海外ブランドで揺らぐ「インフルエンサー起用」の常識
「インフルエンサーを起用するなら、フォロワー数が多い人ほどいい」
そんな常識が、海外ブランドの間で揺らぎ始めている。
米小売大手Targetは2026年、クリエイタープログラム「Club Target」を本格始動した。参加条件はフォロワー500人以上。従来のインフルエンサーマーケティングから見れば、決して多い数字ではない。それでもTargetは、こうした一般ユーザーに近いクリエイターを数千人規模で組織化し、ブランドとの継続的な関係づくりを進めている。
TargetのChief Digital & Revenue OfficerであるSarah Travis氏は、「私たちの最高のマーケティングの多くは、お客様から生まれています。Club Targetは、その人たちに居場所を提供する取り組みです」と説明する(TheStreet『Target executive unveils bold new plan to win back customers 』)。
さらに同氏は、Targetは毎日5万件以上のユーザー投稿で言及されており、「こうしたオーガニックな存在感は、お金では買えない」とも語っている。
同様の動きはTargetだけではない。American Eagle、TikTok、Meta、Shopifyなども、フォロワー数よりもコンテンツ制作力やブランドとの親和性を重視したクリエイター施策を相次いで打ち出している。
では、本当にフォロワー500人で十分なのだろうか。
結論から言えば、「フォロワー数は不要になった」という話ではない。企業がクリエイターに求める役割が、「影響力」から「広告クリエイティブの制作」へと変わり始めたのである。
企業が求めるのは「一人のスター」から「多様な広告素材」へ
従来のインフルエンサーマーケティングでは、フォロワー数はそのまま広告価値だった。企業は影響力の大きいクリエイターへ商品を提供し、自身のフォロワーへ紹介してもらうことで、認知拡大や話題化を狙っていた。
しかし現在、海外ブランドの発想は大きく変わりつつある。
たとえばAmerican Eagleは「AE Creator Community」を通じて、学生や若年層を中心としたクリエイターを継続的に募集している。同社は2025年度第1四半期の決算説明会で、このプログラムが当初の想定を上回るペースで成長していることを明らかにした。姉妹ブランドAerieでは、半年かけて達成する想定だった目標を数週間で超えたという。
企業が評価しているのは、フォロワー数そのものではない。生活者ならではの自然なレビュー、商品を使うリアルなシーン、TikTokやInstagram Reelsになじむ短尺動画など、「広告としても活用できるクリエイティブ」である。
この変化を後押ししているのが、MetaやTikTokの広告機能だ。
MetaのPartnership AdsやTikTokのSpark Adsを使えば、クリエイターが投稿したコンテンツをそのまま広告として配信できる。つまり、投稿は一度公開して終わりではなく、企業が広告クリエイティブとして二次利用し、配信対象や予算を調整しながら成果を最大化できるようになった。
ここで重要なのは、広告成果を左右するのはフォロワー数ではなく、投稿そのものの質だという点である。
広告運用の現場では、1本の動画だけで勝負することは少ない。数十本、時には数百本のクリエイティブを制作し、クリック率や視聴維持率、コンバージョン率などを比較しながら、成果の高いものへ予算を集中させる運用が一般化している。
つまり企業が欲しいのは、一人のスターではない。多様なクリエイターが生み出す、多様な広告素材である。だからこそ、フォロワー500人のクリエイターにも活躍の場が生まれているのである。
