「スコアリングが機能しない」4つの理由
セッションの冒頭、モデレーターの安藤氏は、多くのBtoB企業が直面している「スコアリングの限界」について自身の経験を交えながら語った。
これまでのマーケティングオートメーション(以下、MA)におけるスコアリングは、顧客がターゲット部署かどうか、フォームからの問い合わせか展示会での名刺交換かといった流入経路、あるいは「3ヵ月以内にWebサイトを2回訪問したか」といったシグナルをポイント化する加点式が一般的だった。そして、一定の閾値を超えたリードをインサイドセールスやフィールドセールスに引き渡すという運用が行われてきた。
しかし、多くの場合「BtoBビジネスでスコアリングが機能していない」と安藤氏は指摘し、その理由として以下の4点を挙げた。
- 受注サンプル数の不足:BtoBはBtoCに比べて受注数が少なく、受注に至ったリードの部署や流入チャネル、行動履歴などを掛け合わせても、共通項(パターン)が見つかりにくい
- CRMデータの欠損:システム導入前の過去データが存在しないなど、保有データ自体に入力漏れや欠損がある
- データの属人化:アプローチ結果を自由入力にするとムラが出る、選択式にすると実務との整合性が取れなくなる
- データの分断:MA、メール配信ツール、Web解析ツールなどにデータがバラバラに存在し、統合されていない
これらの要因が絡み合い、多くの企業でスコアリングが形骸化している現状がある。では、この壁をどのように乗り越えるべきか。AIを用いてスコアリングが機能する環境を整えたミスミとLayerXの両氏へ、具体的なCRM戦略の取り組みについて問いかけた。
正答率80%超、行動の「リズム」と「変化」を捉えるAI予測モデル
ミスミは、最終製品を作るための生産設備に使われる機械部品や備品などをEC上で販売する企業だ。今回紹介するスコアリング戦略は、この「meviy」の事業において活用されている。
天間氏は、スコアリングの精度を高めるためには「データをどうつなげるか」が重要だと語る。ミスミでは会員IDを軸に、営業支援システムやWeb解析ツールなどのデータをBIツール上で統合する基盤を構築。これにより、サイト利用の傾向など顧客の行動パターンをより多角的に捉えられる仕組みを整えた。

その上で天間氏は、アクセス数などを加算していく「足し算形式」のスコアは実情に合わないと指摘する。
「たとえば、サイトへのアクセス数が多いからといって見積もり意向が高いとは限りません。そこで、人間の感覚では測りきれない行動のリズムと変化を、『掛け算形式』で組み合わせたAI予測モデルで把握できるようにしました」(天間氏)
ミスミのAI予測モデルは、次の要素の掛け算によって「今動き出しているシグナル」を算出しているという。
- 行動のリズム(平均間隔):月に1回の訪問か、週に1回の訪問かといった頻度。
- 旬度(訪問の経過日数):初回訪問や最終訪問からどの程度の時間が経過しているか。
- 変化(直近1週間の偏り):直近2日間や1週間で急激にアクセス数が増加していないか。
たとえば、普段は月1回しか訪問しない顧客が直近1週間で頻繁にアクセスしている場合、何か変化が起きた可能性が高いため、アプローチが必要だと判断できる。テスト運用の結果、ミスミのAI予測モデルの正答率(適合率)は80%を超え、スコアが高い層は全体平均の5〜7倍のCVRを達成するなど、極めて高い精度の予測が可能になったという。
