YouTubeチャンネルの多様化と「動画への信頼」
まずはYouTubeで発信される情報のジャンルについて変遷をたどるべく、「kamui tracker」のデータをもとに、登録者数10万人以上の国内チャンネルを開設年別・ジャンル別に集計した(図1)。
2016年に開設して登録者10万人以上に成長したチャンネルでは、ゲームカテゴリーが全体の20%を占めていたが、2022年開設分では8%まで縮小。代わりにライフスタイル系(美容・料理・暮らし)の占める割合が37%から45%へと拡大した。教育・スポーツ・ニュースといった専門・情報系も着実に増えている。
チャンネルが多様化した背景の1つに、ユーザーの情報収集行動の変化がある。商品購入の前に実際の使用感を確認したい、専門家から直接説明を聞きたいというニーズが高まり、テキスト検索よりも動画での一次情報を求める傾向が強まっている。レシピを探す・投資を学ぶ・家を選ぶといった場面で動画が「検索の代替」として機能するようになったことが、ライフスタイルや専門情報系チャンネルの台頭を支えた。
政治系、ビジネス系と専門分野が増加。放送局も注力
放送局系454チャンネル(主要局の名前をキーワードにピックアップ)の登録者合計は2016年354万人から2025年8,623万人へと24倍に拡大した(図2)。年間視聴回数も6.5億回から146億回(22倍)へ急増している。テレビ局はYouTubeを単なる番組アーカイブの置き場としてではなく、独自のオーディエンスを持つメディアとして機能させている。
また、政治関連44チャンネル(2026年衆院選時の主要政党のチャンネルを中心に調査)の登録者合計は2016年の4.5万人から2025年の464万人へと103倍に増えた(図3)。視聴回数も672万回から5.3億回(79倍)へ拡大している。政治は情報の信頼性と専門性が最も問われる分野だ。そこでもYouTubeが主要な情報プラットフォームとなったことは、このメディアが特定の趣味嗜好にとどまらない生活インフラになったことを示している。
テレビ局・政治チャンネルと並んで台頭しているのが、「PIVOT 公式チャンネル」のようなビジネス系・BtoB向けメディアチャンネルだ。経営者や意思決定者に向けたコンテンツを継続発信するチャンネルが成長し、YouTubeはBtoBコミュニケーションの場としても機能し始めている。
10年で20倍に。タイアップ市場拡大と多様化
チャンネルのジャンルが広がるにつれ、企業がタイアップできる場も広がった。年間のタイアップ動画本数は2016年の3,999本から2025年の86,881本へと約22倍に拡大した(図4)。
タイアップに参加するチャンネル数は2016年の514チャンネルから2025年の12,316チャンネルへと24倍に増えた。市場全体が大きく拡大し、多くのクリエイターに機会が広がった一方で、スポーツ・金融・住まいといった専門ジャンルで影響力を持つクリエイターへの需要は集中する傾向にある。
スポーツ関連タイアップは2016年21本から2025年2,794本へ133倍、金融・投資は2016年にはほぼゼロだったが、2025年の691本へ急増した。こうした専門ジャンルでは、カテゴリーに精通した信頼性の高いクリエイターの数が限られており、同ジャンルに参入する企業間の競合が起きやすい構図にある。
