オンライン・オフラインで提供する顧客体験の融合が、ブランドにとって大きな課題となっている。そこで必要となるのが、双方をスムーズに連携し、柔軟に変化できる「デジタル基盤」だ。2021年9月3日開催の「ECzine Day 2021 Autumn」にて、長年顧客企業の課題解決に取り組んできたSAPジャパン株式会社 SAP Customer Experience事業本部 ソリューションエンジニアリング部長の臼谷悠太氏が、IT部門やSIベンダーに頼らずに顧客エンゲージメントを高める仕組みの構築方法をテーマに登壇。企業の組織・システムなどさまざまな検討ポイントについて解説した。
在庫引当問題の解決なしにOMOは実現できない
セッションの冒頭にて臼谷氏は、東京駅周辺の写真を掲示し、このように語る。
「美しい街並みは、綿密な開発計画や基礎工事の上に成り立っていますが、OMO推進でも同じことが言えます。デジタル基盤という基礎部分を作り上げた上で、どのような顧客エンゲージメントを提供するか。このような順番で考えていく必要があります」(臼谷氏)
臼谷氏は、まずOMO型コマースの代表的なパターンと、それに付随する業務プロセスを3つ紹介した。ひとつめは、受注・決済・在庫引当・配送のすべてを基本的にはECで行う「EC完結」パターン。ふたつめは、受注・決済までをECで行い、店舗で在庫を引き当てた後、配送もしくは店頭で受け渡しを行う「BOPIS(Buy Online Pick-up In Store)」パターン。3つめはECで受注し、決済以降を店舗で行う「EC予約・店舗取置」パターンだ。

臼谷氏は、「SAPジャパンの顧客企業にはいずれのパターンも存在するが、多くの企業がある共通の課題を抱えている」と言い、事例をふたつ紹介した。
事例1:国内アウトドアブランド
売れ筋商品が店舗の在庫として確保されており、ECの在庫が常に不足している状態となっていた。ECでの売上が販売スタッフに還元されず、店舗の評価にもつながらなかったことが原因。
事例2:国内ファッションブランド
ECで予約した複数商品の取置や決済を、ひとつの店舗でまとめて行うことができない状態となっていた。店舗が在庫を買い取るシステムで、商品が資産として店舗に紐付いているため、ほかのチャネルから自由に動かせなかったことが原因。
これらに共通して存在するのは、「在庫引当」に関する問題だ。本来は、顧客がどこからアクセスしても同様に在庫引当をすべきだが、それが実現できなかったために売り逃しが発生していたという状況を冷静に見つめる必要がある。現在も商品在庫の管理と店舗の評価が密接につながっている多くの企業には、現場を混乱させることなく、スムーズに実現できる「チャネルに依存しないデジタル基盤」が必要というわけだ。では、それはどのようにして整備できるものなのだろうか。
「店舗在庫を引き当てる場合は、『評価をどのように店舗に渡すか』を同時に検討する必要があります。この点がクリアになれば、適切な形でデジタル基盤を構築し、OMOを推進することが可能です」(臼谷氏)
この記事は参考になりましたか?
- ECzine Day 2021 Autumn レポート連載記事一覧
-
- アパレル・コスメ・ショッピングモール OMOを実現するN=1のデータ活用と顧客体験の最適解...
- 国境のないオンライン上で必須な多言語対応 継続運用のために考えたいQCDとアパレルEC成功...
- OMO実現に欠かせないデジタル基盤の整備 EC担当者が顧客エンゲージメントを構築しやすい仕...
- この記事の著者
-
伊藤 真美(イトウマミ)
フリーランスのエディター&ライター。もともとは絵本の編集からスタートし、雑誌、企業出版物、PRやプロモーションツールの製作などを経て独立。ビジネス系を中心に、カタログやWebサイト、広報誌まで、メディアを問わずコンテンツディレクションを行っている。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア
