「試合日しか入れない」は誰が決めた? 常識を疑うCXの核
━━「野球のない日」に、野球ファン以外の市民や生活者を呼び込むための「コンセプトの核」と、カスタマージャーニーにおける狙いを教えてください。
「北海道ボールパークFビレッジ」のベースとなっているのは、球場を作る際に掲げた「共同創造空間」というコンセプトです。日本社会で中長期的にエリアを成長させるためには、多くの人たちと一緒に時間をかけながら場所を育てていくことが重要だと考えています。
もう一つは「既成概念からの脱却」です。時代や環境が変われば、お客様が求めるものも変わっていきます。だからこそ、これまでの考え方にとらわれすぎず、今のお客様にとって本当に良いと思えることを考え、形にしていくことを大切にしています。
━━具体的に、どのような常識を疑ったのでしょうか。
そもそも「球場は試合がある日しか入れない」というのは誰が決めたのでしょうか。もちろん試合を楽しみに来ていただくことは大切ですが、試合の日程を把握していない方にとっては、球場を訪れるきっかけが限られてしまいます。試合がなくても入れたらいいじゃないか、というのが根本の発想です。エスコンフィールドHOKKAIDOで実施しているスタジアムツアーは試合日・非試合日に関わらず年間を通して実施しています。
また、フィールドが丸いからといって、建物を丸くする必要はありません。スペース効率を考えれば直線的に捉えたほうがいい。そのため、エスコンフィールドHOKKAIDOは無駄なアーク(曲線)を描かず、お客様からも選手が近く見える設計になっています。

120万IDがもたらした変化とデータドリブンな組織の実現
━━Fビレッジの開業後、公式アプリのID連携やキャッシュレスデータから見えてきた、「365日接点」の具体的な成果を教えてください。
様々な行動がデータ化されたことで、社内における議論の質も大きく変わったと感じています。札幌ドーム時代は顧客接点のデータが手元に少なく、限られたコアなファンの方々の行動パターンから「お客様はこういう行動をされるのではないか」という、私たちなりの仮説に頼る部分もありました。
しかし、現在はFビレッジIDの会員数も120万規模になり、様々な属性や来場履歴から、お客様の行動をより具体的に捉えられるようになりました。
━━集まったデータは、どのように活用されているのでしょうか。
私たちはテナント様に対してもデータをオープンに共有しています。個人情報は保護した上で、隣の店舗の売上情報も、球場全体でほぼリアルタイムに更新して共有しています。
情報を持っている側が一方的に判断するのではなく、できるだけ同じ情報を共有した上で、皆さんと一緒に議論し、より良い方法を考えていくことが大切だと考えています。
━━「共同創造空間」というコンセプトが、データの扱いにも表れていますね。
私たちはプラットフォーマーとして、組織の頂点ではなく「ピラミッドの一番下」つまり、現場を支える立場にあると考えています。 お客様と日々接している現場のスタッフが感じたことやアイデアを大切にし、それをスピーディーに形にできる環境を作ることが重要です。
この球場で行われている新しいエンターテインメントやサービスの中には、私自身がすべてを把握しているわけではないものもあります。
だからこそ、何か新しいことを始める際に、毎回上司の判断を待つのではなく、現場の判断でスピーディーに動ける環境を作ることが重要です。
現場に一定の権限を委ね、良いと思ったことをできるだけ早く形にしていくことが、新しい価値につながっていくと考えています。
