連載4回目となる本稿では、そもそもマーケティングOSは何をアウトプットするためのものなのか、何を実現するためにOSを更新するのかを「逆引き」して考えてみます。
AIによってマーケティング業務が効率化される。企画書が早くできる。分析が自動化される。広告クリエイティブが簡単に作れる。
これらは当たり前のこととして、筆者が「マーケティングOSの更新」という言葉で考えているのは、マーケティングという企業活動の意思決定の仕組みそのものを変えることです。
では、その新しいOSは最終的に何を実現するのか? まずは4Pのうち最もイメージしやすいプロモーション、中でも広告から考えてみましょう。筆者には、次の3つのイメージがあります。
1.インプレッションごとに最適なクリエイティブが生成される
筆者がまずイメージする、AIで実現する広告とは「1インプレッションごとに最適なクリエイティブを生成する」というものです。
これまでデジタル広告は、データを駆使して広告の配信対象を決めることに力を注いできました。つまりこれは、ターゲティングの最適化です。
誰に広告を当てるか。性別、年齢、居住地域、興味関心、検索履歴、購買履歴、サイト訪問履歴など、さまざまなデータによって「この広告を見せるべき人」を探してきました。
しかし、考えてみると、これは基本的には「同じクリエイティブを誰に当てるか」を最適化しているに過ぎません。クリエイティブは固定されていて、配信対象を動かしてきたのです。人間がクリエイティブを作っている間は、それも仕方がありませんでした。100万インプレッションを配信するからといって、人間が100万種類の広告をつくることなど到底できません。だから数本、せいぜい数十本のクリエイティブを制作し、それを誰に当てるかをデータで最適化してきたわけです。
ところが、AIが登場すると、この前提がなくなります。100万インプレッションの広告配信をするなら、100万通りのクリエイティブがあっていい。極論を言えば、同じ広告を二人の人間が見る必要すらありません。
その人が誰なのか。いま何に関心を持っているのか。そのブランドとどのような関係にあるのか。どんなコンテンツを見た直後なのか。朝なのか夜なのか。自宅なのか移動中なのか。初めてブランドを知る人なのか、既に何度も購入している人なのか。
そうしたコンテキストによって、AIがその瞬間のその人に最適な表現を生成するというのが、私のイメージするAI時代の広告です。
これまで広告は、「クリエイティブを固定して配信対象を動的にする」ものでしたが、これからは「配信対象を固定してクリエイティブを動的にする」ものになる。これまでのアドテクノロジーが「人を選ぶ技術」だったとすれば、AI時代の広告テクノロジーは「その人に対する最適な表現を生成する技術」になる。これはかなり大きな転換ではないでしょうか。
従来のターゲティングは絞り込み、率を良くするものですが、クリエイティブの最適化は対象を広げ、隠れたターゲットを掘り起こします。態度変容を促す対象が、絶対的に拡大するのです。
そして最終的には、TargetingとCreativeという二つの工程を分けて考えること自体に意味がなくなり、誰に・いつ・どこで・どんな広告を・どんな表現で提示するかという「Audience × Context × Timing × Creative」が一体となって、1インプレッション単位で決まっていくようになる。ここに至って初めて、本当の意味で「個別最適化された広告」が実現するのではないかと考えるわけです。
とはいえ、ここまでは皆さんも考えているだろうと思います。
