SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第113号(2025年5月号)
特集「“テレビ”はどうなる?」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

業界キーパーソンと探る注目キーワード大研究

ユニクロ、アシックスの伴走者 I&COレイ・イナモト氏が語るブランドに求められる発想の転換

ブランド構築は「ファネル」から「ホイール」へ

──ここまで話を伺い、時代の変化に合わせて、自社のあり方や提供価値を定期的に見直すことの大切さがわかりました。時代の変化として感じられていることがあれば、教えてください。

 ブランドが置かれている状況は急速に変化しており、「マーケティングファネル」から「ブランドホイール(連鎖反応型ブランド構築モデル)」へのパラダイムシフトが起きていると考えています。

 この話の前提として、マーケティング活動の根幹には情報伝達技術があります。歴史を振り返ると、15世紀の印刷技術に始まり、音声(ラジオ)、映像(テレビ)、インターネット、モバイル、SNSと情報の伝わり方が大きく変わってきました。現在はAIの進化により、さらなる変化の中にいます。

 Podcast番組「コテンラジオ(COTEN RADIO)」の深井龍之介氏が歴史的観点から指摘するように、情報伝達技術が進化するたびに「人間社会の思考OS」がアップデートされます。つまり、人々が物事を認識する仕組み自体が変化するのです。

 変化として特に注目すべきは、情報発信の主導権がテレビや報道機関から、SNSによって個人レベルへと移行したことです。従来のマーケティングファネルでは、企業がブランドを構築し、マーケティングを通じて認知を獲得し、消費者に関心を持ってもらい、検討を経て購入に至るというプロセスでした。

 しかし「ブランドのフライホイール」では、考え方が逆転します。まず企業が魅力的なプロダクトを生み出し、そのプロダクト自体が人を引き寄せ、製品を購入した顧客が「これはいい」と口コミで拡散し、それが企業への信頼を築きます。そして、信頼されることこそが企業の差別化要因となるのです。

画像を説明するテキストなくても可
(1)企業が製品を生み出す(2)製品が顧客を惹きつける(3)顧客がブランドを信頼する(4)ブランドが企業を差別化する。こうして、ブランドのフライホイールは回り続ける

ユニクロのショルダーバッグに見る「フライホイール」の実例

 ユニクロの「ラウンドミニショルダーバッグ」を例に、説明しましょう。実はこの商品、最初に発売されたのは2020年でした。その時もある程度マーケティングはされていましたが、そこまで売れていたわけではありません。

 転機は2022年に訪れました。イギリスの10代の若者が「こんなにたくさんのものが入る」という動画をTikTokに投稿したのです。わずか1分から1分半程度の動画でしたが、これが火が付き、いわゆる「バズ」が起こりました。

 さらに購入した人々が、「これはすごい」と次々に発信することで連鎖反応が起き、世界的な大ヒット商品となりました。消費者が発信したものが宣伝となり、たくさんの人が買うようになり、またその人たちも発信する。この現象を通じて、ユニクロというブランドが「こんな良いものを作っている」という評価が消費者自身の言葉で広がり、それがブランドの差別化要因になっています。これこそが「フライホイール」のわかりやすい例です。

次のページ
「プロダクトアウト」の時代に。重視すべきことは?

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
業界キーパーソンと探る注目キーワード大研究連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

和泉 ゆかり(イズミ ユカリ)

 IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2025/06/23 09:00 https://markezine.jp/article/detail/48855

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング