「ヨミの文化」×生成AI 日報が「宝の山」になる日
もっとも、「ヨミ」も今後活かせる可能性があると高広氏は語る。生成AIは今のところ、インターネット上に公開されたデータを学習の元にしているが、営業日報のような社内の細かなテキストデータは、企業ごとに固有の学習データになる可能性が高い。
パイプライン管理をしているアメリカ企業では、細かなテキストの日報はあまり残らない。「今後、営業部長が日報に目を通すことよりも、その日報を生成AIが活用できる状態に整えることのほうが、はるかに重要になってくるはずです」と高広氏は展望を述べた。

組織モデルは「処方薬」 アイランド型からSQUADまで
講演の終盤、高広氏は営業組織の変遷を紹介した。最初はツリー構造で横のつながりがない「アイランド型(The Islands)」。次に流れ作業で顧客対応をする「アッセンブリライン型」(The Modelはこれにあたる)。
その後、顧客セグメントごとにフル機能のチームをつくる「The PODs」が生まれ、近年はミッション単位でチームを編成する「The SQUAD」というモデルも登場している。SQUADはもともとSpotifyの開発チームから生まれた考え方で、デザイナーやエンジニアも含めたチームがミッションごとに組成され、職種ごとの横のつながり(Tribe)も持つのが特徴だという。
高広氏は、どのモデルを選ぶべきかは企業によって異なると強調した。アッセンブリライン型は顧客セグメントが同質で、商談ボリュームが多い企業向き。THE PODsは顧客セグメントが多様で、ある程度の人員規模がある企業向き。THE SQUADはカスタマイズ性の高い商材を扱い、チームの自律性を許容する組織文化がある企業向きだという。
「組織モデルは万能薬ではなく、特定の症状に効く処方薬だと考えるべきです。どんな企業に効くのか、逆にどんな企業には合わないのか、副作用は何か──。そこまで見極める必要があります。海外でうまくいっているからというだけで導入を決めるのは、成分も調べずに人の薬を飲むようなものです」(高広氏)
ビジネスの世界に「完全な再現性」はありえない
最後に高広氏は、「再現性」という言葉に釘を刺した。再現性とは本来、自然科学の言葉で、同じ条件を揃えれば同じ結果が得られることを指す。しかし社会科学の世界では、会社が違えば、お客様が違えば、条件は変わってしまう。完全な再現性は、ビジネスの世界にはあり得ない。
それでも再現性という言葉が使われるのは、多くの場合、原理やフレームワーク、あるいは手順のことを指しているか、自然科学へのある種のコンプレックスの表れかもしれないと高広氏は指摘する。市場環境も、ターゲットの属性も、チャネルも、時代背景も、常に変化する。だからこそ再現できない変数を常に加味した上で、理論や方法そのものを正しく理解し、プロセスを再現することを目指すべきだと締めくくった。
「遅れている」も「進んでいる」も、実は同じ道を歩いていることが前提になる言葉である。日本のBtoB企業には、日本なりの合理性に基づいた組織のかたちがある。高広氏のセッションは、その事実にあらためて向き合うことを、会場の参加者たちに促していた。
