日本のBtoBマーケティングは本当に「遅れている」のか?
高広氏は冒頭、会場に向けて3つの質問を投げかけた。「日本のBtoBマーケティングは欧米に比べて遅れていると思う方」「SalesforceをはじめとするSFAやCRM、営業支援ツールを導入してみたものの、うまく使いこなせていない会社の方」「The ModelやABMといったBtoBマーケティングのモデルを導入してみたが、期待したようにはうまくいっていない方」。挙手を求めると、いずれの質問にも会場の多くの手が挙がった。
続けて高広氏は、今回の講演の狙いを明かした。
「今日は、日本の製造業にはマーケティングがなかった、日本のBtoBは遅れている、という通説。それからThe ModelやABMといったモデルへの無条件の信仰。そして再現性という言葉。この3つを批判するためにお話しします」(高広氏)
ただし、これは「否定」ではなく「批判」であると強調する。批判とは、何が有効で、どこまで有効かを切り分けることだ。
「営業」と「Sales」は別物である
議論の出発点となったのは、「営業」と「Sales」は同じではない、という指摘だ。経営学・ビジネス研究の世界では、この2つが実は別物であることが明らかになっているという。実際に海外で発表される論文の中には、「営業」をあえてアルファベットで「eigyo」と表記するものも存在する。「オタク」や「寿司」のように、日本固有の概念として学会でも扱われているそうだ。
その違いを象徴するのが「Customer」と「得意先」という言葉だと高広氏は説明する。Customerはラテン語の習慣(consuetudo)に由来し、「習慣的に買う人」、つまり購買の頻度を表す言葉。一方の「得意先」は、江戸時代の遊里文学などにも登場する言葉で、「親しい間柄の贔屓」を意味する。気持ちを理解し合う相手、というニュアンスだ。

呉服問屋が「大福帳」という帳簿をもとに、商品を先に届けて年末にまとめて代金を回収していたように、信頼関係に基づいて長く付き合う商売のあり方が、日本のビジネスにはずっと存在してきたと高広氏は語った。
