店舗主軸のビジネスから、ECシフト・チャネル拡大の動きが見られるアパレル業界。しかし、誤った認識を持ったまま進めてもうまくいくことはありません。本連載では、ECディレクターの深地雅也さんがアパレルのEC化を進める上で注意すべきポイントをご紹介。しくじらないための心得を学びましょう。第1回のテーマは、「ECの事業計画を立てる上で考えるべきこと」についてです。 ※本記事は、2022年6月25日刊行の『季刊ECzine vol.21』に掲載したものです。
ファッション・アパレル業界にて、「EC売上を伸ばす」という目標設定は今やどの企業でも当たり前になってきているかと思いますが、自社ブランドの実力を正しく把握し、適正な計画を立案することはそう容易なものではありません。
昨今、EC関連報道の過熱ぶりが影響し、各社がECに過度な期待を持っているように見受けられます。また、企業の年間計画にそれが反映され、達成困難な計画が出てくることもしばしばあります。上層部からは「売上高を伸ばせ」と安易な指示がされ、他部署からは「ECなら簡単でしょ」と思われてしまう。それを受けて、「そう思うならやってみなはれ」と思う現場担当者は多いでしょう。
とは言え、会社勤めの現場担当者が社内の計画に対し異を唱えるのもハードルが非常に高く、「どうしたら良いか?」とご相談いただくことも珍しくありません。このような場合の対処法について筆者の見解をお伝えします。
優先事項やビジョンなしに計画立案は不可能
ECの事業計画を立てる上でまず考えるべきことは、「何を優先するのか?」です。たとえばブランドのトップラインを伸ばすことを優先する場合、よく使われるのはZOZOTOWNや楽天市場、AmazonといったECモールの活用でしょう。新たなモールへ出店すると、そのモールで回遊している顧客にリーチして、手っ取り早く売上を担保することも可能です。
しかし、モールにはデメリットもあると理解していなければ、思わぬ落とし穴にはまることもあります。たとえば、出店費用や販売手数料はモールによって異なる上、ブランドとモールのパワーバランスによっても変動します。なぜなら、モール側がどうしても出店してほしい場合とそうでない場合で料率が変わるからです。加えて、モール内での値引施策の負担分やモール内で露出強化を図るための広告費など、出店後にも販売促進に向けたさまざまな販売管理費(販管費)が発生します。そして、それだけ費用をかけても顧客情報を持ち出すことができません。
もちろん、モールに出店しながらまったく利益が確保できないわけではありませんが、「値引施策を実行しない」「広告を配信しない」といった措置を取ると、トップラインの伸長は難しくなります。
一方、利益を残すことを優先する場合は恐らく自社EC強化に舵を切るでしょう。実店舗を多数展開しているブランドならば出店を減らし、代わりに自社EC売上を伸ばすことで販管費を削減すれば利益率を高めることは可能です。ただしこの場合、トップラインを伸ばすのは容易ではありません。
すでに実店舗で多数の顧客がついている状態から自社ECを始めるならともかく、自社ECを主軸に売上を伸ばすのはそれ相応の広告宣伝費が必要になります。モールのように手数料は発生しませんが、さまざまなサービスを導入したり広告を配信したりすれば費用は発生します。また、EC支援会社との契約がレベニューシェアの場合はモール同様、売上に対する料率での支払いが必要です。こうした費用も考えながら運用を行う必要があります。
「売上を伸ばしながら利益も確保」という虫の良い話は存在しません。メリット・デメリットを理解した上で優先順位を決めるべきです。
メールマガジンに登録無料すると、続きをお読みいただけます
-
- Page 1
-
- Page 2
-
- Page 3
この記事は参考になりましたか?
- アパレルEC しくじらないための心得連載記事一覧
- この記事の著者
-
深地雅也(フカジ マサヤ)
StylePicks代表。アパレル・ファッションに特化したECサイト構築・運用ディレクション、オウンドメディア構築、販促企画などがメイン事業。ラグジュアリーブランドのリテール・ホールセール営業を経て独立。フリーランスとしてアパレルECの運用代行からスタートし、現在まで60ブランド程度の運用に携わる。ODM・OEMメーカーの...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア
