「最初に聞いた金額から、打ち合わせのたびに見積りが上がっていく」。結婚式の費用について、こうした声を耳にすることがあります。ウエディングパークが2024年7月に登録ユーザー461人へ実施した調査でも、約8割が結婚式準備の費用に不安があると答えました※1。

ウエディングパークのユーザー調査結果。結婚式費用に不安がある人が約8割、予算の本音を正確に伝えられない人が約7割、来館前の見積り共有を利用したい人が88.2%
クリックすると拡大します

 ただし、初回見積りと最終金額の差を、そのまま式場側の不誠実さと結びつけるべきではありません。結婚式は、招待人数、開催時期、料理、衣装、装花、写真、映像……など多くの選択を重ねて作る、個別性の高いサービスです。希望が具体化し、内容や品質を上げれば金額が変わるのは自然なことです。そこには、カップルの希望をもとに、より良い一日をともに創り上げようとするプランナーの仕事があります。

 これは、オプションや仕様の選択によって最終金額が変わる住宅、自動車、法人向けSaaSなどにも共通する構造でしょう。

 問題の本質は、金額の高さではなく、初回見積りの受け止め方が双方で異なることにあります。カップルは「この会場で希望する結婚式を挙げるための総額」と捉えやすい一方、式場は「基本的な内容を置き、ここから希望を聞いて組み立てる出発点」と捉えることがあります。この認識差を残したまま契約が先に進むと、妥当な追加であっても「後から増えた」という印象が強まり、式場への不信やネガティブな印象につながりやすくなります。プランナー側も、提案価値を伝える前に金額差の説明や調整へ時間を使うことになり、双方に負担が積み重なります。

 私たちは2004年、クチコミを参考に結婚式準備ができるメディア「Wedding Park」を始めました。以来、デジタルとデータを使ってカップルと式場の情報格差を小さくし、双方が納得して出会える環境を作ることを事業の軸にしています。費用への不安も、個々の式場だけに委ねず、プラットフォームを運営する企業として向き合うべき課題だと考えました。目標に置いたのは「結婚式費用への不安の払拭と納得の醸成」です。

価格を「一点」ではなく「幅と内訳」で見せる

 では、この認識差をどう埋めるのか。私たちが出した答えは、契約前、さらには見学前の段階で、価格の「幅」と「理由」を顧客自身が確かめられるようにすることでした。

 この課題に最初に声を上げたのは、全国で結婚式場を運営するテイクアンドギヴ・ニーズ(以下、T&G)でした。「費用のわかりづらさを一緒に解決したい」という相談を受け、2社で、結婚式費用のリアルなシミュレーションができるサービス「mieruupark(ミエルーパーク)」の開発を始めました。

画像を説明するテキストなくても可
「mieruupark」のサービスイメージ
(クリックすると拡大します)

 価格の開示は、式場に一方的に求めるだけでは続きません。そこで重視したのが、関係者それぞれにメリットがある設計です。ウエディングパークには、カップル、結婚式場、自社、社会全体にとって価値があるかを問う「四方良し」という考え方があります。カップルは費用の見通しを持てる。式場は価格の根拠と体験価値を伝えやすくなる。私たちは双方の対話を支える基盤を作る。その結果として、業界への信頼が育つ。この循環を2社で設計しました。

 mieruuparkで使うのは、結婚式場が提供する正式な料金データと、過去の注文実績データです。カップルは見学前に、人数別の支払総額や、料理、衣装、装花など費目ごとの分布を確認し、自分たちの条件で見積りを組み立てられます。

 最安値の1点ではなく、実際に選ばれた内容と最終的な価格帯を示すことで、金額の幅と理由を理解できるようにしました。1点の金額は「総額」と受け取られやすく、それ自体が認識差の原因になります。幅と内訳を先に示せば、金額が変わりうることを前提として共有したうえで、相談を始められます。

 前例の少ない取り組みでは、会議室で完成度を高め続けても、課題を解けるかはわかりません。そこで私たちは、必要な機能に絞ったベータ版を作り、2024年4月にT&Gの2会場から運用を始めました。T&Gでは経営陣と担当者が式場を訪れ、サービスの意義をプランナーへ直接伝え、カップルの反応を確かめながら計20会場へテストを広げていきました。

 小さく始めたのは、顧客や現場の生の声に早く触れ、得られた事実を次の改善に戻すためです。ベータ版利用者から寄せられた「費用が追加される仕組みを理解できた」「項目ごとに費用が見えるため安心につながる」という声は、私たちが解こうとしているのが情報量の不足だけでなく、選ぶ過程の不安であることを教えてくれました。

 その後も、カップルが見積り項目を動かして迷った過程を、本人の同意を得た場合に限り「費用カルテ」として式場へ共有する機能を追加しました。2026年8月には、予算をかけたい項目と調整したい項目を整理する問いかけや、見積りへの納得度を式場へ共有する機能も実装しています。

 検討の過程が共有されれば、プランナーは価格の説明からではなく、カップルが何を大切にしたいかから提案を始められます。完成品を一度届けて終わるのではなく、利用者と式場の声を受け取り、小さく早く更新を重ねることが私たちの開発姿勢です。

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事前利用者は来館・契約率が高かった

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この記事の著者

永井 美波(ナガイ ミナミ)

株式会社ウエディングパーク OA本部 戦略責任者
2018年新卒入社。エンジニアとして複数メディアの開発、チーフエンジニア、エンジニアリングマネージャーを経験。2023年からBTOとして経営チームの議論に参画し、現在はmieruuparkをはじめとする主に新規事業領域の事業戦略を担う。(OA=ウエディングパークが掲げる「おもてなしオートメーション」の略)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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