エンタープライズ開拓に挑むも、SMB(Small and Medium Business)・MM(Mid Market)領域で培った成功事例が通用せず、思うように成果が出ない──。多くの企業が直面するこの壁に、ディグルの松本氏もまた、1年もの間悩まされ続けました。カリスマ営業不在の同組織がエンタープライズ開拓の「型」を見出し、「集団学習型」のチーム運営で成果を創出するまで、どのような気づきや取り組みがあったのか。くわしくうかがいました。
事業成長を見据えた顧客ターゲットの拡大
──松本さんのこれまでのキャリアについて教えてください。
新卒で都市銀行に入行し、中小企業やスタートアップ企業、大手企業に対して営業活動を行ってきました。
その頃から一貫して、キャリアの根底には「日本企業の活躍を支援したい」という思いがあります。スポーツの世界大会で日本代表を応援する感覚に近いかもしれません。大学生の頃に岐阜の中小企業を経営する方々とお話しする機会があり、地方から世界を目指す経営者の皆さんの熱量に触れ、自分も貢献したいと感じたんです。
銀行勤務でも様々な経営者の方とお会いし、いつしか、自分自身がそうしたスタートアップの一員として頑張ってみたいと考えるようになり、2022年1月にディグルへ入社しました。
──ディグルに入社した当初は、中堅・中小企業をメインに営業されていたそうですね。
ええ。当時はMM(Mid Market)領域のお客様が9割でした。
私が入社した当時、ディグルの社員は15名ほど。セールスが私一人しかいない時期もあり、年間200社以上の企業と商談しました。銀行では既存営業が主でしたから、初めて経験する新規営業に最初は少し苦戦しましたね。
ただ、銀行で培った会計や財務戦略の知見、経営層との折衝経験は、予実管理のプロダクトである「Diggle」を提案するうえでも活きました。そしてMM領域の収益が安定してきた2023年頃、今後の事業成長を見据えて顧客ターゲット層を拡大するため、ディグル全社の方針としてエンタープライズ開拓に挑戦したんです。私ともう一人のメンバーの実働メンバー二名体制でスタートしました。
成功体験が通用しない──。1年間に及んだ「売れない壁」
──エンタープライズ開拓に挑戦した当初は、どのようなアプローチを行ったのですか。
顧客の顕在ニーズに対して、最適な「Diggle」の機能を提案する「機能ベース」のアプローチです。
たしかに、エンタープライズ開拓はその領域特有の難しさがあります。しかし、前職で大手企業と折衝した感覚もありましたし、MM領域で成功した戦術をさらに磨けば、エンタープライズ領域でも成功するだろうと考えていました。ヒアリングした要件にあわせて機能をカスタマイズしてデモを提案したり、顧客の業務フローが「Diggle」によってどう変化するか伝えたり、それらの精度や再現性を高めようとしたんです。
ところが、これがうまくいきませんでした。エンタープライズ開拓はただ企業規模が大きくなるだけではなく、ニーズも競合も変わります。加えて「Diggle」よりカスタマイズ性の高い他社サービスがあるなかで、機能ベースの提案だけでは思うように成果が出なかったのです。
この頃はMEDDICやアカウントプランの作成、社長同行など、営業フレームもいろいろと試しましたね。今思えば、アカウントプランは既存顧客のエクスパンションには有効かもしれませんが、マーケティング施策から流入した新規顧客に対しては時期尚早でした。打つべき施策や、適切なタイミングも区別できていなかったんです。
結局、1年ほど売れない時期が続きました。四半期に1、2件と散発的な受注はかろうじてあるものの、安定した収益成長にはほど遠い。正直に言うと、本当に苦しかったですね。家族にも「この泥沼、そろそろ抜けると思うんだよね」とよくこぼしていました(笑)。
ただ、漠然と「いつか売れるだろう」と感じてもいました。お客様にまったく見向きされないわけではなかったため、アプローチを続けるなかで着実に成長している感覚はあったんです。
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- この記事の著者
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高橋 愛里(編集部)(タカハシ アイリ)
新卒で総合情報サービス企業に入社し、求人広告の制作に携わる。2023年翔泳社入社。SalesZine編集部に所属。
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