EC事業者がおさえておきたい13のテクノロジー関連トピックスの「定点観測」。フラクタの河野さんに、ECシステムについて聞きました。※本記事は、2022年9月25日刊行の『季刊ECzine vol.22』に掲載したものです。
売上増を期待されるEC 体験を練る時間作りを
今号の特集テーマは、期待以上の体験の提供。体験を設計する際には、河野さんはEC担当者であってもOMOを前提にするべきだと言う。
「在庫やポイント、顧客情報の連携といった基本的な要素については当たり前になってきています。期待以上の体験となると、カバーすべき領域が非常に広い。多くのEC担当者は、基本的なOMOの仕組みを維持するのに必死で、期待を超える体験設計まで考える余裕がないのが現状だと思います」
コロナ禍で急増したEC売上。企業は成長を目指し、昨年度の売上をもとに本年度の目標が設定される。異常値とも言えるコロナ禍の売上からさらなる成長を求められるわけだが、消費者はリアルに戻りつつある。
「お客様のほうがOMO化しているため、リアルでもオンラインでも求める体験のレベルが高くなっています。たとえば、店頭で商品を見て接客を受け、購入を保留にして家に帰ったら、接客を担当したスタッフがLINEを送ってくれたり、迷っていた商品がECサイトのお気に入りに並んでいるといった体験が求められています。 D2Cや直営店しか持たないブランドであれば、仕組みの面では取り組みは行いやすいはずですが、着手できているところは多くないですね」
期待を超える体験を提供するために、EC事業者はまず何から始めるべきだろうか。
「考える時間を作ることです。昨年対比で高い目標を設定されながら、世の中はリアルに回帰しつつあり、EC担当者は目の前の売上アップに追われてしまうはず。それでは現状維持すら難しくなります。DXと表現しても良いかもしれませんが、業務を効率化し、考える時間を確保することをおすすめします」
最新テクノロジーがなくとも OMOは実現できる
体験の向上にはテクノロジーが活躍するのではないか。たとえば昨今注目されるShopifyはトレンドをいち早く取り入れるヘッドレスコマースの仕組みを持ち、エンタープライズ版「Shopify Plus」ではさらに自由度が高くなる。フラクタでは、Shopify Plus活用OMO立ち上げパッケージ「Next Plus」を2022年6月22日から提供開始した。最新のECシステムにリプレースするのも体験向上のための施策のひとつに思えるが。
「高い目標を達成するために目の前の仕事に追われている状況下では、システムや仕組みをコントロールするのに多くの人的リソースを割くべきではないと考えます。OMOは既存の仕組みの延長線上でできることもあります。それで済むなら、忙しい中わざわざリプレースする必要もないのです」
河野さんはそう言うが、「Next Plus」はOMO立ち上げのためのシステムと最適なShopifyアプリや周辺サービスがあらかじめパッケージ化されている。Shopifyアプリについて、日々新しいものが登場するのは発展のためには喜ばしいことだが、自社に最適なものを選ぶのは、よほど情報の取捨選択に長けていなければ難しい。それがあらかじめ、プロのお墨付きのものがパッケージ化されているだけでもリソース削減になるだろう。
「海外のアプリでは安価で便利なものも多いのですが、問い合わせ先が英語だからそのために英語を勉強しようとなると、目の前のことに追われている担当者にはやはりハードルが高い。プロのサポートがつくという点ではお役に立てると思います」
もうひとつ、没入体験とも表現されるようにメタバースなどのリッチな体験を提供するテクノロジーはどうだろう。
「個人的には可能性を感じていますし追いかけ続けるべきだと思いますが、デバイスのデファクトスタンダードがまだない段階ですから、ビジネスで一般的に活用されるのは8年後くらいではないでしょうか。ハイブランドは10年先を見据えて先行投資する文化がありますし、資金面でもいくつかの取り組みが失敗したとしてもそれほど痛くないのです。一方で日本国内でも、社内の担当者が自ら手を動かして自作する例も出てきている。パーツを組み合わせればある程度形になりますからね。DIYのようにメタバースが作れる人たちは何かしら生み出していくのではないでしょうか」
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倭田 須美恵(ワダ スミエ)
2013年11月11日、ECzine立ち上げ。ならではの視点でECに関する情報をお届けしたいと思います。
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