全国約2万2,000店舗と購買データを活かし、リテールメディア事業の拡大を目指すセブン‐イレブン・ジャパン。2026年9月には、電通、サイバーエージェントとの合弁会社「セブン‐イレブン・アドコネクト」が事業を開始した。本記事では、セブン‐イレブン・アドコネクト 事業推進本部長の大石健司氏に取材。関連商品売上が他店比112%となった熱中症アラート連動配信など、天候・店舗の状況に応じた広告配信の事例や新体制での変化、効果測定の課題を通じて、同社リテールメディアの現在地を聞いた。
セブン×電通×サイバーの新体制がスタート。その変化は
──「セブン‐イレブン・アドコネクト」は、2026年9月1日に事業を開始しました。新体制でどのような変化を感じていますか。
事業開始からまだ1ヵ月ですが、セブン‐イレブン、電通、サイバーエージェントの3社が同じ目標に向かって動くことで、気づきや動き方は大きく変わっています。
セブン‐イレブン側として、従来、接する機会が多かったのは、メーカー様の中でもセブン‐イレブンを担当する営業部門でした。宣伝予算を持つマーケティング部門や宣伝部門との接点は、少なかったのです。
今は電通、サイバーエージェントから来たメンバーが営業チームにも入り、我々だけでは接点が持ちにくかったお取引先様との商談が増えています。小売の視点に加え、広告主のマーケティングや宣伝の視点から提案できるようになったと実感しています。
──セブン‐イレブンでは2022年3月のリテールメディア事業開始以降、アプリ広告からPOSレジ画面広告、店内サイネージへと接点を広げてきました。その経緯を教えてください。
もともと私は、「セブン‐イレブンアプリ(以下、アプリ)」の運用を担当していました。おにぎりをよく買う方におにぎりのクーポンを送るなど、データを使って店舗の売上を上げる取り組みです。この仕組みをメーカー様にも活用いただく中で、伝えたいのはクーポンだけでなく商品情報でもあるとわかり、アプリのお知らせ枠で広告を配信するようになりました。
ただ、1日約2,000万人が来店されても、全員がアプリを使っているわけではありません。情報を届けられるのが一部に限られるのはもったいないと考え、レジ画面、さらに買い物中にも見えるデジタルサイネージへと拡大しました。
先行する他社様ではレジ上にサイネージを設置していますが、我々は入店した瞬間に見え、買い物中にも目に入る場所に設置しています。2026年8月時点で首都圏と四国を合わせて約3,700店舗で導入。今後は関西・東海にも広げ、約8,700店となる予定です。

デジタルサイネージは、店舗で扱う商品のメーカー様だけでなく、店舗で商品を扱っていない証券領域の企業などにもご利用いただいています。また、老若男女幅広い方にご覧いただける媒体なので、たとえばテレビを見ない層などにもきちんと認知を届けられる点を評価いただいています。
セブン‐イレブン・アドコネクトの主な広告メニュー(2026年8月時点)
- デジタルサイネージ:首都圏・四国の約3,700店舗に設置。2027年2月までに約8,700店舗へ拡大予定
- レジ広告:全国のレジ画面に、県別・週単位で出稿可能。表示回数は約2億回/週
- アプリバナー広告:会員数約2,900万人のアプリで、購買データを活用したターゲティング配信が可能
※レジ広告・アプリバナー広告は、セブン‐イレブンで取り扱う商品のみ掲載可能
脱・一斉配信「見たくなるメディア」に変えるコンテンツ戦略
──広告会社・広告主の視点が加わり、コンテンツの考え方も変わりましたか。
マーケターの関心事として、自社の広告がどれだけ流れるかだけでなく、自社の他に何が流れているか、そもそも見たくなるようなメディアになっているかがあると思います。これまでは、そこへのアプローチが弱かった。現在は新たに「コンテンツ部」を作り、広告代理店ならではの視点を取り入れています。
従来も近い機能はありましたが、主な役割は、素材が正しく構成され、オーダーどおりに流れているかを確認することでした。今は、コンテンツの質や広告以外に何を流すべきかも考えています。単なる商品紹介の広告として配信するだけでなく、ランキング形式や「誰々のおすすめ」という見せ方、商品を紹介しないコンテンツも、視聴率を高めるためには一定必要です。
楽しいものや気になるメッセージがあるから、つい目を上げてしまう。広告のプロフェッショナルが加わり、その視点が強められたと感じています。
──6月の設立会見では、セブン‐イレブン・ジャパン 代表取締役社長の阿久津知洋氏が「自社のポテンシャルはまだ半分しか使えていない」と語っていました。広告の届け方として、どのような姿を目指していますか。
会見で阿久津が申し上げたとおり、約2万の店舗に多くのお客様が来店され、購入の利便性は追求してきたけれども、それ以外に提供できる価値がもっとあります。
リテールメディアは、その1つです。たとえば、多くの人に一度に情報を伝えたい場合、今でもテレビが最も有効です。ただ、ターゲティングはできません。一方、Web広告は趣味・関心や性別などで絞り込み、効率よく届けられる。セブン‐イレブンはこれまで、どちらも十分ではありませんでした。
今後、少なくとも8,700店にデジタルサイネージが付き、データもあれば、多くの店舗へ一斉に届けることも、個店ごとに出し分けることもできるようになります。その両方が理想です。
以前は「首都圏にはこれ」「大阪にはこれ」という大きな地方区分での配信が中心でした。しかし、気温が高い地域と寒い地域、あるいは学生が多い地域など、店舗を取り巻く環境は様々です。同じ新商品のビールでも、地域や時間帯、お客様によって、おすすめする情報は変わるべきでしょう。
AIによって大量のクリエイティブを作ることも技術的には可能になってきたため、将来的には全店の環境に合わせて表現とメッセージを最適化し、効果のあるエリアには配信量を増やすといった運用を目指しています。
ただ、生成AIには予期しない表現を作るリスクもあります。我々が広告を配信する場の多くは、加盟店の店舗です。不適切な表現によって、地域のお客様から信頼を損なう可能性もあります。地域のお客様や、加盟店に受け入れていただけるよう、慎重に段階を踏んで進めます。
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島田 涼平(シマダ リョウヘイ)
食品専門紙の記者としてキャリアをスタートし、同時に農林水産省に拠点を置く記者クラブにも所属。時事ネタからスポンサードコンテンツまで担当し、官庁・民間企業問わず取材を行ってきた。その後、紙媒体からWeb媒体への転身を決意。比較系Webメディアのコンテンツ制作を経験後、2022年からマーケティングを中心とした経済メディ...
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