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ユニクロ、アシックスの伴走者 I&COレイ・イナモト氏が語るブランドに求められる発想の転換

 ユニクロ、アシックス、パナソニックコネクトなどに伴走するグローバル・イノベーション・ファーム「I&CO」。創業パートナーであり、クリエイティブ・ディレクターのレイ・イナモト氏は、「マーケティングファネル」から「ブランドホイール」へのパラダイムシフトが起きていると語る。そんな中で、ブランド作りに必要な発想の転換とは何か。そして、マーケターに求められるスキルはどう変わるのか。企業変革の最前線から見えてきた、新たなマーケティングの姿を聞いた。

「次にあるべき仕組みを、今作る」I&COの役割

──はじめに、I&COの事業内容について教えてください。

 私たちは「次にあるべき仕組みを、今作る」ため、企業の変革の伴走パートナーとしての役割を担っています。既存の製品をマーケティングするというよりも、組織や企業のあるべき姿や、どのような体験を創造していくかという、答えのないことを見つけ出し、作り上げていくことが中心となっています。未来を予測し、時代の変化に対応することが重要です。

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レイ・イナモト氏
Creativity誌の「世界で最も影響力のある50人」やForbes誌の「世界の広告業界で最もクリエイティブな25人」に選出され、ニューヨークを拠点に世界を舞台に活躍しているクリエイティブ・ディレクター。2016年にビジネスの新開発やブランディングまでを手掛けるグローバル・イノベーション・ファームとして「I&CO(アイ・アンド・コー)」を設立

 伴走する企業によってその内容は異なりますが、私たちはシステム構築やシステムインテグレーターではないので、システム開発を行うというよりも、次に何をするか、何を作っていくかという、抽象的な概念を具体的な施策やお客様体験に落とし込む作業を、特に上層部の方々と協働して進めています。

 たとえばユニクロとの取り組みでは、AIを活用したショッピングコンシェルジュ「UNIQLO IQ」や着こなし発見プラットフォーム「StyleHint」を発案し、UI/UXデザインなども担当しました。また、アシックスとの協業では、ブランドとお客様がシームレスにつながる会員プログラム「OneASICS」を提案し、サービスデザインも行いました。現在では会員数が約1,930万人(2025年3月末時点)まで成長しています。

共通言語の構築やブランドミッションの見直しが重要

──ユニクロとは10年以上、アシックスやパナソニックコネクトとも長期的に伴走されていますが、これらの企業との協業を通じて見えてきた日本企業の課題はありますか。

 企業が何を事業として展開し、誰に向けてどのような価値を提供しているのかが明文化されていないケースが少なくありません。アシックスでも、話をさせていただいた社員一人ひとりの想いは共通しているものの、それを説明するために使用する言葉が、グローバルで微妙に異なっていました。これは内部の人間にとっては問題ないように見えても、一般のお客様からすると一貫性がないと感じられる可能性があります。

 そこで、共通言語を策定することを提案し、社内関係者と協働し、VISION2030として掲げる「私たち誰もが一生涯運動・スポーツに関わり心と身体が健康で居続けられる世界の実現(Lifetime Athletes in All of Us)」を明文化しました。

 このようなインナーブランディングの相談は、最近多く寄せられるようになっています。企業に求められるのは「信頼の源泉であり続ける」ことであり、そのために必要なのは、誰に聞いても会社の価値が統一して語られることです。

 共通言語の構築やブランドミッションの明確化は、老舗企業でもスタートアップ企業でも必要なことで、組織全体の方向性を定める重要な取り組みになります。また、5年から10年の周期でブランドミッションの明確化や見直しは重要です。企業を取り巻く状況は、常に変化していますからね。

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ブランド構築は「ファネル」から「ホイール」へ

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この記事の著者

和泉 ゆかり(イズミ ユカリ)

 IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/06/23 09:00 https://markezine.jp/article/detail/48855

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