CPA高騰、コンプライアンス……金融商材を訴求する難しさ
──貝原さんは、広告代理店から事業会社へと渡ってこられました。立場が変わったことで、広告運用に対する考え方も変化しましたか?
貝原:広告代理店時代は、どうしても広告効果測定ツールや媒体の管理画面の中に閉じた思考になりがちでした。画面上の数字を追うことに終始してしまい、その数字の向こう側にいるお客様の行動や顔を思い浮かべる機会が少なかったように思います。
貝原:また広告主の立場になり、自社の予算を使ってプロモーションを実行するようになると、費用対効果に対してより一層シビアになった気がします。代理店時代は「予算をどう効率良く消化して成果を最大化するか」に目が向きがちでしたが、広告主となった今は「そもそもこのコストは本当に正しく使われているのか」「無効な施策にお金を払っていないか」というように、コストの妥当性を厳しく検証する意識が高まりました。
──金融業界におけるWeb広告運用ならではの難しさについて教えてください。
貝原:大きく分けると3つの難しさがあります。1つ目は、Web広告全体の競争激化にともなうCPAの高騰です。CPCも右肩上がりで上昇しており、従来の手法だけでは新規顧客を効率的に獲得し続けることが難しくなっています。
2つ目は、金融商品という無形商材であり、かつ投資というリスクをともなう商材ならではのコンプライアンスの厳しさです。広告表現には法律や業界ルールによる非常に厳格な制約が課されています。たとえば、お金の魅力を直感的に伝えるために紙幣のイメージを派手に見せるような表現は、コンプライアンス上制限されます。ルールを厳守しながら、いかに安全かつ魅力的に訴求するかが大きなテーマです。
3つ目は、投資に対して「怖い」「難しそう」という先入観を抱いているユーザーが多い点です。そのため、ただ広告を配信して認知を広げるだけでは、口座開設のアクションまでつながりません。
そこで私たちは、ユーザーの投資に対する認識そのものの転換を重視しています。投資にともなうリスクを正しく、誠実にお伝えしつつも「実は気軽に、少額からでも始められるものなんだ」という気づきを提供するアプローチです。若年層の方々にも間口を広げながら、一時的な口座開設に終わらせず、長くお取引を続けていただけるLTVの高いお客様との長期的な関係構築を目指しています。
マウスの動きや打鍵の規則性まで鑑みたボット判定
──SBI証券では、2025年にチェク・ジャパンが提供するアドベリフィケーション支援サービス「CHEQ Acquisition(チェク アクイジション)」を導入されたとうかがいました。アドフラウド対策には元々注力されていたのでしょうか。
貝原:はい。他社のツールを導入し、一定の対策は講じていました。一方で、日々の広告運用を進める中で、どのような不正がどの程度発生し、自社にどのような影響を及ぼしているのかを数字として具体的に捉えることまではできていませんでした。私自身も「アドフラウド」という言葉こそ認識していたものの、当時はどこか遠い世界の出来事という認識で、自分たちの運用している広告で実際に多発しているという実感はありませんでした。
そうした中でチェク・ジャパンさんからご提案をいただき、まずは費用のかからない無料診断を試してみようということになりました。提出された診断レポートを見たときは「これほど深刻な不正クリックが日常的に発生していたのか」と衝撃を受けましたね。
──無料診断について詳しく教えてください。
佐々木:無料診断では、お客様のWebサイトに当社独自の計測タグを設置していただきます。そのサイトに流入したアクセスに対して、マウスの細かな動きや打鍵の規則性など、2,000項目を超えるサイバーセキュリティ上のチェックをリアルタイムで実行します。それらの痕跡を分析し「アクセスが本物の人間によるものなのか、それともボットによるものなのか」を高精度に判定するのです。

