商談獲得率1.7倍を実現! 4つのシグナル検知
LayerXでは、この「会話の根拠」を導き出すために、AIを活用して顧客のインテント(検討意向)を捉えるシグナル検知の仕組みを構築している。具体的には、以下の4つのシグナルを組み合わせているという。
- メール行動(明示的アクション):資料ダウンロード、メール開封、クリック、ウェビナー申込など
- Webシグナル(情報収集の深度):商品・事例ページの閲覧や、比較サイト経由での流入など
- 3rd partyデータ(採用・組織変化):バックオフィス系採用の活発化など、業務負荷や体制変更の兆しを示す外部データ
- 過去失注理由(再接触の強烈な根拠):過去の接触履歴から、「時期ずれ」や「他社比較」といった理由を抽出し、時間的な変化を捉える
これらの膨大なデータを掛け合わせることで、「この企業には今こうした変化が起きているため、このプロダクトについてこういう仮説を立てて提案しよう」という具体的な根拠を提示できるようになった。
さらに、北川氏はこの根拠を営業が日々使いやすいインターフェースに落とし込む重要性を強調した。こうしてLayerXでは「今、架電すべき顧客」へ的確なアプローチができるようになり、商談獲得率は従来の1.7倍に向上したという。
また、北川氏はこの仕組みは「一度作って終わりではない」と語る。
「AIが優先順位と文脈を提示し、人間の架電結果(有効だったシグナルや仮説の正誤など)が次の学習データになります。この結果のログ化とフィードバックの循環によって、スコアリングは使うほど精度が上がっていくのです」(北川氏)

「点数づけ」から「アプローチ根拠の提示」へ、スコアリングの未来
両者の取り組みを受け、スコアリングは「AIによって、顧客のスコアではなくコンテクストを渡す」ことが可能になったと安藤氏は解説する。そして、AIや高度なデータ活用を推進する上での「運用の壁」とは何かを2人に問いかけた。
ミスミの天間氏は、AI活用を阻む構造的な壁として「データ統合・品質」「リテラシーの不足」「AIが算出した結果の理由の要求」「運用の壁(KPIとのズレ)」「意思決定層との期待値ギャップ」の5つを挙げた。中でも最も重要なのがデータ統合だと天間氏は言う。
「Garbage In, Garbage Out(ゴミのようなデータを入れるとゴミのような結果しか出ない)というように、メタデータが整っていないとAIが誤った分析をしてしまうリスクがあります」(天間氏)
LayerXの北川氏も、運用を成功させるためのポイントとして、「最初から完璧な予測モデルを追わず、小さく始めること」「スコアだけでなく『会話の根拠』をセットで設計すること」、そして「一度作って終わりにせず、営業・マーケ・データ部門が共創して『共に育てる』こと」の3点を挙げた。
最後に、安藤氏が未来のスコアリングのあり方について両名に問いかけ、セッションを終えた。
「AIによって、あらゆるデータを活用してスコアリングモデルを構築できます。単なる点数づけではなく、顧客状態の解釈や、次のアクションとしてどのような根拠を持ってアプローチすべきかを示すものが未来の形になるでしょう。ゆくゆくは最適なコンテンツの自動生成まで進んでいくと考えています」(北川氏)
「CRMの本来の目的に立ち返り、『誰を優先すべきか』という順位づけから、お客様のペインポイントを理解し『どうアプローチすべきか』を示す機能へとシフトしていくのだと思います」(天間氏)
両社の見解は、BtoBマーケティングにおけるスコアリングは単なる「効率化のツール」から、顧客との質の高い対話を生み出すための「インサイト提示ツール」へと劇的な進化を遂げていることを示している。
