Starbucksは「バリスタだからできる投稿」を広告として増幅
Employee Creator(社員クリエイター)の広がりを象徴するのがStarbucksだ。同社は2024年に「Green Apron Creators」を立ち上げ、従業員によるSNS発信を支援してきた。さらに2026年夏には、TikTokのContent Suiteを活用したカスタムCreator Networkの試験運用へ踏み込んだ。
Brand Networksが2026年7月に発表した内容によれば、StarbucksはTikTokのカスタムCreator Networkを試験導入する最初のブランドとなった。参加する社員クリエイターへの制作ブリーフ配信から、コンテンツ制作、権利管理、広告への活用までを一つの仕組みで行い、社員には広告収益のシェアを通じて報酬を支払う。
つまり、社員が自発的に会社について投稿するだけではない。社員のコンテンツを企業が発見し、支援し、さらに広告として増幅するところまでマーケティングの仕組みに組み込んでいるのである。
同社の取り組みを支援するBrand Networksによると、Starbucksの社員は同規模の外食チェーンの社員と比べ、SNSへの投稿頻度が約3倍に上るという。
社員発信そのものへの需要も高まっている。Sprout Socialの「State of Social Media 2026」によると、消費者の40%が少なくとも月1回、Employee-Generated Contentを通じて商品やサービスを発見している。Z世代ではその割合が61%に上る。また、61%の消費者は、商品を宣伝するコンテンツを制作した社員に企業が追加報酬を支払うべきだと回答した。
重要なのは、企業が台本を渡した社員を広告出演者にしているわけではない点だ。価値があるのは、バリスタだからこそ知っている商品の楽しみ方や店舗の日常、顧客とのやり取りである。企業側は「何を言うか」を完全に管理するより、社員本人の当事者性を残したままリーチを拡大する役割へ移りつつある。
Gapは社員の発信を「売上」に接続するコマース導線を設計
さらに踏み込んでいるのがGapである。
同社は2026年7月22日の公式発表で、2025年10月に始めた「Gap Inc. Creator Program」を社員にも開放すると発表した。対象はGap、Old Navy、Banana Republic、Athletaの4ブランド。本社だけでなく、店舗や物流拠点で働く社員も応募できる。
一般クリエイター向けとして始まった同プログラムは、既に約3万件のユニーク投稿を生み、累計1億5,400万人にリーチしている。社員はSNS用ツールやコンテンツ制作の機会を利用できるだけでなく、アフィリエイトプログラムにも参加し、条件を満たせばコミッションや商品を得ることができる。
GapのMarketing Shared Services担当SVP、Damon Berger氏は同社の発表で、社員ほど自社のブランド、商品、顧客を理解している人はいないとの考えを示している。
従来のインフルエンサーマーケティングでは、企業は外部クリエイターに商品を送り、ブランドや商品の魅力を理解してもらうところから始めていた。Employee Creatorでは逆である。商品知識も顧客理解も既に持っている人材が、最初から社内にいる。
そしてGapでは、「社員の発信→商品発見→購入」というコマース導線まで設計されている。Employee Creatorは単なる認知施策から、売上を生み出すチャネルへ進み始めている。
