日本の事業者が海外市場で成長するための一手として注目されている越境EC。海外向けの窓口を設ければ売れると思ってはいませんか。また、マーケティングやPR活動にばかり注力してはいないでしょうか。どれだけ顧客が流入しても、決済が正しく完了しなければ売上にはなりません。中には、ほとんどが不正決済でチャージバックとなるケースも存在します。そこで本記事では、グローバルで決済ソリューションを提供しているStripeが、海外展開における失敗例と注意点を解説します。
見落とされがちな決済フォームの“ある項目”
経済産業省が公表した「令和5年度電子商取引に関する市場調査」によると、グローバルでの越境EC市場は2030年には約7兆9,380億USドル(約1,200兆円)規模に拡大すると予測されています。また、Stripeの調査では、2025年までに新たな国への販売進出を検討している日本企業は79%超にのぼります。
越境ECと一言でいっても、次のような形態の違いが存在するのはご存じですか。
- 国内自社EC:国内の自社ECサイトで海外向けに販売
- 国外自社EC:海外向け専用の自社ECサイトを運営
- ECモール:既存のECプラットフォームを通じて商品を販売
- 保税区活用型EC:特定の地域で関税優遇を受けながら商品を取引
- 一般貿易型(代行販売)EC:他事業者を通じて商品を販売
特に、国内または国外で自社の越境ECサイトを運営する際は、決済の仕組みに注意しなければなりません。決済は、顧客体験を大きく左右します。利便性の高い決済手段を提供することが、リピート購入を促進するための鍵です。
国内向けのEC運営では、クレジットカードやデビットカードが主な決済手段となります。それに加えて、越境ECの場合は、各地域の決済手段を用意することで幅広い顧客層を引き込めます。
日本では二次元コード決済やコンビニ払い、銀行振込といった多様な決済手段が選べますよね。海外でも、BNPL(後払い決済)や銀行振込、銀行引き落としなど地域で頻繁に利用される決済手段には違いがあります。ヨーロッパなどでは、クレジットカード決済だけでなく、PayPalや銀行系リダイレクト型、口座引き落としの導入を検討する必要があります。
もちろん、これら決済手段の拡充とともに、現地通貨での支払いに対応するのも忘れてはなりません。さらに、決済手段を表示する際の順番にも配慮が必要です。顧客が最も利用する手段を前面に押し出すことで、購入を促進できます。
どのような事業を展開するのかも決済手段を選択する上では重要な要素です。たとえばサブスクリプションサービスを展開する場合、月額課金や定期的な支払いが発生するため、安定して引き落としができる決済方法の導入が不可欠です。アメリカやヨーロッパでは「ACH デビット」「SEPA ダイレクトデビット」といった銀行口座からの直接引き落としが一般的となっています。
越境EC事業を展開する際、しばしば軽視されるのが決済フォームです。決済フォームは、顧客がスムーズに購入手続きを進める上で重要な役割を果たします。その設定の適切さが顧客の離脱率に直結するのです。
多くの日本の決済システムでは、カード番号や有効期限、セキュリティコードのチェック項目のフォームが表示されます。一方で、顧客が入力した住所とカードに登録されている住所が合致しているかを見る「住所確認サービス(AVS)」はあまり導入されていません。
アメリカやカナダ、イギリスなどではAVSの導入が一般的です。セキュリティの観点から、AVSの有無がオーソリ承認率に影響を与えるともいわれます。
こうした十分な準備を行わずに越境EC事業に参入するEC事業者が多く見受けられます。実際、現地特有の決済手段を無視した結果、顧客の購買意欲を損なうケースは珍しくありません。
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ストライプジャパン株式会社 テクニカルアカウントマネージャー 今泉徹(イマイズミ トオル)
大手SIerにて、プロジェクトマネージャ・エンジニアとして主に通信会社のシステム導入を担当。その後、スタートアップにてユーザ企業へのサービス導入を支援し、後にメルカリにてプログラムマネージャとして複数のプロジェクトを担当。現在はStripeのサービスアカウントマネージャとして、有償サポートチームの日本立ち上げを主導...
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