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MarkeZine Day 2026 Autumn

セールスストラテジーの正体

経営者の右腕は何を見ているのか 日本HP、セールスフォースを率いた古森氏に聞くセールスストラテジー

 AIが可視化や分析、予測まで担うようになったとき、営業の戦略機能には何が残るのか。第1回では、セールスフォース・ジャパンを17年支えた川上和代氏に、テリトリーやクォータ、キャパシティプランニングなど、セールスストラテジーが担う「設計」の中身を聞いた。第2回は、その設計を使って意思決定する経営者の立場から、この戦略機能を見つめ直す。日本ヒューレット・パッカードで代表取締役 副社長執行役員、セールスフォース・ジャパンで副社長を務めた古森茂幹氏は、セールスストラテジーを「集めて、配って、増やす役割」と表現する。過去を分析するだけではなく、未来のシナリオを描き、リソースを配分し、組織を動かす──AI時代に経営者の“右腕”は何を見て、どのように意思決定を支えるのか聞いた。聞き手は『レベニューオペレーション(RevOps)の教科書』著者で、Xactly 日本GTM統括責任者の川上エリカが務める。

集めて、配って、増やす仕事

川上エリカ(以下、川上):古森さんは日本ヒューレット・パッカード(以下、日本HP)とセールスフォース・ジャパン(当時はセールスフォース・ドットコム)の両方で、大きな営業組織を率いたご経験がおありです。当時の日本HPにセールスストラテジーは存在しましたか?

Xactly株式会社 日本GTM統括責任者 川上エリカ
Xactly株式会社 日本GTM統括責任者 川上エリカ

古森茂幹(以下、古森):日本HPにはセールスフォース・ジャパンほど明確に定義されたセールスストラテジーの役割はなく、営業企画やサポートに近い仕事をする方はいました。当時は大きく投資すればマーケットを獲りにいける“大技”が使えたため、今ほど複雑なシナリオを描く必要はなかったと思います。

古森茂幹氏
株式会社テミクスグリーン 代表取締役/株式会社KRM 代表取締役 古森茂幹氏
日本ヒューレット・パッカード株式会社にて企業向け営業部門を中心に要職を歴任したのち、2014年、代表取締役副社長執行役員に就任。2015年より株式会社セールスフォース・ドットコムの副社長として、エンタープライズ事業部門をリード。2024年に取締役副会長を経て、2025年2月に退任。豊富な経営経験と幅広い見識をもとに、企業の顧問や社外取締役として営業戦略や組織運営についての提言を行う。

川上:つまり、営業の走るフィールドが概ね決まっていた日本HPに対して、セールスフォース・ジャパンでは「どこを走るか」自体を設計する必要があったと。

古森:そうですね。セールスフォースには、次の年にどう動くかを決める「Go for Growth」のプロセスがあり、その主体がセールスストラテジーでした。彼らはバックミラーで過去の数字を見るだけではなく、前を見るんです。「マーケットはどうなるのか」「自社のケイパビリティはどうか」「キャパシティは足りるのか」を考えます。

 またセールスにとどまらず、会社のゴールに対して「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」をどう組み合わせるかを考えるのもセールスストラテジーの仕事です。私は彼らの仕事を「集めて、配って、増やす仕事」と表現しています。

川上:クォータやテリトリーだけでなく、マーケティングのデマンドや採用まで考え、目標から逆算して収益をつくるための体力を組み立てる役割がセールスストラテジーなんですね。

M&A後のゲームチェンジにセールスストラテジーはどう対応する?

川上:経営者とセールスストラテジーの境界はどこにあるのでしょうか。

古森:ブループリントはセールスストラテジーが描きます。全社の方針とマーケットを見ながら、複数のパターンと仮説を出してくれるんです。最後の意思決定は責任者がしますが、その時点でシナリオはほとんど仕上がっています。

川上:第1回で和代さんは、セールスストラテジーの仕事を「決まったことを回す側」ではなく「決める側」だと表現されていました。経営者の代わりに答えを出すのではなく、経営者が選べる状態をつくる存在だったんですね。

古森:そうですね。私はもう、任せっきりでしたよ(笑)。

川上:セールスフォースでは、毎年のようにM&Aが行われます。過去の戦略の延長で来期の戦略を描けない場合、セールスストラテジーはどう動くんですか?

古森:おっしゃるとおり、買収後はポートフォリオもマーケットも売り方も変わります。ゲームそのものが変わるんです。セールスストラテジーは、日本の市場やリソースに合わせて戦略を組み立て直します。M&Aを行うと人も増えますから、1+1を2にするのは間違いで、少なくとも2.1、できれば2.5にしなければなりません。机の上で数字を作って終わりではないんです。

川上:過去の戦略が使えないから、未来の戦略を仮説で描く力が必要になるんですね。

古森:そうですね。私からすると、AIエージェントのCEO版みたいな役割をセールスストラテジーが務めてくれていました。

川上:CEO版のAIエージェントとは面白いですね。情報処理ではなく、経営者が次に考えるべきことまで持ってくる存在だったのだと理解しました。

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AIが分析するほど「データアーティスト」の価値は上がる

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この記事の著者

川上 エリカ(カワカミ エリカ)

株式会社マルケト(現アドビ株式会社)にてインサイドセールス部およびゼネラルビジネス営業部を統括。営業組織改革、プロセス設計、マーケティングオートメーションを軸としたデジタルシフトを推進し、スタートアップから大手企業までテクノロジーを活用した収益組織の構築を支援。株式会社みずほ銀行、株式会社リクルートおよび外資系IT...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2026/09/11 07:00 https://markezine.jp/article/detail/77000

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