SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2026 Autumn

世界のトレンドを読む

企業アカウントより社員が売る時代へ。海外で広がる「Employee Creator」日本での第一歩は

 企業がSNSで情報発信するなら、まず公式アカウントを育てる。そんな常識が変わり始めている。米国を中心に今、店舗スタッフやバリスタ、営業担当者、マーケターなど、「そこで実際に働く人」をクリエイターとして活用する「Employee Creator(社員クリエイター)」戦略が広がっている。背景にあるのは、人を起点に情報が流通するSNSの構造と、生成AIの普及だ。企業が大量のコンテンツを容易に作れるようになるほど、「誰が、どんな経験から語っているのか」の価値はむしろ高まる。Employee Creatorは、社員による広報協力の延長ではない。社員が持つ知識、経験、個性そのものをブランドのメディア資産として捉える動きなのである。

Starbucksは「バリスタだからできる投稿」を広告として増幅

 Employee Creator(社員クリエイター)の広がりを象徴するのがStarbucksだ。同社は2024年に「Green Apron Creators」を立ち上げ、従業員によるSNS発信を支援してきた。さらに2026年夏には、TikTokのContent Suiteを活用したカスタムCreator Networkの試験運用へ踏み込んだ。

 Brand Networksが2026年7月に発表した内容によれば、StarbucksはTikTokのカスタムCreator Networkを試験導入する最初のブランドとなった。参加する社員クリエイターへの制作ブリーフ配信から、コンテンツ制作、権利管理、広告への活用までを一つの仕組みで行い、社員には広告収益のシェアを通じて報酬を支払う。

 つまり、社員が自発的に会社について投稿するだけではない。社員のコンテンツを企業が発見し、支援し、さらに広告として増幅するところまでマーケティングの仕組みに組み込んでいるのである。

 同社の取り組みを支援するBrand Networksによると、Starbucksの社員は同規模の外食チェーンの社員と比べ、SNSへの投稿頻度が約3倍に上るという。

 社員発信そのものへの需要も高まっている。Sprout Socialの「State of Social Media 2026」によると、消費者の40%が少なくとも月1回、Employee-Generated Contentを通じて商品やサービスを発見している。Z世代ではその割合が61%に上る。また、61%の消費者は、商品を宣伝するコンテンツを制作した社員に企業が追加報酬を支払うべきだと回答した。

 重要なのは、企業が台本を渡した社員を広告出演者にしているわけではない点だ。価値があるのは、バリスタだからこそ知っている商品の楽しみ方や店舗の日常、顧客とのやり取りである。企業側は「何を言うか」を完全に管理するより、社員本人の当事者性を残したままリーチを拡大する役割へ移りつつある。

Gapは社員の発信を「売上」に接続するコマース導線を設計

 さらに踏み込んでいるのがGapである。

Gapも「Employee Creator」戦略を採用(出典:同社ニュースルーム

 同社は2026年7月22日の公式発表で、2025年10月に始めた「Gap Inc. Creator Program」を社員にも開放すると発表した。対象はGap、Old Navy、Banana Republic、Athletaの4ブランド。本社だけでなく、店舗や物流拠点で働く社員も応募できる

 一般クリエイター向けとして始まった同プログラムは、既に約3万件のユニーク投稿を生み、累計1億5,400万人にリーチしている。社員はSNS用ツールやコンテンツ制作の機会を利用できるだけでなく、アフィリエイトプログラムにも参加し、条件を満たせばコミッションや商品を得ることができる。

 GapのMarketing Shared Services担当SVP、Damon Berger氏は同社の発表で、社員ほど自社のブランド、商品、顧客を理解している人はいないとの考えを示している。

 従来のインフルエンサーマーケティングでは、企業は外部クリエイターに商品を送り、ブランドや商品の魅力を理解してもらうところから始めていた。Employee Creatorでは逆である。商品知識も顧客理解も既に持っている人材が、最初から社内にいる

 そしてGapでは、「社員の発信→商品発見→購入」というコマース導線まで設計されている。Employee Creatorは単なる認知施策から、売上を生み出すチャネルへ進み始めている。

次のページ
BtoB企業では「社員=専門家の顔」をマーケティングチャネルに

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • note
世界のトレンドを読む連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

岡 徳之(オカ ノリユキ)

編集者・ライター。東京、シンガポール、オランダの3拠点で編集プロダクション「Livit」を運営。各国のライター、カメラマンと連携し、海外のビジネス・テクノロジー・マーケティング情報を日本の読者に届ける。企業のオウンドメディアの企画・運営にも携わる。

●ウェブサイト「Livit」

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2026/09/08 07:00 https://markezine.jp/article/detail/77377

Special Contents

PR

Job Board

PR

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング